小川晴久「北朝鮮の人権問題とどう向き合うか」(大月書店)発行記念講演会報告(9月6日) : 北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会

 9月6日東京代々木の会議室にて、小川晴久名誉代表の「北朝鮮の人権問題にどう向き合うか」(大月書店)刊行を記念した講演会が守る会学習会として開催されました。

 まず小川氏は、20年前の守る会結成時のことから語り始め、特に1994年2月20日の結成大会では、朝鮮総連の暴力的な抗議を受け、萩原遼氏をはじめとする守る会の同志たちに守られながら結成宣言を読み上げたこと、その際にひたすらヤジを飛ばし、壇上に詰め寄った総連の妨害者たちが、会場側が機動隊を呼んだ段階で全員引き揚げたこと、続く4月15日のRENKの結成大会ではさらに過激な妨害が行われ、その結果総連に警察が入ったことなど、現在では想像できないほど朝鮮総連の妨害が激しかった時代にこの北朝鮮人権運動が日本でスタートしたことを語りました。

 そして、小川氏は前著「北朝鮮 いまだ存在する強制収容所―廃絶のために何をなすべきか」(草思社)を書いた際は、2005年に国連が提起した、保護する責任( Responsibility to Protect、自国民の保護という国家の基本的な義務を果たす能力のない、あるいは果たす意志のない国家に対し、国際社会全体が「保護する責任」を負う)という概念を引用し、北朝鮮は国家が保護する義務を果たしていないどころか、収容所において国民を自ら虐殺するという犯罪を行っていること、これは国際的にこの収容所の廃絶を求めるべきだという指摘ができたことを述べ、これで、私としては再び北朝鮮の収容所問題について新たな一冊を書き下ろすことはもうないだろうと思ったことを述べました。

 しかし、大月書店という、かってはマルクスやレーニンの全集を出版していた出版社の若い編集者から、ぜひ今度は、北朝鮮の人権問題を、左派、人権派、特に憲法9条擁護派の方々に正面から語りかける本を作ってみたいという申し出を受け、再びそのことを念頭に置いた執筆を始めたところ、この2月、国連が北朝鮮の人権問題に関する、網羅的な報告書が提出され、この情報をぜひ本に取り入れようと、再びこの本を書き上げたと語りました。

 小川氏は、北朝鮮の人権問題は、この3年、世界の人権NGOが集まった、特に、アムネステイ、ヒューマン・ライツ・ウオッチ等が参加したICNKの結成以後飛躍的な進展を観たことを報告し、その結果、国連において人権調査委員会が設立され、多くの脱北者の証言や国際的な調査に基づいた報告書により、完全に北朝鮮はその実態が丸裸にされてしまったと述べました。そして、この報告書は英文であるため、非英語圏の人にはたやすくは読めない、日本を含む非英語圏における翻訳が急がれるが、私(小川)が本書で要約紹介した第一章がとりあえずその参考になってくれればありがたいと述べました。

 さらに、北朝鮮の人権問題と真摯に向き合い、その解決を目指すためには、何よりもまず脱北者、特に政治犯収容所体験者の手記を一人一人が読むことが大切であって、そうすれば、人権問題に関心があり、朝鮮民族を愛しその文化を尊重する人ならば、必ずこの人権問題を解決しなければならないという決意が生まれてくるはずであり、そのためには、自分が本書で紹介した脱北者、趙ジヘ氏のワシントン証言、90年代に飢餓で弟と祖母を失ったという生々しい言葉を聴くだけでも事態の深刻さがわかるはずだと述べました(趙氏の証言は、小川氏の「北朝鮮の人権問題とどう向き合うか」39ページに紹介されています)

 また、現在の日本政府は北朝鮮との交渉に対し、事態を進展させるために北朝鮮側の態度を硬化させまいとしている傾向がある、自らが副代表を務める人権団体、ノーフェンスの代表であり、かっては外交官でもあった砂川昌順氏の、日本外交は、拉致問題解決のみならず、長期的視野から北朝鮮の改革開放、民主化まで視野に入れ、その民主化コストを国際的連帯によって東アジア諸国にも呼びかけて実現していくような、スケールの大きな人権外交の発想を日本はもつべきだと呼びかけました。

 また、最近再発見した韓国の金昌順氏の1967年、韓国の雑誌「思想界」に発表した論文によると、北朝鮮は1966年10月12日、朝鮮労働党中央委員会第4期14回総会において、それまでの労働党の党委員長制が廃されて総書記制度が取られ、これが金日成の権力集中とマルクス主義からの逸脱のきっかけである可能性があることを指摘、人権問題への取り組みと同時に北朝鮮現代史のさらなる調査が必要であると述べました。

 そして、北朝鮮の人権報告書を読むと、警官や保衛部、看守の囚人への暴力のひどさが痛ましい、今現在の日本国憲法には、第36条で、公務員による拷問・残酷な処罰を一切禁じている、この一点を観るだけでも、日本国憲法が戦後、世界の進歩的な勢力によって生み出された意義があること、そして、この憲法や平和主義を尊重する立場の人々は、北朝鮮の人権問題について先頭に立ってその改善や収容所の廃止を、例えばかってアメリカでキング牧師が行ったように、非暴力の精神で強く訴えなければならないと述べて講演を終えました(終)


小川晴久「北朝鮮の人権問題とどう向き合うか」(大月書店)発行記念講演会報告(9月6日) : 北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会
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