第12回講演会報告と動画「ウイグル女性の人権問題」講師 グリスタン(日本ウイグル協会)

第12回講演会「ウイグル人女性の人権侵害」講師 グリスタン(日本ウイグル協会)

 9月28日、東京四谷の会議室にて、「ウイグル女性の人権問題」と題して、日本在住のウイグル人、グリスタン女史の講演会が開催されました。

 まず彼女は自分の生い立ちから語り、新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)のフクチャという、タクラマカン砂漠の近くに位置しているオアシスの村で生まれたこと、その美しい故郷の景色は今もなお忘れていないことを語ったのち、親の仕事の事情でウルムチの方に引っ越し、高校を卒業後働き始めたけれども、余りにも賃金が安く、2001年当時、1ヶ月分の給料で裕福な漢人ならば贅沢な靴一足を飼うくらいのお金(400~500元)しか出ないこと、2002年中国広州というところに出稼ぎに行って3年間働き、その後日本に来たことを語りました。

 その広州の仕事というのは大きな企業で、「20名ほど募集します」という広告に対し600名くらいが応募し、それは男女両方だったけれども、結局女性しか雇われなかった。それで両親たちが怪しんで、女性だけというのは何かおかしい、それならうちの娘は働かせられないと言うので、それで男性も採用されて、就職が決まった。そして、この時点ではまだ賃金も約束通り高かったのだけれども、2004年からは急に新しい労働者は給料が半分に下げられ、しかも抗議したら「じゃあすぐお帰りください」と言うように、急にやり方が変わって行ったと語った。中には、労働機関に胃腸を悪くして入院したら、もうそのまま解雇されて、しかも変えるための旅費すらもらえず、自分たちがお金を出し合って助けたこともあったと、急速に労働現場の人権が侵されていったことを語りました。
 
 そして今では、中国内陸部に働きに行ったというだけで、その女性は、多分漢人との間に何かあっただろうとみなされ、帰ってきてもあまりいい目では見られない、それは現実に、その地で漢人の男性に乱暴されたとかは現実に起きていて噂で伝わっているので、その女性の評判は落ちてしまうと悲しい現実を語りました。
 自らの体験に話を戻し、自分が中国にいた時は、やはり中国共産党の教育を受け、中国政府の嘘やウイグル人への弾圧や差別については深くは認識していなかった、そして、一番重要視されたのは何よりも中国語の勉強で、先生にこう言われていたのを今でも覚えていると語りました。
 
 「中国語をよく勉強しなさい。そうしないと、あんたたちは働き口を得られないよ。絶対に将来は暗いよ。必ず中国語をよく勉強しなさい。卒業後も、中国語がわからないと仕事はありませんよ」。

 そして教科書でも、中国の歴史に関してはいろいろ書いてあっても、自分達ウイグルの歴史に触れることはなく、日本に来るまでは、わがウイグル民族の固有の歴史、王朝、シルクロードでの繁栄についてはまったく知ることが出来なかったと、まさに「歴史・民族の抹殺」の様を語りました。グリスタン氏は、この意味で、教育とは本当に大事なんだ、自分の国や民族のことをきちんと教えなくてはならないんだと認識したと語りました。
 
第12回講演会報告と動画「ウイグル女性の人権問題」講師 グリスタン(日本ウイグル協会)
グリスタンさん

 そして今思えば、悔しいのは、自分たち最初に内陸部に働きに行った女性たちは、確かに給料ももらえたし、その時はうれしかったけれど、結局自分たちは実験台にすぎなかった、それは最初に私たちを採用する時に、必ず中国語がわかるかどうかを確認していたのですが、今は中国語がよく分からない地区の女性ばかり採用している。自分たちは、仮に内陸部に行ってからも、仕事場でこれはおかしいとか約束と違うとかがあれば、反論もできたし主張もできたけれど、今はほとんど強制的に集められている女性たちはそれもできない。最初に連れて行った自分達だけは約束を守って、その話が伝わった後はもう約束を守らず、結局今起きているのは計画的なウイグル人の同化政策にすぎない。そういう風に利用されたことがいまはすごく悔しいと語りました。

 続いてグリスタン氏はラビア・カーデイル総裁と世界ウイグル会議について触れ、ラビア氏は自分たちにとっても子供のころからの憧れで、何故かと言うと、ラビア氏がウイグルのいた時に建てた大きな百貨店のビルがあって、そこではウイグルの民族色の強いものが何でも買えるし、まさにウイグル人の心のよりどころのようなビルだった、子供のころだからお会いすることはなかったけれど、日本で、世界ウイグル会議の時に憧れのラビアさんとお会いできて、すごくうれしかった。ラビアさんはあれだけの財産と成功を自分の力で築いたのにそれを全部捨てて、ウイグル人としての意識に目覚めて、刑務所にも入れられ、今は外部からウイグル人のために戦っている、すごい人だと尊敬していると述べました。
 
 その上で、日本で自分が住んでいて、このようなウイグルの人権運動などに参加するのはかなりの勇気がいる、まず、これに関わったら二度と、中国政府がそこを統治している限りは、もう故郷に帰ることができない、親にも会えない。もう、親と、親戚と、故郷に会えない覚悟でやらないといけない。ただ、今現在日本には約900人のウイグル人がいるはずなのに、なかなか運動に参加できないのは他にも理由があって、多くは留学生で、今は自分の生活と学費を稼ぐのに精いっぱいでなかなかそれ以外のことを考えられない。また働いている男性は朝から晩まで働いて、その妻は家庭を支えるのに今は精いっぱいの人が大部分だと思うという現実を述べました。そして精神的にも、今は中国政府の力が余りにも強大で、ウイグルも彼らに占領されていて、しかも自分たちは武器も何もない、どうやったら自分の国が独立できるのか途方に暮れているというのが現実だと述べ、そして自分たちが日本から学ばなくちゃいけないことは、戦後日本は、あれだけの破壊と、原爆投下まで受けて、それでも国を建てなおして今の強い日本を作ったんだから、自分達ウイグル人もやればできるんだという意識を持つこと、そこからしかはじまらないだろうと述べました。

 その上でグリスタン氏は、いま日本にいるウイグル人が、日本できちんと就職し、日本に定住する権利を取って、自立して、将来的には日本国籍も取って、この日本で地に足のついた形でウイグルのことを訴えていくことが必要で、日本ウイグル協会も、そのための何か手伝いが出来ればいいのではないかと述べました。

 ウイグル人はいいところもあるけれど欠点もある民族で、歌や踊りが好きで、何か悩んだことや困ったことがあっても歌で発散して、それで終わってしまう。そして、外部の世界からもう中華人民共和国ができて60年以上隔離されて来て、外部の情報は検閲を経てしか入らない。その中で、確かに最近はウイグル人たちも、少しずつでも自分たちの自由を獲得するために動いてはいるのだけれども、中々大きな形にならないのは、実は一番問題なのはウイグル人自身の中に、裏切ったり、自分たちの民族をさげすむ人がいるからだと語りました。


三浦小太郎氏

 それは、自分たちがウイグル人であること、それ自体に誇りを持つことが出来ないような教育を受け、状況の中で生きてきたからで、例えばウイグル人でも、中国政府の影響が強かったり、都市部でいい仕事についている人たちは、同じウイグル人、特にウイグルの故郷というべき農村部で生きているウイグル人をすごく見下げ、差別する意識を持っている、これは自分がウイグルにいた時からすごく反感を持っていたことだと述べました。そして、中国は結局二種類のウイグル人を作った。一つは、中国人寄りのウイグル人たち。彼らは、もう中国人にもなれないし、ウイグル人にもなれない。ウイグル人にしてみれば、それはもう裏切り者。中国人にしてみれば、ただの使い捨て用道具に過ぎない。彼らはそこで、給料を払ってくれている中国のために一所懸命忠誠を尽くして、ウイグル人を更に裏切ることしかやらないと批判しました。
 
 もう一つのウイグル人とは、ウイグルの伝統や文化を守っていて、その自覚を持っているとくに農村地区のウイグル人。しかし、彼らは武器も、力もなく、目の前の中国政府の圧倒的な警察力、軍事力の前にはどうすることもできない。最近、例えばモスクで起こっている事件というのは、ただ若い人たちがモスクにお祈りに集まっただけで、もう皆殺しにされている。そんな光景をまさに目の前で見せられた人たちは、もう自分たちの無力さに絶望してしまうと述べました。そして、次に殺されるのは自分かもしれない、自分の兄弟がさらわれていくかもしれない、とおびえているだけの人生になってしまうのではないかと、中国政府の恐怖政治のありさまを語りました。

 だからこそ、自分としては、このウイグル問題は、自分のように外で生きているウイグル人がもっと頑張るしかない、はっきり言えば、言論だけではなく、自分たちが軍事力の事も勉強して、例えば日本なら自衛隊の方々にもいろいろなことを学ぶくらいの気持ちを以て、力をつけていかないと、いまウイグルで生きている人たちに大きな何かを期待するのは大変難しいと述べました。


図書館の入り口に掲示されたスカーフ禁止の看板。政治犯として行方不明になった夫と残された妻。

 そしてスライドを使い、今、ウイグルでは図書館の前にも「読者の皆さん もし頭にスカーフなどを巻いたなら、入らないでください」というロゴが貼ってあって、本を読みたくても、ウイグルの民族衣装のスカーフを巻いていたら入ることもできない。それどころか、病院にすらいけないという、法律外の規制がかけられている。学校でも、衣装を着ている人は授業を受けさせないということすら起きている。これは別に中国の法律に書いてあるのではなくて、自治区で法律外にこの様な強制が平然となされていると述べ、ウイグル人としては耐え難い時代が起きている。

 また、2009年の7月に行方不明になった男性の奥さんがいるけれども、主人がおそらく政治犯として連れ去られ、生活に困窮しているので、海外のウイグル人が生活費を送ったのに、それも警察に押収されてしまったという事件も例に挙げ、このような事例は他にもたくさんあると述べました。

 そして、こういう事態を経験すればするほど、ウイグルは自分たちの未来を守るには、独立するしか道がない。中国の言う「自治」というのが全く信じられない、嘘そのものでしかないことをウイグル人の総てはよく分かった、ウイグル人は自分たちの国を作るしかないのだという思いに、中国の弾圧によってはっきりと認識したと述べて講演を終わりました。(三浦小太郎)


登壇したペマ・ギャルポ会長と吉田康一郎副会長


※当日配布されたグリスタンさんの証言資料はこちらのページをご覧ください。

第12回講演会「ウイグル人女性の人権侵害」証言資料
http://freeasia2011.org/japan/archives/2622


動画

第12回講演会「ウイグル人女性の人権侵害」講師グリスタン(日本ウイグル協会)
http://www.youtube.com/watch?v=gp-8Nez5YaA

2013年9月28日、東京四谷で行われた、アジア自由民主連帯協議会第12回講演会­「ウイグル人女性の人権侵害」講師グリスタン(日本ウイグル協会)の動画です。

講師
グリスタン(日本ウイグル協会会員)
聞き手
三浦小太郎

登壇
ペマ・ギャルポ(会長)
吉田康一郎(副会長)

司会
古川郁絵(事務局長)

制作・協力 ラジオフリーウイグルジャパン
http://rfuj.net



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