中国:陳光誠氏に関する中国政府の約束 監視必須 : ヒューマン・ライツ・ウォッチ

陳氏と家族そして支援者 いまだ危険な状態

中国政府の米国政府に対する『陳氏と家族を迫害しない』という約束が本当に守られるか、重大な懸念がある。中国政府のあきれ返るほどひどい一連の人権侵害の歴史はもちろん、陳氏自身が、中国政府当局から家族の安全に対する脅迫を受けているので将来が不安だ、とにすでに訴えているのだから。
ソフィー・リチャードソン、中国局長


(ニューヨーク)-陳光誠氏に関し中国政府が米国政府にした約束は、陳氏と家族が再び当局による虐待と迫害の犠牲となることのないよう確保するのに十分ではない、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。陳氏と家族そして支援者を保護するためには、当局による報復から人びとを守るための継続的かつ具体的なメカニズムが必要であるとともに、米国およびその他の政府による長期のモニタリングも必要である。

米国外交官らによると、中国政府は陳光誠氏とその家族を中国国内の“安全な場所”に移すこと、及び陳氏が法律を学ぶことを認めると確約した、と言う。中国国営メディアも、陳氏とその親族を違法に監禁した山東省臨沂(リンギ)市の地方当局者に対する捜査を行う方針を伝えている。2012年5月2日、米国国務省当局者は「中国政府当局者が我々に対し、陳氏の家族は山東省に戻され、家族の再統合を交渉する機会を失うことになると述べた」としている。AP通信社及び中国人活動家らによれば、陳氏は、事件発生以来、迫害を続けてきた当局の待つ山東省に家族が送り返されると脅迫されていると訴えていたそうである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国局長ソフィー・リチャードソンは「中国政府の米国政府に対する『陳氏と家族を迫害しない』という約束が本当に守られるか、重大な懸念がある。中国政府のあきれ返るほどひどい一連の人権侵害の歴史はもちろん、陳氏自身が、中国政府当局から家族の安全に対する脅迫を受けているので将来が不安だ、とにすでに訴えているのだから」と述べる。

陳氏は現在、北京の朝陽病院で、4月22日に山東省東師古村の自宅から脱出する際に負った怪我の治療を受けている。陳氏は19ヶ月間にわたり、その自宅に違法に監禁されていた。米国大使館に隠れていた陳氏は、今日、6日ぶりに姿を現し、米国のガリー・ロック中国大使などの米国政府幹部に付き添われて病院を訪れた。

独学で法律を学んだ盲目の人権活動家の陳氏は、19ヶ月間違法に監禁されていた故郷の山東省東師古村の自宅から、2012年4月22日に脱出したとみられる。東師古村から逃れた後、陳氏は支援者に助けられて北京に辿りつき、そこで中国語のウェブサイト博訊(ボクサン)にビデオを投稿した。そのビデオの中で陳氏は、温家宝首相に対し個人として介入するよう求め、何の法的根拠もなく、警官が制服を着るでもなく「私の自宅に乱入し、暴力をふるい、治療を拒否するよう地元警察などの地元当局者に命じた者」に対する捜査を開始するよう求めた。

陳氏の山東省から北京への逃避行を助けた後に拘束された、南京出身の活動家・何培蓉氏の行方と身の安全に関する情報が、ここ数日間途絶えている。数人の政府当局者との間で、先週自宅で暴力沙汰になったと報じられている陳氏の甥の陳可貴氏は現在、東師古村で自由の身でいるものの、陳光誠氏と同様、中国司法の厳しい標的にされる危険性を抱えている。陳可貴氏は声明を発表し、先週の喧嘩は、身分を明かさないまま正体不明の私服の男たちが自宅に乱入してきた事件のなかでの、正当防衛だったとしている。

前出の中国局長リチャードソンは「陳氏が中国に留まることを選んでも、彼と家族、そして、法の支配と社会正義に自分の人生を捧げた陳氏に支持を表明した活動家たちにとって、中国が安全だということを意味しない。米国政府も、中国政府とのこの合意が履行されない可能性があると認めている。その場合に備えて、最高レベルでの公の対応を直ちに取れるよう準備する必要性があると認めている」と指摘する。


中国:陳光誠氏に関する中国政府の約束 監視必須 : ヒューマン・ライツ・ウォッチ
http://www.hrw.org/ja/news/2012/05/03

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