【報告】第23回講演会「韓国の現状と今後の朝鮮半島」講師 久保田るり子氏

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1月21日、東京飯田橋の会議室にて、久保田るり子氏(ジャーナリスト)を講師にアジア祐民主連帯協議会主催第23回講演会が開催されました。参加者は約20名。
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 久保田氏はまず、現在の韓国の状況について時系列を追って丁寧に報告したうえで、朴槿恵大統領について次のように述べました。

 まず、朴槿恵氏は、ある意味韓国近代化の推進者である朴正煕大統領の娘であり、1952年に生まれていること、そして1965年の日韓条約、1974年の朴大統領狙撃事件とそれによる母親の死亡、そして1979年の朴正煕大統領暗殺で、彼女は事実上追われるように青瓦台を去っていったと述べました。

 そして、朴槿恵が父親への様々な批判を黙って耐え続けたこと、そして1998年に国会議員選挙に当選、この時期はちょうど韓国がIMF危機にあった時期でもあり、一時期は保守派のジャンヌダルク的な存在として支持され、その後北朝鮮訪問、また暴漢により切り付けられ傷を負った事件、金大中・廬武鉉左翼政権の登場など、ある意味彼女の生涯は、韓国の現代史そのものの象徴のような点があり、今回のスキャンダルも、朴槿恵ならばこんなことはしないはずだ、不正とは無縁のはずだという国民の信頼感が、逆に裏切られたこ途への失望感が背後にあることを指摘しました。

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 さらに、現在、この講演が行われている21日にもソウルで行われているロウソクデモについて触れ、自分も現場を取材してみて感じたことは、例えば李明博大統領に対する抗議デモの時は、デモ隊が警官と直接衝突したり、暴力的な面も多々あったけれど、今回の集会では、巨大なスピーカーが出ていて、デモが衝突したり混乱したりしないよう巧みに指導したり、またトイレに行きたい人が困らないよう案内する部隊までいるなど、子供連れも多いデモ隊に対し大変上手な管理がなされている、これは反体制運動の側も、かなり洗練され、戦術的にも完成されていると述べました。

 そして、このロウソクデモの主導者は、確信的な親北派、挺身隊問題協議会などの反日運動家、左派的な労働組合などによって構成されていること、彼らが自分たちの名前は明確に出さずに運動を指導していることを久保田氏は指摘しました。しかし、より問題なのは、韓国において、果たして朴槿恵大統領の今回のスキャンダルが、どこまで証拠があるのか、また、たとえ事実であったとしても法的に弾劾・処罰に値するレベルのものなのかどうかという冷静な論理や、三権分立の原則が成立していないことだと久保田氏は述べました。そして、そのような法治の原則よりも、民衆が立ち上がって主張すればそれが「民心」であり正義なのだ、という意識が韓国ではあり、これは危険なポピュリズムではないかという当然の危機感が生まれないことに問題があるとも指摘しました。

 また、現在韓国で大統領候補とされている人たちは、いずれも、国連事務局長を務めた潘儀文氏を含め、従来の意味での保守(米韓同盟維持、日本との協調、そして北朝鮮との対決)の理念を持った人はいないこと、最左派であり、就任したら、まず最初にアメリカより平壌に行きたいといっている文在寅が、現状では最も有力な候補であることなど、韓国の政治的危機の深刻さを述べました。

 現在釜山に建てられている慰安婦像については、あれを建てている個々人の運動家は、本当に純粋に、教えられたままの歴史観に基づいて行動しているのだけれど、その歴史観自体が間違っているのだが、すでに戦争や日本統治の時代をリアルに知っている世代がなくなるか完全に社会から引退した今は、左翼的教職員組合が教える偏向教育・教科書がまかり通っており、若い人たちはそれを信じ込んでしまうと久保田氏は指摘しました。しかも韓国政府が事実上機能を失っている以上、慰安婦像の問題は次々と建築されていくことを止めようがない、現在、日本政府が大使の事実上の償還、スワップの停止を行っていることは、少なくとも日韓合意に韓国側が一方的に違反している以上正しいと述べました。

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 そして、合意には明確に「韓国政府は,日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し,公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し,韓国政府としても,可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて,適切に解決されるよう努力する。」と記されていること、少なくとも韓国政府が「関連団体との協議」を行うことが記されているのに、全く韓国政府がその姿勢をみせない以上、これは国際的な約束事に反するという原則を、日本政府は言い続けるしかないと述べました。

 久保田氏は、「今後北朝鮮とアメリカの関係がどうなるか、韓国の大統領選の結果はだれが勝つかなどは、現時点で安易な予測をすることはあまり意味がない。トランプ政権には軍事的強硬論者が入ってきており、アメリカの国益や脅威という視点から、北朝鮮の現在の核開発に対し厳しい態度で臨むかもしれないけれど、同時に、北朝鮮がアメリカに対し譲歩すれば支援することも十分に考えられる。朝鮮半島の問題は日本にとっても決して無縁ではないのだから、まず冷静に事態を見つめつつ、日本はどのような姿勢と対策で臨むべきかを考えていくしかない」と講演を結びました(文責 三浦)

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