2009年7月5日ウルムチ虐殺事件 : 事件から3年、2012年報道まとめ

ウルムチ暴動3年:富める漢族へ不信強く
毎日新聞 2012年07月04日 22時11分(最終更新 07月04日 23時09分)
http://mainichi.jp/select/news/20120705k0000m030091000c.html

 【北京・工藤哲】中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市で197人(当局発表)が死亡した09年の大規模暴動発生から5日で3年となる。自治区では先月29日、ウイグル族が旅客機をハイジャックしようとする事件が発生。これを機に自治区内で当局が厳しい取り締まりを行っている。豊かになる漢族と地元のウイグル族の間で格差拡大を懸念する声もあり、3年を迎えても民族間の火種はくすぶったままだ。

 「ウルムチ市内では警官が巡回し、ウイグル族居住区では夜中の家宅捜索も増えた。カシュガルやホータンでは道路の検問も厳しくなった」。国外に住む亡命ウイグル人は、自治区に住む知人からの情報として現地の様子をこう語る。

 中国メディアによると、未遂事件は、ホータンを離陸したウルムチ行きの航空機で29日発生。ハイジャックを試みたとされる6人が乗客・乗員に取り押さえられた。6人はいずれもウイグル族で、取り押さえられた際のけがで容疑者2人が搬送先の病院で死亡した。

 中国政府は「重大な暴力テロ事件」と非難。自治区の張春賢党委書記は2日、事件を防いだとして乗客ら10人を表彰した。

 しかし、日本在住のウイグル人、トゥール・ムハメットさん(48)は「漢族とウイグル族の座席を巡るトラブルが大きくなった結果だ。『ハイジャック未遂』との報道は疑わしい。事件はこの時期に当局がウイグル族を抑え込む口実だったのでは」と指摘する。ウイグル族の不信感は払拭(ふっしょく)されておらず、当局は警戒を強めざるを得ない状況だ。

 ◇抑圧強化、反発必至…「ウイグル・オンライン」開設者

 ウイグル族に関する情報をインターネットで発信する「ウイグル・オンライン」を開設し、北京の中央民族大学で教べんを執るウイグル族のイリハム・トフティ氏(42)が毎日新聞の取材に応じた。主なやりとりは次の通り。

 −−大規模暴動から3年を迎えるが、自治区の状況は。

 中国政府や漢族系企業はここ3年、自治区で巨額投資を続けてきたが、資源開発や都市向けが中心だった。ウイグル族の約9割は農村におり、その恩恵は限られている。都市部に多い漢族が潤う構造になっている。

 −−今秋、中国指導部は世代交代する。事態は改善するか。

 習近平国家副主席ら次世代指導者がウイグル族とどう向き合うか次第だ。ウイグル族の間では、中国の大国化に反比例し、ウイグル族の国内での地位は低下しているとの危機感がある。漢族が抑圧を強めれば暴力による反発を招くことは過去の事例が証明している。


ウイグル暴動3年、武装警官増員で抗議抑え込み
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120705-OYT1T01173.htm
(2012年7月5日20時29分 読売新聞)

 【ウルムチ=関泰晴】中国新疆ウイグル自治区ウルムチの大規模暴動から5日で3年。

 地元当局は同日、暴動の現場となった観光地の国際大バザールや人民広場などで自動小銃を持つ武装警官を増員し、抗議行動の発生を抑え込んだ。

 ウイグル族の居住区でも警察車両が不審者を警戒して頻繁に巡回。道路の検問では、ウイグル族運転手を重点的に取り調べていた。


ウイグル暴動から3年、中国当局の弾圧は継続=アムネスティ
2012年 07月 5日 17:21 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE86404E20120705

[北京 5日 ロイター] 中国西部、新疆ウイグル自治区ウルムチ市の大規模暴動発生から3年が経過する中、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは4日、ウイグル族に対する中国当局の弾圧行為が現在でも継続しているとする報告書を発表した。

2009年7月5日に発生した暴動では、200人近くが死亡。当局は暴動を扇動したとして9人を処刑したほか、数百人を拘束・起訴した。

アムネスティは、行方不明になった数十人のウイグル族に関する情報を求める親族に対し、中国当局が「脅迫行為」を続けているとする新たな証言があったと発表。行方不明者は、暴動の最中またはその後に起きた人権侵害を明らかにしていたという。

ドイツを拠点とするウイグル人組織「世界ウイグル会議」は、14カ国の中国公館前で5日に抗議活動を行う計画を明らかにしている。


新疆暴動から3年 地方政府、治安安定へ必死
日本経済新聞 2012/7/5 9:51
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0405L_V00C12A7EB1000/

 【北京=森安健】中国北西部の新疆ウイグル自治区で少数民族のウイグル族が漢族や武装警察と衝突し、197人の死者(当局発表)が出た2009年の大規模暴動から5日で3年となった。民族間の溝はなお深く、摩擦がたびたび表面化する。今年は中国指導部の世代交代の年とあって、地方政府は治安維持に特に敏感になっている。

 ウルムチ市の鉄道局は1日から乗客の手荷物検査を徹底し、ナイフや可燃性の香水をすべて没収している。新疆の空港ではウイグル族を対象に特に厳重にボディーチェックをし、対応面での漢族との違いに不満の声が上がっている。

 当局が一段と厳戒態勢を敷くきっかけとなったのは6月29日に新疆上空で発生したハイジャック未遂事件。ウイグル族の男6人が金属棒などを手に操縦室に侵入しようとしたものの、乗客乗員が阻止したとされる。自治区政府は2日、犯人を取り押さえた10人に1人10万元(約125万円)の報奨金を渡した。10人には漢族もウイグル族も含まれ、当局は民族を超えた一体感を打ち出すのに懸命だ。

 2月にはカシュガル地区でウイグル族9人が刃物で漢族13人を殺害する事件も発生するなど、09年の暴動以来、緊張は一貫して続いている。

 ウイグル族はトルコ系のイスラム教徒が中心で、外見も文化も漢族と異なる。18世紀に清朝が征服して以来、独立運動がくすぶる。新疆で独立運動が広がればチベット自治区などその他の少数民族地域に飛び火する可能性もあり、中国指導部は神経をとがらせている。3年前の新疆の暴動では胡錦濤国家主席がイタリアでの主要国首脳会議への出席を取りやめ急きょ帰国した。

 中国から海外に亡命したウイグル人の組織を束ねる「世界ウイグル会議」が今年5月、東京で代表大会を開いた際には中国政府が強く反発した。


2012年7月5日。日本での抗議行動。

7.5ウルムチ虐殺三周年中国大使館抗議:世界ウイグル会議世界同時行動
http://www.youtube.com/watch?v=661DNKQxUBI
※デモ行進は7月7日東京。詳細は日本ウイグル協会のサイトへ。


ウルムチ大虐殺:世界ウイグル会議
http://www.uyghurcongress.org/jp/?p=135
※証言集や失踪者などウルムチ事件に関する情報の一覧。


アムネスティ報告書
「正義、正義を」中国 2009年 新疆ウイグル自治区での抗議行動
http://www.amnesty.or.jp/library/pdf/mydownloads/JUSTICE_JUSTICE_ASA170272010.pdf

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