第八回講演会報告と動画「台湾問題から見た中国の膨張」講師 永山英樹

第八回講演「台湾問題から見た中国の膨張」講師 永山英樹

アジア自由民主連帯協議会第8回講演会報告
「台湾問題から見た中国の膨張」講師 永山英樹

11月23日、アジア自由民主連帯協議会第8回講演会が、台湾研究フォーラム、頑張れ日本全国行動委員会などで活躍しておられる永山英樹氏を迎え、「台湾問題から見た中国の膨張」と題して開催されました。(なお、講演者は原則的に、『シナ』という呼称を使われたため、この報告もそれにならって記述します)
まず冒頭、吉田康一郎副会長が国政への挑戦(東京第7区、維新の会)を宣言し、自分は国政の場でも、中国など、独裁国家に抑圧されている人々の問題を訴えていきたいと語りました。

その後永山氏の講演にうつり、氏は、中国共産党政権の基本的な膨張、侵略姿勢は、現在の中華人民共和国であれ、またそれ以前の中華民国であれ、自分たちは清国の領土を継承していく権利と義務があるという思考が根本にあること、さらに最近はそれにとどまらず、全く違う文化伝統を持っている諸民族を、同じ「中華」なのだ、漢族と一体なのだという全く乱暴な議論で侵略を正当化している そして、その侵略の矛先の一つが台湾であると述べました。

そして、中国共産党は政権を握って以後、現在に至るまで、台湾を「解放」することこそ、中国の建国が完成するときだと絶えず主張し、台湾海峡にて様々な武力挑発や威嚇を行ってきたが、それがなぜ今まで実現していないかと言えば、まずは、米軍、米国によって守られてきたからだ、しかし、近年中国は、激しい「統一抗争」を仕掛けてきている。シナの近年の著しい軍備拡張に対し、国際的な批判が来ると、返ってくるいいぶんはいつも決まっており、それは防衛のため、領土保全のためという。これははっきり言えば、台湾を侵略し確保することが領土保全ということの意味だと永山氏は指摘しました。

これは、シナがすでに米国を恐れなくなった、米国と対峙するだけの軍事力を持てる自信をつけたということだと永山氏は述べ、これは中国が米国と全面戦争することではなく、仮に中国が台湾に侵攻した時、米国が救援に仮に駆けつけたとしても、そのレベルでは対抗できるだけの力をつけたと中国は判断している、そして、それはおそらく軍事的にも事実だろうと述べました。

最近、南西諸島を超えて西太平洋でシナの空母が演習をしているが、これは、台湾侵攻の折、米国の軍を近づけさせないぞと、それを目的に演習を行っている中国の軍拡を見ていると、一つは短距離ミサイルの増強、これは台湾への恫喝であり、独立などあきらめて統一を目指せと言う脅迫、また、もう一つの潜水艦、中距離弾道ミサイルなどは、米軍に、もしくは我が国の自衛隊に対する攻撃および台湾侵略を邪魔させないという目的があると述べました。さらに、米国本土にも届くミサイルや潜水艦の整備など、米国も簡単には台湾を助けに来れない、もし来たらそれなりの報復もするぞと言う軍事的恫喝を中国は打ち立てつつあると述べました。

そして、シナがいま目指す太平洋進出のためには、どうしても邪魔になる台湾を自分たちの手中におさめ、太平洋への出入りを自由にしなければならない、また、シナがエネルギー資源の獲得に夢中になっているのは、経済成長のためではなく、かの国の膨張政策を支えるためにこそエネルギー資源が必要だと指摘しました。そして、そのためにシナは東シナ海、南シナ海、インド洋などをそこの諸島とともに押さえようとしている、それはインドネシア、ベトナム、ビルマ、バングラデシュ、スリランカなど、諸国をシナの影響下に置くことを意味し、これこそが、清国の領土を回復するだけではなく、まさしく中華帝国、アジア諸国を従える新たなシナ中心の世界秩序の確立を目指すものだと、その根本的な野望を明確に指摘しました。

しかし、このような危険極まりない動きに対し、現在まで国際社会は、残念ながら有効な手を打つどころか、台湾問題は内政問題にすぎないという中国共産党の言い分を事実上受け入れてしまっている、もしくは、シナとの摩擦を恐れて沈黙している、仮に台湾が奪われれば、台湾周辺海域とは日本周辺海域でもあるわけで、日本にとっても大きな危機が訪れるのだが、日本政府は積極的な発言がなかなか見られない。かつて民進党の陳水扁政府が、住民投票で台湾の国連加盟の賛否を問うという極めて民主的でまっとうな提案をしたにも関わらず、当時の福田政権は北京にて、この投票行動が台湾海峡の緊張を高めるならば反対だと述べ、またアメリカもこの住民投票には大反対だった。アメリカも、台湾を守ることはともかく、基本的に中国と事を構えたくないという姿勢ははっきりしていると、永山氏は台湾の苦しい立場を指摘しました。

その結果出現したのが現在の台湾の国民党政権であり、これは事実上シナに対する屈服を意味する、国民党政権の誕生によって大陸と台湾の関係が良好になったなどという説はまったく欺瞞で、この前の胡錦濤の退場と習近平の登場の際、胡錦濤は、「分裂している状況の中で平和協定を結ぶ」という言葉を使ったが、これはかってチベットを平和条約を結ぶと言って侵略していった過程と同じだ、おそらく、あと3年半の国民党政権の間に、習体制は台湾統一(侵略)に向かうだろう、これが今の台湾の危機だと述べました。

その上で永山氏は歴史問題に移り、シナは三国志の時代に、呉の孫文が台湾に1万人の兵士を派遣し、数千の捕虜を連れてきたと主張し、これが台湾の僚友の証だと言い募るが、これは歴史的には全く根拠がない。17世紀、清国が統治するまで、全く大陸は台湾に関心を持った様子もほとんどなかった、それまではポリネシア系の原住民が水んでいたのだとまず指摘しました。

第八回講演「台湾問題から見た中国の膨張」講師 永山英樹

その上で、 台湾が歴史に登場するのは約400年前の16世紀から17世紀にかけてであり、当時のアジアはシナの皇帝と周辺諸国の国王との間に、冊封体制、朝貢秩序と言われる主従関係が広く存在していた、しかしその体制は唐の滅亡と共に一度崩壊し、1356年に出現した明はこの体制の復活を試みたが、その時も台湾は全く大陸と縁がなかった。そして、明主導の貿易統制に不満を持つ周辺の海洋諸国は、日本も含めて、非公許の私貿易、つまり密貿易を行った。この勢力を明は「倭寇」と名付けて取り締まろうとし、この中には日本だけではなくシナ人の倭寇、いわゆる海賊も多く存在した。この自由な貿易の流れは拡大し、 ポルトガル、スペインをもかかわる豊かな海洋交易がなされていったと、永山氏はシナの影響を廃した自由なアジアがこの時期に存在していたことを指摘しました。そして、台湾はこの倭寇の基地として歴史に登場したのだと述べました。そのような状況の中で、台湾はポルトガル人によって「イラ・フォルモサ」(美しい島)と名付けられていますが、その後この地域での欧州の勢力はオランダに握られていきます。日本へは砂糖と鹿皮などが輸出されていったと、永山氏は日本と台湾の交流についても指摘しました。
しかしこれ以後、台湾はすっかりその海洋国家としての可能性を封じられ、停滞の歴史を歩むようになる、シナに飲み込まれると自由も反映もなくなると、大陸国家の危険性を指摘、その上で、日清戦争で日本が台湾を統治してから、ご存じのような近代化の歴史がはじまると述べました。

そして、当初は孫文であれ毛沢東であれ、台湾にほとんど関心を示しておらず、独立を容認していたのに、大東亜戦争中に蒋介石らは領土欲をむき出しにし、1943年、カイロでのルーズベルト、チャーチル、蒋介石の会談で台湾の領有を持ち出した。そして、チャーチルは反対だったがルーズベルトはこれを認め、戦後の残酷な国民党独裁支配がはじまると述べ、永山氏は、本来台湾の歴史は、シナ大陸の歴史との縁は極めて薄いと強調しました。

しかしこのような歴史は、李登輝総統が登場するまでほとんど台湾では教えられず、シナに都合の良い、台湾はもともと大陸の領土だったという歴史観が強制されてきたので、台湾の人はこのような豊かな歴史を知らない、「一つの中国」という中国共産党の主張には、このように歴史的根拠は全くなく、かつ、法的根拠すらないと永山氏は述べました。
この法的根拠とは、日本が連合国との間で降伏文書に調印した九月二日、マッカーサー連合国最高司令長官は、日本に武装解除、戦闘停止などを命じ、日本本土や外地の日本軍の降伏すべき相手を規定した。そして台湾にいる日本軍は中華民国軍に降伏する。しかし、その際の中国軍の降伏受け入れ責任者は、台湾に進駐した台湾省警備総司令官の陳儀大将だった。これに対して降伏する日本軍の代表は第十軍方面軍(台湾を担当)司令官である安藤利吉大将だったが、ここで陳儀大将には軍司令官とは別の「台湾省行政長官」なる肩書きがあった。中華民国は台湾で「行政」を行う、つまり日本領である台湾を、勝手に自国の領土に編入しようとしたと永山氏は指摘しました。

しかし、安藤大将と総督府側からすれば、戦争の結果に伴う領土の変更とは、講和条約によって決められるのが国際法上の常識だし、そもそも台湾総督などに、領土の一部を勝手に他国に割譲する権限などあるはずはなかったと永山氏は述べ、実は法的根拠からも台湾を中華民国に編入したことにはならない、この重要な歴史的事実を日本側は突き付けるべきだと述べました。そして、最後に、台湾の人々のDNAを調査し、また言語学的に起源を調べてみると、台湾人は明らかに、マレーポリネシア語族に属する、民族的にも、歴史の運命から言っても、また法的にも、台湾は独立国であると指摘して講演を終えました。(文責:三浦小太郎)

第八回講演「台湾問題から見た中国の膨張」講師 永山英樹
登壇した吉田康一郎副会長。ペマ・ギャルポ会長。司会の古川郁絵。質疑応答の様子。


※講演会の動画はこちらをご覧ください。

第八回講演「台湾問題から見た中国の膨張」講師 永山英樹
http://www.youtube.com/watch?v=5U14IaojU-I

※ご紹介したイベントなど

12月中旬出版「日本は中国にこうして侵略される」
最新情報は永山英樹氏のブログをご確認ください。
台湾は日本の生命線! http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/

第2回アジアの民主化を促進する東京集会「日印国交樹立60周年を記念して」
2012年12月6日 文京シビックセンター
http://asiandemocracy.jp/

北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会・アジア自由民主連帯協議会 共同主催講演会
「中国の民主化、脱北者の人権」講師:劉燕子・脱北者証言

2012年12月15日 TKPスター会議室四谷
https://freeasia2011.org/japan/archives/1842

制作・協力 ラジオフリーウイグルジャパン
http://rfuj.net

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