第四回講演会報告と動画「最近の中国情勢と日中関係」講師 石平氏

第四回講演会「最近の中国情勢と日中関係」講師 石平

 6月26日午後7時より、東京下北沢にて、アジア自由民主連帯協議会副会長、石平氏の講演会が開催されました。
 まず石平氏は、今年は中国で5年に一度の共産党大会が予定されているが、中国では常に、この党大会の前には権力闘争が起きる。5年前の党大会で、胡錦濤主席の後継者は習近平とほぼ決定しており、彼が政治局常務委員という20名ほどの政治局のメンバーの中のトップクラスの9人に選ばれたが、この人事を最も不満に思ったのが、今回失脚した薄熙来だったと指摘しました。

習近平も薄熙来もともに、太子党というかつて毛沢東とともに中国共産革命を成し遂げた人々の子孫であり、昔からライバル関係で出世コースも競っていたが、5年前薄熙来は政治局員に留まり常務委員には入れなかった、そして、さらに彼は重慶に飛ばされ、最高指導者レースから明確に外されたと石平氏は述べました。

そして、巻き返しを図った薄熙来は、次の二つの手を打ったと石平氏は指摘します。一つは、黒社会、いわゆる中国のやくざ組織への撲滅運動。これは当然、そのやくざ組織と裏で手を組んでいた腐敗した共産党幹部の逮捕や失脚に芋づる式につながっていき、本来取り締まる側であったはずの重慶の元公安局長までが黒社会との癒着を暴かれて逮捕されたと、黒社会や腐敗した共産党幹部に苦しめられていた中国民衆は此れには喝采を叫んだと石平氏は述べました。

続いて薄熙来が行ったことは、毛沢東時代への回帰だったと石平氏は言います。毛沢東時代の革命歌を庶民に歌わせることを勧めたのはその象徴ですが、石平氏によれば、中華人民共和国の歴史は1949年から1976年、毛沢東の死までを「毛沢東時代」それ以後現代までを広い意味で「トウ小平時代」と分けられると指摘しました。そしてまず毛沢東時代について、ある歴史家は、毛沢東が中国民衆のために役に立つことをしたのは1976年に死んだことだけであるというブラックジョークを紹介したうえで、石平氏は次のようにある種の毛沢東時代の特徴と逆説を述べました。

毛沢東は、政治闘争やゆがんだ共産主義の理念は大好きだったが、経済発展には全く興味がなく、したがって、毛沢東時代に中国は最貧国に落ちたといってもよい。そして、文化大革命に象徴されるような大失敗の後、中国はトウ小平主義、いわゆる改革開放経済、政治は共産党独裁だが経済は自由主義経済を取り入れ、外国ともうまく付き合って、確かに表面上は経済を発展させた。しかし同時に、これはすさまじい貧富の格差を生んだ、おそらく格差社会という点では中国は世界一だろうと石平氏は述べました。そして、毛沢東時代は、毛沢東その人のようにごくごく一部はぜいたくをしていたけれども、一般民衆はすべて「平等に貧しい」状態にあったため、実は人間精神とは不思議なもので、それほどの不満や嫉妬はなかった。今の超格差社会は、貧しい庶民に、特権層、富裕層、それと結びついた共産党幹部への激しい不満を持たせていると指摘しました。

そして、このような不満を持つ人の中には、貧しくとも平等だった毛沢東時代への回帰現象が起きている、薄熙来はここに目を付けたのであり、別に庶民の味方ではないけれども、追放された重慶など地方から、中央への不満をバックに自らの勢力を強化し再び政界に昇進しようとしたと石平氏は述べました。しかし、この方法論は現在の中国政府の根幹を揺るがすものであり、中央政府は、この薄熙来を必ず倒さねばならないと決意したはずだと石平氏は分析しました。

しかし、薄熙来の失脚の直接の原因は、妻の不正蓄財とそこから起きた犯罪だったと石平氏は指摘します。彼の妻は夫の権力を利用して、収賄などあらゆる手段で不正な蓄財を行い、朝日新聞の報道によれば、なんとその額は60億ドルに上ると石平氏は述べました。さらに石平氏は、中国政府寄りでしばしな誤った報道をする傾向があるのが朝日新聞だが、時としてこのように正確な報道もなされるようだと聴衆を笑わせた上で、この60億ドルという額に比べたら、日本の田中角栄氏や鈴木宗男氏の不正や収賄など全くかわいいものだと述べました。

そして、このような大金を、現在の中国共産党幹部は手にしたら必ず外国に隠そうとする。しかし、これだけの額になると普通のルートではわかってしまうから、薄熙来の妻は、イギリス人のブローカー、それこそやくざのようなある男を使って隠そうとした。実は、この男が彼女の愛人だったのではないかという噂もあるが、それはそれとして、この男も、隠し財産を作ってやるのだから、それなりのリベートをよこせと言う、まさにやくざとやくざの交渉のようになった。そして最後には、薄熙来の妻は、この男を重慶に呼び出し、スープに毒を盛って殺してしまったと石平氏は語りました。

しかし、やはり外国人の変死事件だから、これは公安局が調べてイギリス本国に報告をしなければならない。そこで、公安幹部の王立軍という人物が取り調べを行い、このイギリス人は急性アルコール中毒で死んだのだというウソの報告を挙げた(この男性は全くお酒を飲まない人間だったのに)。しかし、後に王立軍は心変わりし、薄熙来の政治的立場はまだまだ不安定だ、と判断して事件を再調査、毒殺の証拠をほぼつかんだ。王立軍は、この情報を万が一薄が失脚したら公表し、また、仮に権力の座に返り咲いたら、有力な情報として自分を取り立てさせようと思ったようだが、これに気付いた薄は激怒して、王立軍の職を解任し、王立軍の部下として再調査にかかわった何人かが謎の死を遂げたと石平氏は述べました。王立軍は此れでは自分の命が危ないと、重慶から成都に逃亡、アメリカ大使館に駆け込みます。石平氏は、おそらく米中の間で、王立軍の生命は補償するという取引がなされた結果だろうと推察しますが、アメリカ大使館は王を中国政府に渡し、王は北京ですべてを自白したと石平氏は述べました。これによって、薄熙来の失脚が決定したのでした。

そして石平氏は、今、中国において政治の新しい流れとして「政治改革」の声が上がっていると指摘しました。そのキーマンとなるだろう人物とは王洋で、彼は以前は重慶のトップ、今は広東省の党書記で、実は薄熙来と極めて因縁が深い人物だと石平氏は指摘します。薄が逮捕した共産党幹部は皆王洋の部下だった人が多い。また、もともと王は太子党ではなく、当該組織である共産主義青年団出身で、胡錦濤とも直系であり、次の世代のホープと言われている。太子党メンバーは、中国を自分たちの父の世代が作ったという意識から、国家そのものを自分たちの私物であるかのように考える傾向があるが、庶民出身の王にはそういう発想はない。そして、薄とは逆に、現在の格差社会をはじめとした中国社会の矛盾を、毛沢東時代への回帰ではなく、むしろ改革開放経済の徹底化と、さらには一定の政治改革で解決しようというグループの象徴だと石平氏は述べました。

石平氏は急いで付け加え、政治改革と言っても民主主義や自由などを指すものではなく、中国共産党内部の改革に留まるだろうが、しかし、この流れが中国政治に与える影響は、いよいよ中国バブルが終わりそうな時代に大きく作用する可能性があると述べるとともに、それこそ中国経済を過大評価し中国投機や進出をあおってきた一部マスコミも、中国経済の限界や危機を認めざるを得なくなっている、この時期に、一方では改革を目指す動きもありうるが、さらに独裁政権のいつものパターンとして、外部に敵を作ることで内部矛盾を乗り越えようとする危険性もある、その際もっとも狙われるのが日本であることは、残念ながら事実だと警告を発しました。

日本は経済力も、いや、軍事力も決して弱いわけではない。しかし残念ながら、政治、外交は弱いし、防衛意識も足りない。今中国は海洋戦略として、ベトナム、フィリピンの海域にどんどん侵略をかけており、これに対しベトナムもフィリピンも、実は堂々と中国に立ち向かっている。アメリカがアジア戦略を変えつつある中、これら小国は、アメリカをアジアに導くために、かっての宿敵ベトナムも、一時は米軍基地を廃したフィリピンも、再びアメリカ軍を港に迎え入れてでも中国に対抗しようとしており、結果的に、アメリカの中東からアジアへの変換とともに、対中包囲網を作れる可能性が出てきた。日本の国会は、今この問題をこそ議論し、有効な手立てを打つべきだと、石平氏はむしろチャンスがきているのだと述べました。

その中で明るいニュースは、石原慎太郎都知事の、アメリカでの尖閣買取宣言こそ、日本の最もとるべき戦略を提示している。多くの募金が集まっていることも心強い限りであり、中国も、日本政府は攻撃、恫喝できても、一地方自治体の東京都を相手に同じ土俵に降りてくることはできないだろう、この機会に尖閣を日本が自衛隊配備をも含む実効支配を行い、ベトナムやフィリピンの動きとも呼応する形で中國を追い詰めることの重要性を石平氏は提起し、現状分析とともに未来への展望を示唆して講演を終えました(文責;三浦小太郎)。

登壇した当協議会メンバー、ペマ・ギャルポ、西村幸祐、イリハム・マハムティ、吉田康一郎
登壇した当協議会メンバー、ペマ・ギャルポ、西村幸祐、イリハム・マハムティ、吉田康一郎。


【動画】

第四回講演会「最近の中国情勢と日中関係」講師 石平
http://youtu.be/o3IKlDBJulg

2012年6月26日、東京下北沢の北沢タウンホールで行われた、アジア自由民主連帯協議会第四回講演会「最近の中国情勢と日中関係」の動画です。

講師:石平

登壇者:
ペマ・ギャルポ
西村幸祐
イリハム・マハムティ
吉田康一郎
司会:古川郁絵

※講演会レジメより
薄熙来事件後の政治情勢と今後の行方
薄熙来はどうして失脚したのか
重慶事件の「軟着陸」はできるのか
「毛沢東回帰」に潜む深刻な社会危機
「政治改革」を巡る新しい動き
習近平政権下の新しい「路線対立」
★「上からの改革」か「下からの革命」か

◇出口の見えない減速期に入った中国経済
数字とニュースで見る中国経済の凋落
国内で定着した「中国経済減速論」
「投資中毒」に陥った政府の経済運営
限界を迎えた「二台の馬車」の成長戦略
不動産バブルの崩壊は既に始まった!
★30年の高度成長に終止符が打たれる
★不動産バブル崩壊後の中国経済の行方

◇習近平政権下の国際戦略と日中関係
2012年は政権が内政に専念する年
体制が立てられた後の海洋戦略の推進
経済・社会が危機に陥る場合の政権維持策
再び対日強攻策に「先祖返り」する可能性
★中国リスクと中国からの脅威に対処して、日本は何をすべきなのか

※講演会で紹介した告知です。
・アムネスティ・インターナショナル
天安門事件学生リーダー王丹初来日!トーク & 映画『亡命』上映会「13億・中国の民主化と見えない壁」

7月5日(木)開場:18:30 なかのZERO小ホール
http://www.amnesty.or.jp/get-involved/event/2012/0705_3088.html

・日本ウイグル協会
「7・5ウルムチ虐殺三周年抗議デモ」

平成24年7月7日(土) 集合開始 15:30
常盤公園 (中央区日本橋本石町4-4-3)
※中国大使館抗議は7月5日(木) 10:30~
http://uyghur-j.org/news_20120707.htm

※次回は南モンゴルをテーマにした講演会を予定しています。

●アジア自由民主連帯協議会
http://freeasia2011.org
※入会案内はこちら
http://freeasia2011.org/japan/membership

・ラジオフリーウイグルジャパン
http://rfuj.net



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