【書評】前川恵司著「夢見た祖国(北朝鮮)は地獄だった」高木書房

前川恵司著「夢見た祖国(北朝鮮)は地獄だった」
1959年、朝鮮総連から日本の政治家、マスコミまでが北朝鮮を地上の楽園のように讃え、在日朝鮮人の北朝鮮「帰国」をよびかけた北朝鮮帰国事業が始まった。しかし、希望に満ちてたどり着いた「祖国」北朝鮮は、自由のかけらもない収容所共和国であり、慢性的な食糧不足は90年代の飢餓地獄へと変わっていった。

帰国者とその親族たちは、他の北朝鮮難民と同様、生きるために中朝国境を越えていった。そして、その一部は、救援団体やときにはブローカーの力を借りてでも、この日本にたどりついたのだ。彼ら「脱北帰国者」たちは200人を超える。本書は彼らに数年間の取材を経て描かれたルポルタージュであり、著者は彼らを決して美化せず、また偏見も持たず、その等身大の姿を、気高さも勇気も、そして弱さも過ちも含めて描こうとしている。

脱北者高敬美は北朝鮮で帰国者の父がスパイ容疑で拷問を受け、本人もかの体制に絶望して脱北した。彼女は日本入国後、帰国事業の責任を問おうと、朝鮮総連を訴えたが、日本の裁判所は彼女の訴えを退けた。日本人妻斎藤博子は、言いようのない苦難の後日本に帰国することができたが、同時に彼女を利用する中国人ブローカーによって不法在留者を呼びこむことにも加担せざるを得なかった。本書に登場する脱北者の言葉に常に感じられるのは、生き抜くためにはいかなる手段も取らざるを得なかった極限における人間の姿であり、徹底した反日国家北朝鮮で、彼ら帰国者、日本人妻たちが様々な苦難を舐めねばならなかったという、まさに歴史の悲劇そのものである。

日本と韓国、北朝鮮の関係が混迷を深めている今こそ、歴史の闇に葬られてきた帰国者、日本人妻の姿をリアルに描いた本書をおすすめしたい。(三浦小太郎)



関連記事 :
  1. 【書評】「チベットに舞う日本刀 モンゴル騎兵の現代史」楊海英著 文藝春秋
  2. となりの国にある虐待収容所 北朝鮮の人権弾圧の実態 : 頑張れ日本!全国行動委員会 東京・荒川支部
  3. 守る会関東学習会「夢見た祖国(北朝鮮)は地獄だった」 : 北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会
  4. 総連やスパイ活動への対処を国会議員あてに書簡で訴え : 北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会
  5. 金正男独占告白、文藝春秋社から発売

.