【講演録・動画あり】アジア自由民主連帯協議会主催記念集会 FREE TIBET 長野チベットデモから10年


アジア自由民主連帯協議会主催記念集会 FREE TIBET 長野チベットデモから10年の動画です。
10年前当時の動画が流されたほか、ペマ会長、コラムニストの勝谷誠彦氏、SFTの金田太朗氏などにご登壇頂きました。


 4月28日、拓殖大学にて、アジア自由民主連帯協議会主催記念集会「FREE TIBET 長野チベットデモから10年」が開催されました。まず、司会の古川郁絵より、10年前の2008年、長野における、北京オリンピック聖火リレーに対する抗議行動についての回想ののち、当時に撮影された15分ほどの映像が公開されました。

 この映像では、現在当協議会のメンバーでもある、イリハム・マハムティ氏、オルホドノ・ダイチン氏、そして惜しくも他界されたベトナム革新党のアウン・ミン・ユン氏らの姿も撮影されており、この時のチベット支援が、広くアジア全体の、中国共産党独裁と民族弾圧に対する連帯抗議行動の始まりだったことが明らかになりました。

 上映後、最初に当協議会のペマ・ギャルポ会長が登壇、この抗議行動の際、チベット人のタシ氏が、聖火リレーに抗議して逮捕されたときに、協賛してくれているジャーナリストの勝谷誠彦氏他、日本の多くの人たちが支援して釈放されたことにまずお礼を述べました。

 そして、北京オリンピックののち、亡命チベット人社会では、ダライラマ法王が政治の場から退かれるとともに、亡命社会の中だけだけれど、民主的な選挙によって政権を作り出した。これは中国社会より先んじて、亡命チベット人社会が民主化されたことを意味すると述べました。そして、中国政府は、この北京オリンピック後数年間は、チベットと対話をする姿勢を見せていたが、習近平政権になってからは明確に対話は打ち切られたと批判しました。

 今、中国国内では、チベット人が数人集まって話し合う事すら禁止され、公安警察、武装警察が徹底的に管理しているため(そして、現在チベットでは、少なくとも25万人、自分たちチベット人の実感としては、公安武装警察を入れれば50万人もの軍事組織が置かれている。)チベット人が抗議する手段は焼身抗議しかなくなっている、当初は僧侶が多かったのだけれど、今は10代の青少年や、女性までもが焼身抗議を決行している、その意味では、2008年から現在に至るまで、チベットに置いては状況は悪化しても改善はされていないと述べました。

 そして、元中国大使からインド政府の内閣官房長官に提案があり、チベットの3月10日、チベット蜂起の日前後のインド国内でのチベット記念集会には、インド政府や自治体の幹部は参加してはならないという通達があった。また、モディ首相と習近平が近日会談するという話もあることをぺマ氏は報告し、チベットの支援国だったインドの姿勢が変化する恐れを指摘しました。

 いま中国は、2050年までには世界のリーダーになるという「中華民族の夢」を発表している、これは要するに、中国共産党がアジアの覇権を握るという事であり、それはチベットで、南モンゴル、ウイグルで起きたことが世界で起きることを意味すると、中国の野望がいかに脅威であるかを強調しました。

 そして、長野の時には、自分たちチベットだけではなく、例えばベトナムの人たちも一緒に闘ってくれた、それは、アジアの多くの独裁政権は、事実上中国の支援を受けていることの象徴であり、今、中国が、アジアにとって、2008年の時点よりもっと危険な存在になっている、だからこそこのような集会を開催するとともに、中国に対峙し、アジアに自由と民主主義を広げていくために連帯していきたいと結びました。

 続いて、ジャーナリストの勝谷誠彦氏が登壇、自分はジャーナリストとして、政治運動だけではなく、むしろソフトパワーでチベットを支援したいと述べ、かつ、中国政府は、自分のような人間をチベットに入国させたことを大層後悔しているらしい、単なるライターだと思ったら、これほどまでにチベットについて書きまくるとは思ってもいなかったのだろう、と、ユーモアを交えて、言葉や映像、そしてパフォーマンスの力を強調しました。

 チベットに行くと、チベットの人たちは本当にいい人なのだが、必ずそこに公安がついている。チベットでは、オアシスごとに小さな村があるが、そのオアシスには必ず人民解放軍が駐屯している、そういう風景を見るだけで、チベットの中国支配の本質がわかると勝谷氏は指摘しました。

 2011年、勝谷氏は、ディアスポラという小説に書いたことに触れ、この小説のテーマは、、日本人が、原発事故でばらばらに離散せざるを得なくなる近未来を舞台に、ユダヤ人の離散、チベットの現状などを複合的に組み合わせた作品で(書かれたのは2001年、2011年に文藝春秋から出版)自分でも預言的な作品になったこと、決してチベットの悲劇を他人事と考えてはいけない、様々な理由から日本人も国を失うことがあるかもしれないという現実から目を背けるべきではないと述べました。

参考;この小説についてはこちらのインタビューもお読みください。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/18081

 その例として、中国の尖閣諸島への侵略に触れ、日本人の中には、あのような小さな島など大した問題ではないと思っている人がいるようだが、実際に自分も漁船で島に行ってみてわかることだが、あそこでの中国漁船や、将来訪れるかもしれない海軍の行動は、まさに覇権主義そのものであり、あの島を譲れば必ず日本への侵略に続く、そのことから目をそらしてはならないと述べました。

 そして、ソフトパワーという点では、多くの日本人がチベットの本を読み、そして、チベット料理店(東京には「タシデレ」が存在)に行き、また、フリー・チベットのTシャツを着て街を歩く、そんなソフトパワーを大切にしてほしいし、もし可能ならば、チベットに旅行に行くこともいい、そして現地のチベット人と触れてみると、彼らが家の中でそっとダライラマ法王の写真を隠していることも、彼らが何を望んでいるかもわかる、そのことを、旅行体験と共に人々にネットで伝えてほしい、そういうことが中国政府にとって本当に恐ろしいことのはずだ、そんな発想を持ってほしいと述べました。

 続いて、善光寺僧侶の若麻績敬史氏が登壇。当時善光寺が、民衆への弾圧に抗議して寺域の聖火リレーの行事への関与を禁じ、聖火リレーの時間に合わせてチベット騒乱の犠牲者(中国人およびチベット人双方の犠牲者)への追悼法要を実施したことの意義を確認しつつ、寺内部では様々な軋轢があったこと、このような問題への対応に見える日本仏教界の問題点などにも触れる興味深い講演を行いました。ただ、現段階では若麻績氏の判断もあり、動画はいまだにアップロードしていませんので、こちらでも説明は控えます。

 最後に、SFT(スチューデント・フォー・チベット)の金田太朗氏が登壇、2008年当時の様々な写真を数多く紹介しつつ、国境なき記者団も現場に参加していたこと、在日チベット人界のドルマ氏、カルデン氏など、様々なチベット人の参加などを指摘しました。

 また、当時は胡錦涛が来日し、それに抗議しチベットを支援するデモがゴールデンウィークに行われ、4千数百人の参加者があったこと、これは、インターネットを通じて広がった初めてのデモであることを金田氏は指摘し、警察の側も、これほど沢山の人々が集まるとは考えていなかった、まさに自然発生的な、民衆自身が自発的に参加したデモだったことを述べました。

 そして、金田氏が紹介する長野の写真を見ても、あまりにも多くの中国人(多くは留学生)が動員され、まさに長野が占拠されるような空間の中、チベット旗を持った日本人、チベット人、その写真には写っていませんでしたが、ウイグル、モンゴル、ベトナムなどの人たちが対峙しているさまは、この時に、中国という国の侵略性を正にアジアと世界の人々に再認識させたことを思わせました。同時に、日本の警察が、聖火リレーを守らなければならないという至上命題があったとはいえ、このような中国人の行為を規制できないという、日本の治安上の問題も個人的には考えさせられました。

 この後も、当日長野に参集した参加者から興味深い証言があり、元区議会議員の山本へるみ氏は、中国人が平然と暴力をふるっているのを必死で止めたことや、またもう一人の参加者から、確かに、その場では中国の横暴に対し、日本側も厳しい言葉で返すことにある種の共感も解放感も覚えたが、後になって自省してみれば、そのようなやり方では本当の意味で効果をあげることはできないことに気付いたというお話などが語られ、集会は閉会しました(文責 三浦)

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