北朝鮮:人権を否定し難民を強制送還 : ヒューマン・ライツ・ウォッチ

北朝鮮は9名の所在を明らかにし、脱北を理由に危害を加えたり、報復しないよう保証すべきだ。強制送還により、難民たちは非常に差し迫った危険にさらされている。北朝鮮は、許可のない出国を犯罪としており、脱北を試みて捕えられた人々や、送還された人々を拷問することで悪名が高い。
フィル・ロバートソン、アジア局長代理

(ニューヨーク)-報道によると、北朝鮮難民9人が、5月28日に北京から平壌に強制送還された。北朝鮮政府は9名の所在と安否を直ちに明らかにし、脱北容疑による処罰がないよう確保しなければならない。国際法上、個人は迫害を受ける恐れのある場所へ強制送還されない権利を有している。

「北朝鮮は9名の所在を明らかにし、脱北を理由に危害を加えたり、報復しないよう保証すべきだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチアジア局長代理フィル・ロバートソンは述べる。「強制送還により、難民たちは非常に差し迫った危険にさらされている。北朝鮮は、許可のない出国を犯罪としており、脱北を試みて捕えられた人々や、送還された人々を拷問することで悪名が高い。」

複数の報道によると、ラオス政府は5月10日に9人を逮捕し2週間以上拘留。その間、韓国の外交官が9名との接触を要請したが、面会は許されなかった。9名は14歳から23歳であるとされる。さらに、ラオス政府は5月27日に9名を中国の昆明(中国南部雲南省の省都)に送り、中国政府当局が彼らのパスポートなど関係書類をチェックした後、同日夜に北京に移送した模様。

9名は5月28日に平壌行きの飛行機に乗せられた。ラオスから中国、そして中国から北朝鮮への移送には、北朝鮮当局者が同乗したと伝えられている。ラオスや中国で、庇護申請をする機会を与えられた形跡はない。

脱北者には、強制送還後に厳しい刑罰が待ち構えている。よって、出身国から逃げ出した結果として、あるいは出身国を出国した後に起きた状況によって難民となった人々を指す、後発(sur place)難民に該当する。帰国した脱北者への取調べ・拷問・刑罰の厳しさや程度は、その者が北朝鮮国外で何をしたか、韓国と接触・取引をしようとしたのか、あるいは韓国に逃げようとしたのか、に関する北朝鮮当局者による評価に依拠していることを、長年北朝鮮難民に聞き取り調査を行っているヒューマン・ライツ・ウォッチは明らかにしている。北朝鮮では、慢性的に食糧や医薬品が不足し、苛酷な労働条件と看守による虐待が蔓延する管理所(矯正・教育センター)と呼ばれる恐ろしい収容所がある。韓国人と接触、あるいは韓国亡命を企てたと疑われた者は、多くの場合この管理所での長期服役を命じられる。

北朝鮮人民保安部は2010年に、脱北を「国家反逆」罪とする法令を承認した。

2011年に脱北した国家安全保衛部の元幹部はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、「(自分の担当地域で)捕えられた脱北者は皆、私の所に送られてきた」と話し、更に取調べの際に行われる拷問について詳述した。「最初は、隔離拘禁や最低限の食事により、精神的苦痛が与えられる……。そして黙秘したら暴行を受ける……。態度によって、暴行の内容も変わる。」

このような刑罰は明らかに、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の第12条第2項「すべての者は、いずれの国(自国を含む)からも自由に離れることができる」および第7条「何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない」に違反している。

今回の北朝鮮への9名の送還により、中国政府は、1951年採択の「難民の地位に関する条約」、1967年採択の「難民の地位に関する議定書」、および1984年採択の「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は刑罰に関する条約」への加盟国としての義務に再度違反したことになる。1951年採択の難民条約は第1条で、難民を「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない・・・」者と明記している。国連難民高等弁務官事務所のハンドブックが明確にしている通り、自国を逃げ出した結果として、あるいはその後に生じる迫害も上記の条件を満たすこととなる。拷問等禁止条約は第3条で、「締約国は、いずれの者をも、その者に対する拷問が行われるおそれがあると信ずるに足りる実質的な根拠がある他の国へ追放し、送還し又は引き渡してはならない」、と規定している。この保護規定は、全ての国を拘束する国際慣習法の規範と見なされており、中国と北朝鮮も本規定を尊重する義務がある。

ラオス政府もまた、こうした脱北者が北朝鮮国内で直面する可能性の高い、深刻な危害に対する責任がある。ラオスは難民条約を批准していないが、確実に拷問に遭う状況の場所に、個人を送還してはならないとする国際慣習法に拘束される。

「ラオス政府と中国政府は、難民認定を行う責務を果たさず、北朝鮮政府が9名を強制的に帰国させることを認めた。これで両政府の人権保護を軽視する姿勢は再び明らかになった」と前出のロバートソンは述べる。「9名に更なる危害が加えられた場合、その責任はこれら3政府全てにある。」


北朝鮮:人権を否定し難民を強制送還 : ヒューマン・ライツ・ウォッチ
http://www.hrw.org/ja/news/2013/05/29



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