内蒙古自治区はいま : 宮崎正弘の国際ニュース・早読み

平成24(2012)年7月17日(火曜日)
通巻第3705号

「草原の自然環境を守れ、石炭開発は公害だ」と遊牧民が抗議行動をつづける
内蒙古自治区人民政府主席、ライジングスター=胡春華に降りかかった難題

 秋の党大会へ向けて中国の各行政単位は、その地区の第十八回共産党大会代表をきめる予備段階をようやく終えた。
全31省(香港、マカオは独自の代表を送る)の党代表のなか、異色は周永康が山東省で選抜され、賈慶林、李長春らも四川省など、とんでもない遠隔地から選ばれたことが話題となった。この三人は庶民から蛇蝎のごとく嫌われる政治局常務委員だ。

 それぞれの地区党大会では、胡錦涛がすすめる「和諧社会」と「科学的発展観」を確認した。(でも「科学的発展観」って、いったい何だろう?)

 とはいうものの全体は一枚岩とは言えず、22の地域は「科学的発展観」を「推進」あるいは「推動」とスローガンに並べたが、地域によっては経済発展から取り残されたところがあり、「精神高揚」「国際化」などを謳った地区もあれば、北京では団派の郭金龍が書記に選ばれたうえに、「建設中国特色世界城市」が主要スローガンとなった。

ほかに海南島は「実現緑色崛起」「加速国際旅遊島建設」。貧困地区の吉林省は「基礎建設」「富裕生活」がふたつの目標に並び、また中西部の青海省、陝西省、江西省、四川省などでは「基礎的改革」「基層建設」などありきたりのスローガンの標榜に加えて「深化改革開放」(青海省)、「建設西部発展高地」(四川省)などとなり、山東省ではモラル頽廃を批判された所為か、「経済文化強省」。

広東省は「幸福広東」と余裕をみせ、また天津も「国際港口城市」などと特色を前面に出した。

 なかでも注目を集めているのが内蒙古自治区である。
 なぜなら省党委員会書記(自治区の場合は「人民政府主席」という)は、団派の第六世代のチャンピオン、胡春華であり、ひょっとして次期政治局常務委員会に三段跳びする可能性を否定できないからである。

第六世代のライジングスターのなか、周強・湖南省書記と孫政才・吉林省省長も多くのチャイナ・ウォッチャーの注目を集めているが、次期幹部レースで胡春華が一歩飛び出したと見られる所以は、かれが「リットル胡」と呼ばれるほどに胡錦涛のお気に入り(血縁関係はない)、しかも来歴が似ているからである。

 ▼チベット弾圧の方法を学んだ胡春華

 胡錦涛は周知のようにチベット書記時代、チベット僧侶、学生等の反逆に手を焼き、血の弾圧で臨んだ。ラサには戒厳令を敷いた。
これが治安を維持したとして評価され、中央のトウ小平が注目し、出世階段を駆け上った経緯がある。

しかも胡錦涛のチベット時代、副官のごとき存在でラサに赴任していたのが、胡春華である。あまつさえ胡春華はチベット語を流暢に喋るという語学の才能にも恵まれている。現在49歳。十年後の中国共産党のトップに付く可能性はきわめて高い。

 さて内蒙古自治区では2010年末から劉卓志・前副省長(内蒙古自治区人民政府副主席)が汚職容疑で取り調べを受けてきたが、この五月に裁判所は「無期懲役」「党籍剥奪」「財産没収」という重い処分を発表した。
 党幹部時代に「遼寧春成工貿集団」に対して数々の便宜を図り、817万元の賄賂を得たとされた。高級幹部の賄賂の金額にしては少なすぎるのに、刑が重いのは政治的意図が含まれているようである。
 
 やはり党派闘争の背景があった。
 情報筋が観察するように内蒙古自治区はレアアースの宝庫、この利権を団派が独占するためである。
 失脚した劉卓志の代りの副省長に団派から白向群(シリンホト市政府主席=党書記)を選んだのだ。この人事は、胡春華がまもなく中央に栄転する予兆とも認識されており、すると次期省書記に、この白が昇格する布石ではないかと観測筋は見る(多維新聞網、5月31日付け)。

とはいえ名前から判断できるように白はモンゴル人。遼寧生まれで、民族師範学院で経済学博士。同省赤峰市教育局党書記から、はい上がってきた。共生団蒙古自治区シリンホトの党書記。62年生まれの50歳だから胡春華と同じく「第六世代」である。

 シリンホト地区は石炭の宝庫、露天掘り。面積は英国ほどの広さがあり、いまや遼寧省、山西省よりも石炭生産量が多く、石炭生産は全中国の27・8%(英誌『エコノミスト』、12年7月14日号)。

その埋蔵となると世界の四分の一あるかとさえ言われている。ゲルマニウム埋蔵は世界の38%を占める。内蒙古自治区シリンホト周辺は日本の産業界を悩ませるレアアースの産地でもある。
 

▼レアアースの利権を団派が独占するため?
 
 ところがどっこい。事態はシナリオ通りには行かないのが相場である。

 失脚した劉卓志は、このシリンホト市の党幹部を長く治めたため、地元幹部等は判決に不満を抱えている。
まして蒙古族にとっては、漢族に先祖伝来の土地から資源を強奪されているという激しい憎悪感を抱いている。チベットの水資源、ウィグルの石油ガスが漢族に強奪されていると地元民が認識していると同様だ。

 反乱が起こった。最初は遊牧民が炭坑開発は牧草地が失われるので草原を破壊するような資源開発をやめろと要求した。昨年には漢族の運転手がモンゴル族のデモ参加者を一人轢き殺したため、大暴動が発生。このため胡春華が治める内蒙古省裁判所は運転手を死刑、助手を無期懲役とした上で、遺族にかなりの補償金を支払ってデモを鎮めた。

 しかしデモは2012年春から再発した。
王洋が指導した広東省鳥炊村で農民の暴動反乱が、村の書記を民主選挙で選ぶという結果に刺激をうけて、猛烈な炭坑の待遇改選、保安設備拡充などを求める労働者と、民主化をスローガンに掲げる学生らが騒ぎだし、ついには炭坑が一時閉鎖を余儀なくされたのだ。

この石炭坑一時閉鎖措置はデモ隊の要求を呑んだのではなく、石炭需要の急減によって沿岸部に2000万トンの在庫があるため、生産調整とも言われる。
 シリンホトで暴動は昨年春以来、頻繁に伝わっているが、フフホト市でも大学の周りを軍が囲み、学生は当面キャンパスから出るなと外出禁止令がでている。



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