ビルマ・テインセイン大統領来日にあたっての要望書 : ビルマ市民フォーラム

内閣総理大臣 野田 佳彦殿
外務大臣 玄葉 光一郎殿

拝啓

我々、ビルマ市民フォーラムは4月20日よりのテインセイン大統領来日の間、日本・ビルマ首脳会談が予定されていることを受け、本要望書をご送付申し上げます。

ビルマでは2011年3月30日のテインセイン政権発足後、民主化指導者アウンサンスーチー氏とテインセイン大統領の会談や、大規模な政治囚の釈放、いくつかの少数民族武装組織との停戦合意、補欠選挙の実施など数多くの前向きの動きが起きております。ビルマ市民フォーラムはこれらの動きを歓迎する一方、ビルマには未だ多くの問題が残っていることを指摘せざるを得ません。

第一に、未だ収容されている政治囚の問題です。タイ国境でビルマ政治囚を支援するビルマ政治囚支援協会(AAPP)の調査では未だ465人(2012年4月7日発表)の政治囚が収容されています。[1]

第二に,新政権発足後も少数民族居住地域において少数民族武装組織と国軍による戦闘行為が起きており、ビルマ国軍による超法規的殺人や強制移住、荷役などの強制労働、こどもを含む女性への性暴力行為など数多くの人権侵害が起きています。[2] カチン州やシャン州では大規模水力発電所周辺地域、アラカン州ではシュエガス石油パイプライン建設地などでこれらの問題が起きています。カチン州での戦闘では、中国側に1万人を越える避難民が発生しているとの報道もあります(ロイター通信、2月8日付)。

今月1日に行われた補欠選挙では、アウンサンスーチー氏をはじめとする民主化勢力も参加し、当選しました。しかし、軍の影響力の強い憲法は現在もそのままであって、今後の展開はまだ未知数であります

このような状況の中で、日本政府は凍結されていた対ビルマへのODA(「バルーチャウン水力発電所補修工事」「人材開発センター」)を再開することを正式に発表しました。本年2月28日には、玄葉外務大臣が対ビルマへ新規50億円規模の支援を準備しているとも表明されています。[3] また、テインセイン政権以前の延滞債務約5000億円が免除されるとの一部報道もなされています。いまだ十分に民主化に向けた動きが確固なものと評価できない状況における日本の対ビルマODA政策の転換には非常に大きな懸念を持っております。

よって、日本政府に対し対ビルマの新規ODAの停止および「バルーチャウン水力発電所補修工事」「人材開発センター」プロジェクト再開の再検討を強く要望いたします。

また、今後,対ビルマODA再開にあたっては以下のことがビルマ国内で実施・確立された後に検討することを要望します。

1.全政治囚の即時無条件解放
2.少数民族地域での戦闘の即時停止および国軍の撤退
3.少数民族地域を含むビルマ全土での基本的人権の確立
4.少数民族との対話および和解
5.憲法の確実な見直し等法の支配の徹底
6.報道および結社の自由

敬具

ビルマ市民フォーラム

代  表 永井  浩
事務局長 渡邉 彰悟

[1] http://www.aappb.org/Updated_To_Confirm_PP_list_1.html
[2] http://www.burmapartnership.org/wp-content/uploads/2012/03/briefer-rape-as-a-weapon-of-war_feb2012.pdf
[3] http://www.cu.emb-japan.go.jp/jp/docs/gemba120228jp.pdf

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