【米国公共放送】オンブズマンが「リトルサイゴンの恐怖」の問題点に対応 : ベトナム革新党

PBS【米国公共放送】オンブズマンが「リトルサイゴンの恐怖」の問題点に対応

デュイ・ホアン

2015年11月24日

1980年代、複数のベトナム系アメリカ人ジャーナリストが残虐に殺害された事件があった。当時、国家機関はこの事件を解決することはできなかった。そして今回、A・C・トンプソンによるセンセーショナルな調査報告にて、著名なベトナム反共団体(「ベトナム祖国戦線【ベトナム語に近い表記、MAT TRAN TO QUOC VIET NAM、英語表記、Vietnam Fatherland Front。】」)が暗殺部隊を編成し殺人を実行した犯人であるかのように扱うに至った。本番組で焦点が当てられたのは、組織内での殺人事件の痕跡とベトナム戦争の再開を目指す執念深い過激派たちの姿だった。

「リトルサイゴンの恐怖」では、決してベトタン【ベトナム革新党】が名指しされているわけでも、私たちメンバーが犯罪行為を犯したと糾弾されているわけでもない。非常に問題だと感じるのは、『フロントライン』および『プロパブリカ』の調査報道における不備だ。事実を明らかにすべく、私は番組の編集者へ公開質問状を送付し、PBSのオンブズマンであるマイケル・ゲトラー氏へ今回のずさんな報道を調査するよう求める請願書にも名を連ねた。

良いニュースとしては、PBSで内部批判を担当し独立した立場にあるゲトラー氏が今回、公に回答し、その中で「リトルサイゴン」における調査に対し重大な疑問を投げかけたことだ。回答は、今回の報道に関する批判をまとめており、非常に長文のものだ。ベトタンからの公開質問状にて提起した要点に沿い、同団体からの請願書の正しさを認める内容となっている。ゲトラー氏は、検証の情報源として番組に信憑性を与えるはずのプロデューサーおよびジャーナリストたちがどれほど信頼に値するのかについて指摘している。

以下、ゲトラー氏の結論の要旨である。

「[引退したFBI捜査官である]タン・ウィルコックスからの証言以外に、今回ジャーナリストの殺害に焦点を当てた報道、およびオンエアされた自称ベトナム人の友人、容疑者、元ベトナム祖国戦線メンバーそして情報提供者らへのインタビュー、加えて名前は明らかにできない別の元ベトナム祖国戦線リーダーは、サンフランシスコやヒューストンでジャーナリストを殺害したのがK9だと「確信している」というトンプソンによる指摘、これらすべてを、現在行われている詳細な調査において正しいと明確に立証する証拠がない」

「新たな」証拠になりうるという資料のふれこみにもかかわらず、唯一FBI捜査官の個人的見解のみが、番組の信憑性の根拠となっている。ただし、当時FBIは複数年をかけてこの事件の調査をした末に、殺人の罪で立件するに足る十分な証拠は見つからなかったとの結論に達していることは留意すべき事実だ。FBI捜査官だったキャサリン・タン・ウィルコックスは、本番組において非常に重要人物であるかのように紹介されているが、その当時ですら彼女は自らの仮説を証明する証拠を上司に提出することができなかったのだ。

PBSのオンブズマンはさらに、番組が伝聞と匿名の情報者を使用している点を批判している。

「本番組の説得力をそいでいると思われる欠陥が以下となる。殺害された出版業者の『旧友』との証言インタビューが匿名で行われている。その他のベトナム祖国戦線元リーダーたちが殺人について語る際、『私は聞いていないが、誰かから聞いた話で……名指しはしたくない……そう聞いたことがある』などの表現をしている。それ以外の者は関与を否定している。ロサンゼルス・タイムズの元記者の証言、『意見の一致に近いものがあった……そう考えた人がいた』の言い方。これらすべては、こういった調査では当然のように思われるかもしれないが、当初から的を射ない話に信憑性を加える効果はほとんどない。

番組の中盤のトンプソンの発言にこうある。『ただ数え切れないほど面会を繰り返した後、数人の元・ベトナム祖国戦線リーダーが、FBIの提示した疑惑を認めている。つまりK9は、ベトナム祖国戦線が敵を標的にするため使用する秘密組織であったというものだ』

それは一体どこから出た話なのか? 元ベトナム祖国戦線リーダーが認めたという主張の根拠は? 番組内のその時点でそれを主張しているのは、匿名の『旧友』と元FBI特別捜査官タン・ウィルコックスのみだ。番組の最後に、トンプソンは殺害された出版業者の息子にこう伝えた。『ベトナム祖国戦線には暗殺部隊があった。その名をK9と言う。その部隊のメンバーが、あなたの父を殺したのはK9だと話している』まるで真実のように聞こえ、視聴者ならそれこそ真実だと思うだろう。だが、『その部隊のメンバー』が実際にオンエアで言ったことについては、放送で明確に証明されていないように私には思えた」

最後にゲトラー氏は、トンプソンが「個人的な聖戦かつ謝罪という意味を帯びている」と感じている物語において語り手となってしまっていることを批判している。この番組を見た多くの人と同様、私もこの「聖戦」こそが彼をして自らに都合の良い証拠を選ばせ、先入観の交じった物語を裏書きするように文脈から情報を抜き出させた原因だと思う。ゲトラー氏も、このやり方のために視聴者の注意がそらされ、「実際に検証可能かつ新たな事実が何か」を理解しづらくしている、と考えている。

これまで殺害されたベトナム系アメリカ人ジャーナリストの家族が、いかにアメリカのメディアから失望させられてきたのかについて、トンプソンもきっと不満があったのだろう。残念ながら、その彼自身も今回、家族を謝った結果に導き失望させることとなってしまった。殺害されたジャーナリストの息子に謝った結末を提示して、番組を締めくくってしまったのだから。

私はそのグエン・ダム・フォンの息子への手紙にも書いたとおり、これまで家族が長年味わってきた痛みと悲しみを十分理解している。と同時に、A・C・トンプソンについても、答えを見つけようと努力したなかで、私の同僚や先輩をスケープゴートとしてしまったことを非常に不満に思う。ベトタンに参加しそしてベトナム祖国戦線の一員としての歴史を持つ、またはそのいずれかの人たちは、不正と戦う普通の人たちだ。私たちは、暴力の使用を非難する。そして報道の自由を尊重している。それこそが公平な社会のための基本的人権の一つだと考えているからだ。

ゲトラー氏は公に今回の「リトルサイゴンの恐怖」という報道番組の欠陥を認めつつも、そのテーマと調査については価値があることを認めている。私も責任あるジャーナリストや専門の研究者が、この未解決の殺人事件を調べ直し、最終的に殺害されたベトナム系アメリカ人ジャーナリストたちの家族に平安が訪れるような方策が見つかることを心から願ってやまない。

PBSのオンブズマンであるマイケル・ゲトラー氏は、番組に対する批判において、多くの人からの要求についても支援を表明している。『フロントライン』および『プロパブリカ』は、「リトルサイゴンの恐怖」を撤回し、誤ってこの番組から告発された人たちに謝罪することで、知的職業に対するプロとしてのプライドと誠実を守り抜く気概を証明するべきなのではないだろうか。


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