アジア自由民主連帯協議会第一回講演会報告 講師:ペマ・ギャルポ

チベットの危機は日本の危機

 2012年3月31日、東京北沢タウンホールにて、アジア自由民主連帯協議会第会主催講演会が開催されました。講師はペマ・ギャルポ会長、会場には約50名が参加しました。
 司会の古川事務局長が午後6時に開催を告げたのち、まず西村幸祐副会長が登壇、中国政府の現在の覇権主義的恫喝、チベットでの弾圧とそれに対する焼身抗議は中国政府の本質を表す一体化したものであり、これは日本の危機にもまっすぐにつながっている。一例として、中国の発行する「琉球時報」では。沖縄は中国領であるという主張が平然となされており、また中国政府が脱北者(北朝鮮難民)を強制送還し日本国民を拉致した北朝鮮政府を実質上支援していることにも触れました。しかし、この中国の本質や日本の危機について自覚している人はまだまだ少ないので、本日参加した皆さんがこの日に学んだことをぜひ周囲の人々に伝えていってほしいと述べました。

 続いて内モンゴル人民党のフビスガルド氏が、このチベット人たちの焼身抗議は、その勇気とともに世界に影響を与えつつあると述べ、また都議吉田康一郎副会長は、この焼身自殺という抗議方法しか手段を奪われているチベットの深刻な状況を、単なるチベット問題としてではなく、自分たち日本の問題として考えてほしい、今中国は尖閣列島に続いて、伊豆、小笠原、硫黄島からサイパン、ニューギニアに至るラインを中国の海上勢力圏のラインとして確立しようとしており、日本を包囲・属国化する方針を着々と固めていると警告しました。

 また、チベット問題に長年取り組んできた当会顧問の酒井信彦氏が、自分はこの焼身抗議を見て、かってベトナム戦争の時に、一人の僧侶が焼身自殺で南ベトナム政府に抗議した時には、欧米をはじめ国際世論が大きくわきあがった、しかし、今は30人以上が同じく亡くなったのに、世界の世論は湧き上がっていない。日本だけではなく、人権を語っている欧米を含めて、世界が人権問題にも民族問題にも鈍感になっていると指摘しました。そして、チベット、ウイグル、モンゴルなどで起きていることはいずれ台湾や日本でも起きる危険性が高いのに、日本国内でもそれに抗議し怒る言論は起きていない。日本も世界も、これはある意味マインドコントロールにかかっているような状態である。これをどう覆すかは容易なことではないけれど、自分は若い人々に期待をかけている、どうかマインドコントロールに陥らず、自分の頭で考え、何をやるべきかを考えてほしいと述べました。

チベット人の意識の変化

 続いてペマ・ギャルポ会長が登壇。まず、チベット人の意識が今変わりつつあると述べました。自分たちの世代のように、チベットに生まれ、早い時期に難民として外国に脱出した世代と、中国国内に生まれた、しかも若い世代のチベット人たちの間に意識の変化が起きている。
チベットを愛し、自由を求めているという点では何ら変わりはないけれども、自分たち古い世代は、どこか、自分の頭で考え方針を立てる姿勢が弱い所があった。考えることはダライラマ法王にお任せし、また、国際社会に訴えて世界に何とかしてもらうという姿勢があったことは否めない。これに対し、中国政府は飴と鞭をうまく使い分けてチベットを翻弄してきた。1979年から、チベットは中国政府と「対話」をし続け、対話で問題が解決できると考えてきたが、中国側も、89年までは、独立以外の問題なら何でも話し合う用意があるという姿勢を見せてきた。しかし、89年以後中国は「大チベット成るものは存在しない」と宣言し、四川省、青海省などをチベットとはみなさないと言い出してきた。しかし、今現在チベット人の焼身抗議が多く起きているのは実はこれらの地区なのであり、事実上、チベット人たちがこれらの土地で伝統的に生活してきたことを証明するものとなっていると述べました。

 さらに、以前は中国政府は抵抗するチベット人を「反革命分子・分離主義者」と批判してきたが、今は「分離主義者で外国勢力にそそのかされている」と決めつけており、最近、中国の民族統一工作部あたりは「自治区」という言葉すら紛らわしい、愛国心や中国の国家的統一を危うくする言葉だからなくすべきだとまで述べているようだと、中国政府が勝手の一時的な対話姿勢をかなぐり捨てていることを述べました。

 そして、今回の焼身抗議は、多く若い人によって行われており、この行動は、他人を傷つけるのではなく、自分の命を正義のためにささげ、訴えるというものだけれども、彼らのメッセージは北京政府だけではなく、国内外にチベット同胞に対しても、果たしてチベット問題は、中国政府との対話で解決できるのだろうかという問いを突き付けているのではないかと指摘しました。

過去のチベット運動とは何だったのか

 そしてペマ会長は、これまでの過去のチベットの中国侵略以後の60年間の運動とは何だったのか、今回の焼身抗議はそれを私たちチベット人に考えさせたと述べ、これまでの、中道路線と対話しかないという自分たちの考えを再検討させていると自戒を込めて述べました。確かに、その姿勢は人権問題としてチベット問題を広く国際社会に訴えることができた。しかし同時に、運動がそのフォーカスをぼやけさせ、緊張感がなくなってしまった面もある。なぜ120万人ものチベット人が命を奪われ、今も数千人が政治犯として獄中につながれているのか、何のために綿失態は植民地とされてしまったのか。自分たちチベット人は、60年代は、「チベット人、たちあがれ」という歌を歌って、民族の自決を信じてきたはずなのに、いつのまにか、自分たちの問題を、一般的な人権問題としてしか考えなくなってしまったのではないか。自分たちの問題が、今は果たして民族独立なのか人権問題なのか、チベット人自身にすらわからなくなっていることを、今回の焼身抗議は教えてくれたと述べました。

 そして、あのような抗議行動を報じた日本の新聞のなかにも、この矛盾が明らかに表れているとし、2012年3月15日の読売新聞を挙げ、国連本部前でのチベット人のハンストに対し「中国共産党政府の信仰規制に抗議する僧侶らの焼身自殺が相次いでいる問題で」「ハンストは、独立を求める急進派、チベット青年会議の呼びかけで、インド在住の高僧シンザ・リンポチェ師(32)ら3人が22日からはじめた」と報じているが、僧侶は単なる信仰の問題、つまり人権問題だけで焼身抗議をしていたのではない。「独立を求める急進派」が支援しているこの構図は、彼らが何を求めているかを明らかにしていると指摘しました。そして、若いチベット人たちは、イスラエルの建国やパレスチナなど各民族の独立を目指す運動にも影響を受けつつ、自らの意志と選択で行動をし始めている、焼身抗議を見ると、一部の人は、生命を大事にすべきではないかというけれども、もちろん生命は大切だけれど、それは私たちに言われなくとも、自らの体に火を放つ人々は私たち以上に生命がいかに大切なものかはわかっている、仏教説話にあるジャータカ物語には、お釈迦様は前世で、上田虎に自らの身をささげたという説話があるけれど、自分の命を菩薩の行為としてより大きな目的のためにささげるという行為は、僧侶だからこそできるのだと述べました。

自由で平和、伝統文化の尊重されるアジアへ

 そして、同時にこの焼身抗議は、1960年代以後中国政府は全国をまさに収容所国家化しようとしてきたけれども、どんな暴力も恐怖政治も、人間の精神から、自由や信仰を奪うことはできないのだという希望を世界に向けて示している、今起きつつある、自分の頭で考え行動を選択し、インターネットなどを駆使して国内の情報や焼身抗議の映像などを世界に伝えて居る新しい世代のチベット人の行動に、自分は希望を見出したいとペマ氏は述べ、自分が日本に来た約50年前から現代にいたるまで、世界では様々な政権交代が起こり、民主化もまたその反動も、諸国の独立もまた分裂も起きてきた。独立とは、哀しいことだが、そこにすむ民族の意志だけで決まるものではなく、周囲の状況・環境の変化、大国の意志、また時代の流れなどさまアマナ外部の要素によって生まれて来るのが世界の実情で、大切なのは、良きリーダーが、その好機を逃さないこと、状況の流れをしっかり見極めて、かつ独立への意志と戦略を持ち続けることだと述べました。

 そして、いささか残念な例として、最近あったある台湾の運動家の話を挙げ、かれはかっては激しい独立の闘志だったし、中国政府の嫌がることはすべて行うという意思と行動を示していた人なのだが、今は、馬国民党政権になってから中国と台湾の関係は極めて良好になり、経済交流も進んだこと、其の結果経済的に豊かになったことを手放しで評価しており、民進党の8年間は無駄だったとまで発言していた。この話を聞きながら、確かに彼の言うことにも一理はあるのかもしれないけれど、大変残念に思ったと述べました。そして、これは「明日の台湾は今日のチベット」になるのではないかと、経済効果のみを考え、祖国や独立の意義を見失ってしまうことへの危惧の念を語りました。このペマ会長の指摘は、巨大な市場に目がくらんで人権問題や国難をみすごしている日本の現状にもつながるものでしょう。

 そして、アジア自由民主連帯協議会の存在意義について、モンゴル、ウイグル、チベットなど、中国政府の弾圧されている諸民族は団結しなければならず、それ以外に選択の余地はなく、また中国人自身、自分たちが独裁政権に支配されているという点では同じであり、国際的にもこの会は実は注目されていることを述べました。そして、譲許は決して悪いわけではなく、インド政府が経済成長やアメリカとの関係の良好化などで今や中国に対抗できる自信を持ち始めていることや、今日のべたようなチベットの新しい世代が運動の中核になっていくだろうこと、中国政府は、常にこのような運動に対し、分断工作を図り、偽の情報を流してくる行為を続けてきており、自分たちは決してそのような罠に陥ってはならない、アジア全体が、自由と民主主義が確立され、自分たちの伝統文化を守り、お互いを尊重し、平和で平等な立場で共存共栄できるような状況になるまでこの会の運動は終わらないこと、自分はもう年齢的にその自由の実を味わうことができるかどうかはわからないけれども、其の実を後の世代に実らせるために努力していきたいと述べ、講演を終わりました。

 最期にイリハムマハムテイ副会長が閉会の辞を述べ、アジア人もまた世界のすべての国の国民同様、自由に生きる権利がある、なぜ、チベットの今中国が認めている自治区ではなく、その周囲の四川省等から焼身抗議の映像や情報がもたらされるかといえば、その地域ならばまだ多少自由に使えるインターネットも、チベット、ウイグルの「自治区」では完全にまだ規制されているからだと述べ、自由なアジアの実現のためにこれからも努力していきたいと結びました。

(文責:三浦小太郎)


アジア自由民主連帯協議会 第1回講演「焼身抗議の続くチベットの現状」
http://www.youtube.com/watch?v=WsERDZhAXBc


※講演会告知
アジア自由民主連帯協議会主催 第一回講演会「焼身抗議の続くチベットの現状 今日のチベットは明日の日本か?」
http://freeasia2011.org/japan/archives/922


※次回 第二回講演のお知らせ。
アジア自由民主連帯協議会第二回講演会「拉致被害者の救出と北朝鮮民主化に向けて」

http://freeasia2011.org/japan/archives/1062



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