3月20日、星陵会館にて午後2時から萩原遼名誉代表の講演会が行われました。この講演会の模様は撮影いたしましたので、後日、DVDの形で発行いたします。ですから、ここでは最低限の報告にとどめさせていただきますが、より面白い内容を知りたいかたはぜひDVDの方をお求めください(講演会の60分を収録します)。
まず萩原氏は、20日朝刊の読売新聞、産経新聞などの記事を紹介し、大阪府が朝鮮学校への補助金を停止したことに触れ、まことにうれしいニュースだと語りました。そして、実は大阪府は、現在高い支持を得ている維新の会を中心に、補助金を出す方向に動きそうだったことを指摘。自分としては、政治姿勢としては維新の会に批判的ではあったけれど、朝鮮学校への補助に少なくとも表面上の言説では反対している限り批判は控えてきたが、仮に補助金を出すことが決まった場合は、すぐに個人ででも抗議声明を出すつもりでありその文書も用意していた。その内容は、国税を独裁政権讃美の教育をしている朝鮮学校につぎ込むのならば、それは売国的行為と言わざるを得ないという闘いを始める覚悟だった、しかし、その必要が無くなったこと、なによりもあのような教育をしている学校に公金が流れることを防げたことがうれしいと述べました。
しかし、これは大阪府の勇気ある決断というようなものではなく、まず、関西の脱北者の方々が、このような教科書は許せないという声を挙げ、それを自分たちが引き受けて、朝鮮総連内部でも勇気ある人たちがこの教科書を外部に提供してくれたことに始まっていると萩原氏は述べました。そして、今回の大阪府の決定をもたらした最も大きな要因は、在日知識人李英和氏とRENKが、平壌で朝鮮学校生徒たちが、金正日、金正恩を讃美する歌を歌い演劇を行ったこと映像を産経新聞に提供したこと、独裁政権讃美の教育の実態を映像で明らかにしたことも大きかったと述べました。
さらに萩原氏は李氏の発言を引用し、よく善意の人たちほど、朝鮮学校に補助金を出さないのは子供たちがかわいそうだという発想をしがちだが、在日コリアンである李氏こそが本質論を述べている、言語教育や民族の文化を教える教育が行われるのならそれは民族学校として当然だが、行われているのは独裁者を讃美する教育だから問題なのだと指摘し、「善意」の陥りがちな過ちを指摘しました。これは三浦の個人的な意見ですが、帰国事業も、末端の総連や日本人の中には、善意で本当におれが正しく人道的なことだと思って協力した人は多いと思います。まさに地獄への道は善意で敷き詰められているという言葉通りの結果を帰国事業も生んでしまいました。
続いて萩原氏は、金正男氏の本(文藝春秋)がすでに30万部が売れていることを述べ、この本によってこれまでの北朝鮮観は大きく変わりつつある、桜井よしこ氏が、「意外なほどまともな考えを持っている」と評したように、権力内部でも金正男氏のような、改革開放やとりあえず民衆を食べさせねばと考えている人がいる、金正男の実像がこれまで単なる道楽息子のように伝えられてきたのは、日韓メデイアの無責任な印象報道の面が大きく、またその背後には金正恩を後継者にするために正男を貶めようとした北金正恩派の情報工作があった。そしてなによりも、著者の五味洋治氏のように突っ込んだ形でインタビューし連絡を取ろうとした人が少なかったと、メデイアやジャーナリストの問題点を指摘しました。。
そして、晩年の金日成は明らかに改革開放と南北和解に向かおうとしていた、これをつぶして自らの権力を取り、核開発と先軍政治に向かったのが金正日で、今の平壌の金正恩政権はその先軍政治の残党集団であり、必ず近い将来、経済的にも政治的にも息づまる。中国はそれをじっと見ており、金正男をまだまだ活用できる、北朝鮮を改革開放に導くためのカードだと考えているはずだ。萩原氏はこう語り、金正日の死とともに、かならず数年来に希望が見えてくる、あの先軍政治の矛盾はもはや解決できないはずだと述べました。その間は、自分は朝鮮学校という日本国内の北朝鮮教育機関に対し、国税が投入されることがないよう訴え続けたいと語りました。
続いて日本ウイグル協会のイリハム・マハムテイ氏が、中国の改革開放は、確かに漢族の発展をもたらした面はあるけれども、同時に、彼らの思考パターンの中には、他民族に対する明らかな蔑視がある。今ウイグルでは言論弾圧や宗教弾圧が激化しており、例えばコーランでも、中国共産党政府関連の出版社が出したコーランでない限り禁書、宗教指導者も、政府公認の人でない限り許されない。そして、5,6歳の子供が中国の警察に抗議して石を投げただけで、なんと処刑されたケースもあると、「改革開放」の中で各民族に何が起きているかを語りました。
さらに、ウイグルから第3国に脱出した難民も、UNHCRが難民として認めようとした人たちまで、中国政府は其の第3国政府に巨額のお金を渡してでも中国に強制送還させてしまう。これは脱北者のケースとは違うかもしれないけれど、中国が難民をいかに認めていないかの一つの象徴だと述べました。
そして、北朝鮮における人権弾圧に比べたらウイグルは商売もできるし、楽なように見えることがあるけれども、他民族による支配、文化を奪われる支配というのはたいへんな屈辱を与えるものであり、また、国を失うということは自分を守ってくれる人がどこにもないということであることを訴えたい、その意味で、日本国民が拉致された問題は、まずなによりも日本政府が解決すべき問題であって、それが明確に出てこそ国際社会も協力のしようがある、北朝鮮の人権問題のひどさはわかった上で、ウイグルやチベットの悲劇について、また違う意味での苦しさがあることを理解してほしいと訴えました。
参加者は脱北者の方を含め約50人、活発な質疑応答もなされ、盛会だったと思います。詳しくは後程発売のDVDをぜひご覧ください。なお、このDVDは萩原氏の講演のみの収録といたします。(三浦)
守る会関東支部萩原遼名誉代表講演会の報告 : 北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会
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