【書評】「ダライ・ラマ 心の宝石」チベット女性協会編集ペマ・ギャルポ監訳

「ダライ・ラマ 心の宝石」
ダライ・ラマ 心の宝石 チベット女性協会編集 ペマ・ギャルポ監訳 東京書籍 110頁 本体価格1200円(税別)

 本書はダライ・ラマ法王の様々なスピーチ内容を、いくつかのテーマでチベット女性協会が編集したものだ。そして「宗教と政治」というテーマの中に、法王がいつに無く明確に、僧侶に呼びかけている言葉に気づかされる。
「わたしたちの管理下にいるひとりの平信徒が、チベットに自由を勝ち取るという共通の大儀のために、自分の時間の半分を捧げることができるとすれば、禁欲を誓った僧侶や尼層は、そのため75パーセントの時間を捧げられるはずです。ですから、人々に大きな影響力を持っている僧侶達は、この目的を実現するために自分の果たすべき責任を引き受けなければならないのです。『私は僧侶だから、政治のことはわからない』という言葉で、彼らが自分たちの責任を回避するのは許されないことです」(25頁)
 北京オリンピック前年のチベット決起の際、本書の監訳者ペマ・ギャルポ氏は、僧侶が政治運動をするのはいかがなものかという批判に対し、これとほとんどおなじ言葉で答えていた。同氏は、僧侶は「出家」して家族からはなれ、一般的な職業には就かず、その生活を祈りと真実を見極めるためにすごしている、このような人たちが、まずチベットの自由と信仰を守るために立ち上がるのは当然だ、という趣旨の発言をされたと覚えている。このような考えは、信仰を個人の内面の問題だけに集約し、現実社会に信仰者はどう向き合うかという難問から逃避する傾向のあった日本の宗教界の姿勢に対しても、鋭い批判となっているといえるだろう。(三浦小太郎)


ダライ・ラマ 心の宝石 [東京書籍株式会社]
https://www.tokyo-shoseki.co.jp/books/80412/



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