自由統一か独裁か 朝鮮総連・北との闘い-東京連続集会67報告 : 救う会全国協議会ニュース

 第67回東京連続集会は、平成24年7月5日、文京区民センターで開催された。今回のテーマは、「自由統一か独裁か ─ 朝鮮総連・北との闘い」で、朝鮮半島の赤化統一をめざした北朝鮮に対し、朝鮮半島の自由統一をめざし在日メディアとして朝鮮総連・北朝鮮と戦ってきた姜昌萬(カン・チャンマン)統一日報社長をお招きし、西岡力会長とともに報告して頂いた。

 冒頭まず、家族会の飯塚繁雄代表、増元照明事務局長、横田早紀江さん、本間勝さんから近況報告を伺った。概要以下の通り。

■自由統一か独裁か 朝鮮総連・北との闘い-東京連続集会67報告

◆もっとスピーディに
飯塚繁雄(田口八重子さん兄、家族会代表)

 もう67回もこういう会をやっている。この間前進的な情報は全くなく、皆様にもご迷惑をかけています。今は政局論争が目立ち、拉致の「ら」の字も出ない状況です。拉致問題対策本部はそれなりの活動を続けているということですが、家族会にはこれといった情報が示されていません。いつかいつかと待っていますが、見通しがつかないのが残念です。

 そういう中でも、今年2月、もっと世論を盛り上げ「1000万署名」を集めようと決めました。これをメッセージとして使おうと思います。これは世論を風化させないための活動でもあり、北朝鮮に日本人はあきらめていないとのメッセージにもなります。

 各地で署名集めに夢中になっています。街頭活動が定番ですが、通行人は1%も署名に応じてくれない。特に大都市ではそうです。全国の組織や団体等が組織的に動き、あと125万を何としても9月までに、あるいは年末までにと考えています。

 私は、会社の社員や家族、外注業者にお願いしていますが、社長自らが協力をお願いしてくれます。こういう個人的なつてが一つです。また、各組織にお願いすることも考えています。以前からご理解とご協力をいただいている組織のトップにあってお願いしたいと思っています。

 近く、ジュネーブの国連機関である強制的失踪作業部会に特定失踪者の方が出席して実情を訴える機会ができました。来週早々に行くと思いますが、藤田隆司さん(特定失踪者藤田進さん<当時19>の弟)が、我々と一緒に拉致問題解決について埼玉で活動してきましたが、早く政府認定をという強い願いもあります。

 特定失踪者の家族はそういう願いを常に持っておられ、機会あるごとに訴え続けています。政府拉致対策本部の中にも、被害者の認定分科会があり、そこが中心となって情報を集めています。また各県の警察本部に向かっては、調査の要請をするところも出ています。

 情報の収集を政府はやっていますが、その結果や経過については、個々の家族に報告している筈ですが、これは全体を公開できないものなのでなかなか皆さんにお話できませんが、私の家族の例を申し上げます。

 妹の田口八重子のDNA鑑定を先日やりました。本人のものだと言われている髪の毛や爪を集めました。手続きもお金もかかったと思いますが、私と私の兄弟や八重子の子どもたちのDNAを集めて鑑定したのですが、確定できなかったというのが実情です。

 なぜこういうことを話すかと言いますと、それぞれの動きはしているんだなということを私は感じました。しかし、これはというものはなかなか出てこない。「生きている」という情報は、あちこちから間接的にはうかがっていますが、それぞれの被害者がどこにいるのか、あるいは元気でいるのか、最近どういうことがあったのかということはまだまだ見えません。

 前年度の情報収集に関わる予算はかなりあったわけですが、使い切っていないという現実もあります。そういうことについて私たちは、徹底的な情報収集をしてくださいとお願いをしています。

 但し、この情報はなかなか公開できないだけに、本当にやっているのかもなかなか分からないということもありますが、対策本部はそのための組織です。また、拉致問題は政府の最重要課題ですから、もっとスピーディにやってもらわなければならない。

 松原大臣は、「時間との勝負」ということで、自らあちこち手を回しておりますが、全体のベクトルが本当にそれに合っているのかどうかという心配もあります。そういう中で孤軍奮闘というのはなかなか難しいと思います。

 我々は担当大臣として支持していますので、できるだけ足を引っ張らないような考えをもって行動しなければならないということも含め、何とか動きやすい状態にしていただくのが我々の動きでもあります。

 最近拉致問題を取り上げたチャリティ・コンサートがありました。7月1日にはロシアの有名なピアニストであるブーニンさんが拉致問題を理解、協力していただいてみなとみらいホールでやってくれました。挨拶からすべて拉致問題に関するお話がきちんと出ていました。8月には毎年やっていますが、「真夏に第9を歌う会」があり、支援金をいただいています。

 これから具体的な動きとして署名運動で全国を飛び回ってお願いをしていきたいと考えています。特に地方の方は、非常に親身になって署名に協力していただいています。集会でも、もし自分の家族が拉致されたらという意識のもとに参画をしていただいているのが最近の傾向です。

 従って私たちは、どんな地方でも集会や署名活動があれば飛んでいく覚悟でいます。これといってお知らせするものはありませんが、今後とも宜しくお願いいたします。

◆家族には情報を伝えてほしい
増元照明(増元るみ子さん弟、家族会事務局長)

 みなさんこんばんは。代表が言われた通り、街頭署名については3か月続けてやっていますが、街頭署名だけではとても100万という数にはいかないので、今日は議連の平沼会長のご紹介で、ある組織に行ってきました。

 先月、横田めぐみさんの「死亡」報道がありましたが、私は「チャンネル桜」で、個人的な見解を申し上げておきました。みなさんも気になっていらっしゃると思います。おそらく横田家には政府から何の情報も行っていないでしょう。

横田早紀江 後でお伺いしました。

増元 この情報を出した崔成龍(チェ・ソンヨン)さんは、拉北者家族会の代表です。最初にこれを立ち上げたのは崔祐英さんという若い女性でした。その会員でしたが、西岡先生から話を聞きますと、韓国社会は日本より男尊女卑があり、若い女性の代表のもとではやっていけないと会をのっとってしまって、活動をやっています。

 この方が以前、(横田めぐみさんの元夫で韓国人拉致被害者)金英男さんの情報を出しました。日本政府は、薮中さんがそれ以前に金英男さんに会っているので、韓国人拉致被害者の誰かではないかと予想していたと思います。そして韓国人高校生拉致被害者4人の内のだれかではないかと考えていました。

 それは正解でしたが、その後横田家と金英男さんの家族、お母さんの崔桂月(チェ・ゲウォル)さんとお姉さんの金英子(キム・ヨンジャ)さんを日本に招請しました。そして集会、イベントに我々と連携していこうと話になりました。

 そして崔成龍さんが金英男さんの家族を日本に連れてきたのです。救う会が設定した麻生外務大臣との面会をドタキャンし、その間何をやっていたかというと、民団の方々と夕食をしていた。

 また、韓国でも面会をドタキャンし、民団のパーティにでて寄付金をもらっていた。こういう人とはとても連携できないということで、しばらく家族会としては静観しています。

 彼の今回の情報が果たして正しいのかどうかは私には分かりません。一つ問題なのは、このような重大な情報をメディアに売るということです。これをメディアの報道として横田家が聞いた時に、どのようなショックを受けるかということまで彼は考えない。そういう方の情報を私たちは信頼するわけにはいきません。

 今北朝鮮が拉致問題を終結させよう、そうしなければ平壌宣言にのっとった日本からの協力金は得られないということを知っていますから、拉致問題を終結させようという策謀の中で情報戦が行われています。その中で彼が網にひっかかった可能性があります。

 北朝鮮がわざと嘘の情報を流す。そういうことも私たちは考慮しなければならない。だから単に彼の情報を信用することはできないというのが今の状況です。北朝鮮との間では情報戦に厳しいものがあり、日本は情報収集力では弱いところがあります。

 北朝鮮はヴェールにつつまれており、中の情報をどれだけとれるか分かりません。それに対し、こちらはオープンですから彼らは家族会や救う会の動きをほとんど把握しているでしょう。

 情報戦に関しては不利な部分もありますが、私たちは自分たちがやれることを信念をもってやるしかないと思っています。国民の皆さんもその点を踏まえて、私たちとともに戦っていただきたいと思います。

 先ほど早紀江さんに聞きましたが、日本政府は85%の確率がなければ、個々の家族にも何も情報を与えない。これまで色々な情報があったそうです。生存の情報だけで、死亡の情報はまったくないそうです。その生存情報さえ、個々の家族には伝えていません。

 なぜかというと、85%以上の確率がないからです。しかし、ヴェールにつつまれた北朝鮮の情報は、8割なんてとてもとれるわけがないのです。ということは言わないということと一緒です。どのような情報が入ろうとも皆さんには言いません、と同じです。

 これではどこまで政府を信じられるのかということになります。特に家族というのは色々な情報を知りたいのです。どんな情報でもいいんです。それで一喜一憂することは、もう私たちはしません。

 家族会を結成して15年の間に色々な情報が来ており、それに一喜一憂していたら体がもたないんです。それでも政府が取りえた情報は聞いておきたいのですが、何の情報もいただけません。

 残念ですが、こういう中で私たちがやるべきことは、政府を動かす大きな国民運動として戦っていかねばと感じています。どうもありがとうございます。

◆つまらないことに心をまどわされない
横田早紀江(横田めぐみさん母)

 みなさんこんばんは。お暑い中こんなに来ていただいてありがとうございます。

 拉致問題というのは、もうどうしたらいいのか私たちは分かりません。飯塚さんや増元さんがおっしゃいましたように、北朝鮮は見えない国ですので、政府の方々も情報を一生懸命取ろうとして頑張っていますといつもおっしゃっていますが、私たちはその言葉を信じて、今何をやってくださっているんだろうと思うんですね。

 そして少しでも情報があればどんなことでも教えてほしいと増元さんがおっしゃいましたが、「分かりません」ということで、「これは間違いないということがない限りはいうことができません」とおっしゃっています。

 ということは、ないということか、あっても命に関わる問題なのか。そして少しでも情報が出ると蓮池さんたちのようにすぐに移動させられてしまったと書いておられます。だから彼らに危険が及ばないことを私たちは願っています。

 もしも政府が誰かの情報を取って、それがどういうことか分からないでも、もっと前に出られるように知恵を働かせて、だれに話せばいいか、どういう話をすればいいかを考えてほしい。政府はそういうことが仕事ですから。なんとかしなきゃと思ってやるしかないと思っています。

 テレビの報道をみますと、政権の動きばかりが見えて本当に悲しいなあと思います。被害者はどうして助けてくれないんだろうと思っていると思います。

 私たち家族は年令も上になってきて、体力がなくなってきています。いつまでもはこのように動けないと思います。そう思っていても、呼ばれれば、元気でいられるうちにと思って、どちらかが行くとか色々な工夫をしながら、例えば小中高の校長先生が来られる講演会などに行っています。子どもたちにしっかりと教えてくださいという思いをこめて行くわけです。

 やはり話すと、私たちには普通のことでも、そんなこととは本当に知らなかったと言ってくださるかたが結構いらっしゃいます。「こんなことがあったんですか」、「気がつかなくてごめんなさい」と、帰り際涙を流して言われる方もいて驚いたんですが、そういうことなのです。

 ブーニンさんの公演の時も、演奏を聞いてくださった方々が、私たちの話も聞いてくださり、「もっと国民が意識しなければならないことだ」と言ってくださいました。

 拉致問題は国際問題など色々なことが絡んでいて我々には分からないようなところもありますので、家族会でどこまでできるのかなと思う時もあります。有本さんのお母さんは、私より10歳上ですが、「もう会えんかもしれんね」と言われることもあります。そういう悲しい思いをしています。

 北朝鮮からのものは、骨のときもそうでしたが、考えられないようなでたらめなことがもたらされてきたことを私たちはしっかり見てきましたから、きちんとしたことが交渉の中で出てくるまでは、つまらないことに心をまどわされないようになりました。これからもどうぞ宜しくお願いいたします。

◆特定失踪者家族藤田さんが国連で訴え
本間 勝(田口八重子さん兄)

 みなさんこんばんは。今日は本当に暑い日でしたが、こんなにお出でいただきありがとうございます。

 (田口)八重子は埼玉の川口の出身ですが、川口市では特定失踪者のご家族と一緒に署名活動をしています。川口は荒川を越えた所にあります。八重子は政府認定されていますが、川口には特定失踪者で認定されていない方が4人おられます。

 その人たちの中で、特に藤田進さんは、北朝鮮から脱北してきた人がもたらした写真が、本人に非常に似ています。鑑定の専門家である先生が、写真を見て、「本人に間違いありません」という話でした。

 にも関わらず政府は認定に躊躇しています。はっきりした証拠がないからという理由です。これは我々に情報を与えてくれないのと同じです。それで、弟の藤田隆司さんが国連の強制的失踪作業部会に申立書を4月に送りました。それが受理されて申立てを聞きましょうということでジュネーブに行くことになったのです。

 政府も今回は支援をしてくれます。それは、国際世論に訴えるというのもありますが、パネル展や世界との交わりの中でどんな運動ができるのかの調査をしてきてくれというものです。

 我々は国際世論に訴えることを国連に行ったりしてやっていますが、特定失踪者の方が作業部会にいくのは今回が初めてです。この問題が国際的に注視されてくれればありがたいと思っています。

 川口市のパネル展は1週間で見学者が888人でした。その時375筆の署名をいただきました。川口ではボランティアの方もたくさん来ていただいて、この間56人が我々と一緒にやっていただきました。

 引き続き一生懸命やっていきたいと思いますので、ご支援を宜しくお願いいた
します。

◆74年から拉致事件を報道

西岡 ご紹介いたします。「統一日報」の姜昌萬(カン・チャンマン)社長でいらっしゃいます。姜社長にはかなり前からご指導をいただいていました。「統一日報」は大学生の70年代から読んでいましたし、色々教えてもらうことがありました。

 しかし、拉致問題と「統一日報」との関係についてはあまり分かっていなかったのですが、5月27日に、三浦(小太郎北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会代表)さんたちの守る会に姜社長が講師で行かれて、三浦さんが記事をまとめたものをメールで見たら、1970年代アベックが北陸地方で失踪した時、これは北朝鮮による拉致事件だという論陣を、メディアとして最初にはったのが「統一日報」だったのです。

 私はちょうどその頃勧告に留学していましたので、リアルタイムでの記憶がなかったことから、ゆっくりとお話を聞かなければならないと思いました。日本で一番最初に拉致を報道した。拉致は朝鮮総連と北朝鮮の違法活動であり対南工作活動の中で起きたことですが、そのターゲットには民団も入っていて、民団も朝鮮総連と北朝鮮の政治工作で二度くらい危ない時があったのですが、それを何とか守ってきたのも「統一日報」だったのです。

 そこで1960年代から日本で、朝鮮半島問題について正しい論陣をはり、北朝鮮の政治工作と戦ってこられた立場から、体験的に拉致をどう見て、どう報道されてきたのか、また家族会・救う会の運動に何かアドバイスがあればということでお願いしました。姜社長宜しくお願いいたします。

姜昌萬 私は学生の頃アルバイトで入ったのですが、いつのまにか三代目の社長になりました。「統一日報」は1959年1月1日に、韓国から亡命してこられた方が作った新聞です。目的は、統一問題に対する正しい認識を広めるのが第一の目的で、二番目は在日韓国人の権益擁護、三番目は日韓友好親善の増進が主なものでした。

 今、西岡先生からお話がありましたが、お手元にうちの資料があります。あまりに厖大な資料がありますが、既に1974年に、北が対韓工作基地を日本に作っていることを伝えています。そして1977年には、北の日本センターができこういうことをやっていると報道しています。

 第2次世界大戦後、日本が敗戦したことで自動的に解放を迎えましたが、3年後に南北は分断されていきます。北は、人民共和国という共産国家を作ったし、南は自由民主義国家を作った。みなさんの中では悪名高い李承晩政権です。

 北は建国以来一貫して赤化統一、共産化統一を基本的な政策としてきました。すべての対南工作はこれを基点にしており、今も基本的にはほとんど変わっていません。如何にして済州島まで共産化するか、ということが彼らの基本的な路線です。

◆文世光事件が以降日本人拉致に

 その中で日本が対南工作の基地になったわけです。みなさんは文世光事件というのをご存知と思います。この事件で朴大統領の奥様が亡くなられました。文世光は「韓青」という青年団体の構成員で、日本の方のパスポートをもって日本人になりすまして、生野区の交番の拳銃を盗みました。

 そして、朝総連の支部の金浩龍(キム・ホヨン)という人物の政治工作を受けて、1974年、朴大統領を暗殺するために韓国に潜入しました。それまでには香港など色々なところを経由して韓国に入ります。

 8・15というのは、韓国では解放記念日として祝う日ですが、その記念式典に乗り込んで朴大統領を狙ったのですが、それには少し失敗して夫人に当たったのです。

 そういう悲惨な事件でしたが、これを契機に日本における対南工作を、韓国人じゃなく日本人に切り替えろという政策転換をしたんじゃないかと思います。

 1953年の朝鮮戦争、6・25動乱が終った段階で、北朝鮮ではすざまじい粛清が行われました。ソ連派、そして毛沢東系の延安派などが全部粛清されました。1967年5月には、甲山派という国内派も粛清されました。6月に北朝鮮労働党の全党全員会議で唯一思想体系を決定し、北朝鮮では金日成以外に偉い人はいないということになりました。

 次に金正日が労働党に入って、実験を握っていきます。そして自分の叔父である金英柱組織指導部長も排除し、金日成オンリーで行きます。そして歴史を全部作り変えていきます。

 1970年に第5次党大会が開かれますが、この年金正日は実質的にナンバー2になります。彼に逆らう人は誰もでてこなくなった。そして、彼が全対南工作の指揮をとることになります。

 そういう大きな流れの中で拉致問題が起きたと見るのが、正しい見方だと思います。僕は、同族として日本の方が拉致されたことを心からお悔やみ申し上げます。また非常に申し訳ないと思っています。

 1970年代は、我々がいくらそういうことを訴えても、日本のマスコミ、政治家は、朴正熙軍事政権批判の論調が強かったのですが、北朝鮮にはほとんど見向きもしませんでした。だから一番悪いのは金日成、金正日ですが、二番目の責任は日本の公安当局やマスコミ人を含め、日本人にも責任があると思います。

 どうして北を正しく見てこなかったのか。私が中学3年の時(1959年)に第一次帰国船が出ました。朴は日本の学校に行ったのですが、子どもが多い時期で50人くらいでした。そして、クラスのほとんどが北に帰りました。私の父の弟一家も第三次帰国船で帰りました。

 当時は、「地上の楽園」とか、「北に行けば何も不自由することはない。何で日本で苦労しなければならないのか」とか言われ、「行こや、行こや」と大阪弁ですが、誘われたこともありました。こうしてほとんどだまされて連れていかれたのですが、これも一種の拉致だと思います。

 北にとっては、これは労働力としてよかったのです。対外的に見ても、日本で植民地時代に長年苦労した方を温かく祖国のふところに迎え入れるということで、人道的次元からも非常に宣伝にもなりました。

 金日成がそう考えたかどうか分かりませんが、在日が約10万人、その中には日本人妻など日本国籍の方が6700人いました。

西岡 日本国籍離脱者が3000人います。

姜 これも一つの悲劇です。そして1970年代後半に、在日では難しい問題が出てくるので、これからは日本人を拉致するという政策転換があったと僕は理解しています。

西岡 1974年の文世光事件は在日を使ったが、その後は日本人を使おうとしたということですね。

姜 当時のKCIAは警備の反省から、在日韓国人に対する取締りが非常に厳しくなったのです。そういう切替があって、「統一日報」の1977年11月11日付けの記事(参考資料配布)では、日本センターというものを北朝鮮が作っているのです。これを少しでも見ていれば、拉致被害者は少なくなったのではないかと残念でならないのです。

西岡 これは久米裕さん拉致を一番最初に報道しています。この新聞は横田めぐみさん拉致の4日前です。

◆北朝鮮との戦いは嘘との戦いがほとんど

姜 我々ももっと強い活動をすればよかったのですが、振り返ってみて残念でなりません。「統一日報」はそれ以来ずっと北朝鮮の間違った対南政策、統一政策の是正をうながしてきました。1970年の第5次党大会以来、北朝鮮の方針は、共産主義社会の中でも異常な、封建時代の方向に変わっていきます。これは1980年代以降、我々が色々な説得をしても、例えば7・4南北共同声明等色々な国際的約束事をしても守らない。

 拉致はする。麻薬を売る。やらないことはない。こういう国は、ならずもの国家なんです。金日成、金正日政権は、対話の対象ではなく打倒の対象だと「統一日報」では規定しています。

 ですから6者会談も、我々は茶番劇だとずっと報道してきましたが、既に結果が明らかになっています。

 最近、「毎日新聞」や「東京新聞」は、我々のできないことをする。例えば、「東京新聞」の五味さんは、金正男とメールでやり取りをして実態がどんどん分かるようになりました。

 7月2日の「毎日新聞」では、最近金正恩という三代世襲体制になりましたが、核も金正日が中堅幹部用の教材で、「原爆を作れ」という指示をしたということです。「核を持て」ということです。そういうことが明らかになっています。彼らがこれまで「平和利用」と言ったのは全部嘘だということが明らかになりました。

 我々がこれまでやってきた北朝鮮との戦いは一貫して嘘との戦いがほとんどです。100%嘘で、言ってることと正反対のことをしています。

 今後我々がどのようなことをやるのかということが一番問われるのですが、残念ながら我々は韓国側の問題もたくさんあり、いつのまにか朝総連が一つの記事の役割をしましたが、

 みんな知っていることだと思いますが、韓光煕(ハンガンヒ)という財政副局長をやった温泉に一緒に行きました。彼が転向した後です。北朝鮮でも総連でも局長より副局長の方が実務的には実験を握っているケースが多いです。

 その彼は、北朝鮮の工作員のすべての上陸地点に行ったと言います。ご家族がいらっしゃる前でこういうことを言うのは申し訳ないですが、辛光洙(シン・ガンス)は実際に(拉致の)実行犯でした。

西岡 「横田めぐみさんは私が拉致した」と北で曽我ひとみさんにしゃべった男ですね。

◆韓国の国内は今混乱状態

姜 彼は16歳まで静岡の高校で学び、帰国船に乗って北朝鮮に帰りました。在日です。そして「工作員になれ」という指令を受け、また日本に入ってくるわけです。民団中央の団長室はいつのまにか出入りするようになりました。民団の幹部たちも、五反田の「ミラン」というスナックがあるのですが、そこにいつもたむろするくらいでした。

「辛光洙は団長室に入る時、ノックなしで入る」というのは有名な話です。金正日が拉致を認めるまでは、「ちょっと新潟に行こうか」というのは、「隣にちょっとたばこを買いにいこうか」というのと一緒で、日本はスパイの天国だったのです。何の規制もなかったのです。

 また、それを支える朝総連組織があり、これが物質的にも、組織的にも応援しているわけです。例えば西新井の金萬有病院は工作員たちのたまり場でした。一時期は、日本に工作員だけで300人はいたのではないかと。大臣クラスでも7~8人来ている、と。そういうことで、日本こそは彼らが実行するのに一番の適地でした。

 小泉首相が訪朝し、金正日が拉致を認めて以来、国民が一体になっていますが、それ以来方針が変わり、今度は韓国国内に彼らの根をおろすことをどんどんやっており、力をつけてきています。

 韓国では10年間、金大中、盧武鉉政権が続き、いわゆる「太陽政策」を打ち出して、北朝鮮の言う通りの政策をやりました。それによって韓国が従来の基本政策とは正反対の政策をとるようになり、今韓国は、私からすると、内乱状態です。

 北朝鮮の政策を実行する部隊が、何も日本を経由しなくてもいいことになった。この10年間、青瓦台(大統領府)の中にもそういう連中が入っているし、外交部にも、中央情報部の後の国情院の中も真っ二つに分かれているという状況です。金大中、盧武鉉政権後も、非常に深刻な状況が続いています。

 実は在日韓国人もけっこう拉致されています。学生時代に工作を受けます。北朝鮮に統一革命党という地下組織があります。日本本部の責任者が、私の中学校の同期でした。私が1980年代の終わりに、本人が韓国にどうしても行きたいというので私が連れていったのですが、彼はまだましな方です。そしていつの間にか連れて行かれて帰ってこない。

 日本の皆さんは拉致への怒りが高くなって、国民的な運動が起き、ある面で心が温かいのですが、韓国でも拉致された被害者が、明らかになっただけでも500人を越えています。しかし、国民的運動は起きません。

 北朝鮮から脱北してきた人たちが今2万3千人くらいいますが、この人たちのことを「裏切り者」という連中もいます。こういうように、韓国の国内が今混乱状態であることが現状です。

 今年は、大統領選挙が12月にありますが、どういう方が大統領になるかによって、今後の北に対する政策が変わる可能性が非常にあります。これが我々の課題になっています。

 日頃のみなさんの活動には経緯を表したいと思います。また日韓の連帯が北朝鮮を根本的に大切です。北の金正恩政権を最終的には打倒するしかない。拉致問題の解決もそれしかないんです。そして南北が自由統一をして、普遍的な自由民主主義の制度を、日韓の心ある人たちが連帯して戦って、勝取る以外に解決の道はないのではないかと思います。もちろんそれまでの間に色々な努力が必要です。

◆70年代、工作員が検挙されても工作活動を信じる日本人がいなかった

西岡 ありがとうございました。まず私の方から、持ってきていただいた資料の新聞を確認させていただいて、70年代の「統一日報」が一体何を書いていたのか見させていただきたいと思います。

 まず、1974年9月7日の「統一日報」ですが、74年8月15日に文世光事件が起きて、その後、日本の中で北朝鮮が工作員をしている。その作品が文世光である、と。北朝鮮が、日本を自由に工作基地として使っているために大統領が殺されそうになり、大統領夫人が死んだ。日本はちゃんと取り締まっているのかという抗議の声が韓国から出て、そういう中で工作活動の実態を「統一日報」が報道した記事ですね。

 私もよく覚えていますが、当時の日本のマスコミは、韓国の大統領がテロにあい、大統領夫人が殺されたのに自作自演の疑いがあるとかを、週刊紙だけじゃなく、NHKのニュースで「ナチスドイツのヒットラーは自分で国会に火をつけて独裁の法律を通したことがありました」という例を引いて、独裁を強化するためにこういうことを起こした疑いがあるかのような報道をしていたんです。

姜 そうですね。ここにも書いてあるんですが、北の工作員がこれだけ検挙されているんです。一覧表も載せています。これだけのケースがあるのに、それでも信じようとしない方がほとんどだった。

西岡 この表は韓国が作った表ではなく、日本の警察庁が韓国の抗議を受けて、国会でどうなっているんだと言われた時に国会に出した表で、1950年から日本に北朝鮮のスパイが入っていたということですね。

姜 これは氷山の一角です。捕まることはほとんどないです。

西岡 拉致と関係するのは「旅券偽造は常習」という記事がありますが、つまり入ってきた工作員が日本人になりすまして日本人の旅券を使うのは70年代よりもっと前からあった。先ほどの文世光も、吉井さんという日本人のパスポートを盗んで吉井さんになりすまして韓国に入ったのです。そして日本の交番から盗んだ拳銃を持って入った。

 日本人になりすましてテロをするという形は既に文世光事件からあった。この吉井さんというのは実在の人物で拉致はされなかったが、吉井さんがいるということで文世光がなりすましたことがばれてしまった。

 姜社長が今日おっしゃったのは、それから後、在日韓国人に対する取締りが厳しくなった。在日韓国人は日本の中で朝鮮総連系に工作されている可能性が強いと。文世光は総連系ではなく民団系の人だった。民団系の人でも取締りを厳しくしなければならないということになって、それでは日本人を使おうではないかということになった。

◆認定被害者で最初の久米裕さん拉致で、拉致は続くと予測

姜 在日の方を(工作活動に)全部やらないということではなくて、今までやった工作員を日本人にまで広げていこうと政策転換をしたと1974年11月11日の「統一日報」で具体的に報道しています。

西岡 これは先ほども言いましたが、めぐみさんが拉致される4日前の新聞です。この時に、「三鷹市役所の警備員が密出国」となっていますが、これが拉致だったわけです。

 このことについて、日本に北の工作員が入って、「潜伏工作員逮捕で発覚」というのは、Aとなっていますが田無市で捕まった李秀吉です。そのことを報じていたわけです。工作員が日本に入って日本人が連れて行かれた。この時拉致という言葉は使っていませんが、「密出国」というのは連れて行かれたということです。

この記事の中で、

これまで「北」が秘密裏に在日韓国人を工作して「北」に送りつけ、平壌などの工作機関で一定期間スパイ訓練をほどこし、日本経由で韓国に潜入させた例は数限りなくある。だがこのように日本人を工作し、北に連れていった例は、表面化したものではこの久米(裕)さんが始めてだ。

 つまり、久米さんを、在日と同じように、工作員として使うのではないかと想定して書いています。そして、

「北」スパイに日本人を活用した例は、韓国に入りやすい日本人の旅券等を偽造してそれを使うといったことに限られていただけに、日本側も深刻な衝撃を隠しけれずにいるといわれ、久米裕事件の捜査の進展に関心が示されている。

 つまり、日本の旅券を使うのは文世光もやっていたが、日本人そのものを使うのはこれが初めてだと。

 そしてその横に、「日本人専担組織も存在か」という記事があり、そこにもすごいことが書いてありまして、「北」が直接指揮しているだけでも、約200のスパイネットが日本にある。そして200の一つひとつに、平均5人くらいいる、とあります。つまり、1000人くらいになる。辛光洙みないなのが200人いるということです。

 そして、石川県警に捕まったAも、北から入ってきた人間の手下になったわけ
です。

姜 工作員が来ますと、必ず応援者をつけます。北朝鮮に帰った人はこちらに親戚や知り合いがいますので、そこを訪ねていくのです。そして何か弱点を見つけて協力させる。先ほど多い時は300人くらいいたと言いましたが、大臣クラスでも7~8人が日本に常住していたと聞いています。

 私の親しくしていた友人もいつの間にか統一革命党の日本本部の責任者になり、北に約40回行ってきたと言います。これは、「何回行ったか」と聞いて言ってくれたのではなく、だんだん親しくなってくると、サウナに行った時とか、一杯飲んだ時に自分からしゃべるんです。

 その時、「どうやって行ったの」と聞いたら、工作員が高速艇で迎えに来ると3時間くらいで着くそうです。向こうで招待所というところに行って、そこで工作を受ける。段々、行くたびに嫌になって矛盾を感じたそうです。彼は勉強もできたし、頭が切れた男だったので。

 私は、「韓国に行きたい。転向したい」という相談を受けたのですが、初めから拒否したんです。「お前の話ではもうじき統一するんじゃないか」と言いました。ソウルオリンピック前に大使館と相談をして、連れて行ったことがあります。乱数票というのは僕も生まれて初めて見ました。

 最近テレビの話ですが、今解説をしている元「朝鮮新報(朝鮮総連機関紙)」の記者の辺真一(ピョン・ジンイル、「コリア・レポート」編集長)さんとか、彼らは当時は共犯者ですよ。朝鮮大学校の教授だった人もいる。彼らは教え子を北に送った本人ですよ。こういう人たちが、さも北朝鮮と戦っている闘士であるかのようになって、世の中本当にどうなっているのかさっぱりわからない。

 辺真一さんは北朝鮮に何回も行っていますよ。北に行って、矛盾を見て、何でその時に記事にしなかったのか。

西岡 記事の話に戻りますが、200のスパイネットがあって1ネット5人と書いてあります。そして

 ところで、「北」のこのような大規模なスパイ工作も、最近は「北」の著しい威信の失墜があって大した成功を収めることができにくくなっている。として、民団フラクションとか事件のことが書いてあります。そして、消息筋によると、このような状況を背景にして、つまり自首する人間が出てきて民団工作が失敗したことが書いてあり、

「北」は対韓工作の全面的なたて直しをはかっている。顔の知れた層は差し控え、未知の工作員を物色していると言われる。既存のスパイネットを活用しながら、新人を物色していこうとしているわけでが、このような「北」の新手のスパイ工作要員として日本人もどんどん使っていこうとしているのではないか、と言われている。

 消息筋はその具体的な表れの一つがこんどの久米事件であるという。日本側も久米さんの密出国幇助の疑いで逮捕されたAの周辺にも、本格的な日本人工作専担組織があると見ていると言われる。

 これは、日本の公安が久米さんを拉致したものの背後に、日本人を使おうという組織があるということは、その後も日本人が拉致される可能性があるということを分かっていなければ、こういう話にはならない筈です。

 久米さん事件は、繰り返し取り上げますが、認定事件の一番目だったわけです。一番最初の事件の時ここまで分かっていて、めぐみさんの拉致が起きる前に新聞報道まであって、Aという犯人が現場で捕まっていたのに、結果として何も手をうたなかったから、めぐみさんが拉致され、次の年に田口さん、増元さんたちが拉致されていったということですね。

姜 そうですね。それと、日本の公安当局からの情報ももちろんあるんですが、当時「統一日報」は金日成一族の個人崇拝に切り替える時期ですから、それに対する反対勢力というか、比較的に民族主義派という人たちがいまして、そういう人たちとうちの当時の社長や幹部とのパイプも相当あったように聞いています。そこからの情報もありました。

 当時は我々の会社では、金日成がせきをしても分かるというくらいでした。金日成が西を向こうが東を向こうが全部情報が入るようになった。北も頼ってくるわけです。日本でもっとこういう報道をしてほしい、と。そういうこともあって、生きた情報が、公安当局からの情報をはるかに凌いでいたと聞いています。

西岡 そういうことを背景にして、日本人が狙われるだろうということを久米さんの事件の直後に書いているわけです。これは大変なスクープだと思います。

姜 スクープというより、社内では福井など北陸の海岸でアベックが一夜にして何人もいなくなるというのは、これはもう明らかだということでした。日本の公安当局も絶対分かっているんです。それを放置したところに大きな問題があると思います。

◆日本の報道があまりにひどかった70年代

西岡 私は1991年に、「諸君!」という雑誌で、最初に拉致問題について書いたのですが、その時、当時のことを分析して、この文世光事件がひとつのキーポイントになったのではないかと思ったんです。

 というのは、次の8月27日と29日の記事で韓国政府の事件の全容発表がありますが、ここでも出てきますが「万景峰号」、これは今の万景峰号ではなく、古い時代の万景峰号ですが、これが大阪に来て、文世光はそれに乗ってその中で教育を受けて、「悪いのは朴正熙だ。朴正熙を殺して韓国で革命を起こさなければ韓国の人たちは救われない」ということを信じてしまって、そして日本から拳銃を盗めと、「革命家は自ら武器を入手するものだ」と言われて、日韓関係を悪くしようということも含めて、日本の旅券と日本の拳銃を持っていった。

 万景峰号というのはそういう船だったのです。結果として、日本の報道があまりにひどくて、そして当時の自民党の木村外務大臣が韓国で、「日本の総連の取締りが甘い」と非難を浴びている時に国会で、「現在、韓国に対する北朝鮮の脅威はありません」という答弁をした。

 大統領が殺されそうになっているのに、「ありません」とは何事かということで、ここの記事にもありますが、すごい反日デモが起きたのです。今、韓国で反日デモというと慰安婦や歴史問題についてですが、私も見に行っていますがそんなに人はいません。しかし当時は、この写真を見ても分かりますが、何万人も集まっていました。

 そして大使館にデモ隊が入って、警察が守りきれず、大使館のガラスが全部割られるということになったのです。北朝鮮が、日本にいる在日韓国人を洗脳して韓国でテロしたのに、日韓関係が悪くなったのです。本来なら日本でも韓国でも、反北朝鮮デモでなければならないのに、テロをやって大統領夫人を殺したら日韓関係が悪くなった。

 在日韓国人を使ってもここまでできた。日本人を使ったらもっと効果的な日韓関係悪化になるだろう、と。

姜 北朝鮮からすると日本と関係の仲が悪くなることが自分たちにとって一番都合がいいわけです。「統一日報」はほんの一部しか持ってきていませんが、この時代でも「統一日報」は従軍慰安婦問題等をほとんど扱っていません。そういうことよりも、もっと対極的な観点から、そういうものを乗り越えて、もっと日韓は未来志向でやらなければだめだと。同じ自由民主主義の理念を持つ国が、共同歩調を取るべきという観点から、うちの新聞も発行したと思います。

◆文世光事件がモデルになって大韓機爆破事件が起きた

西岡 そうですね。文世光事件に戻りますが、文世光事件がモデルになって大韓機爆破事件が起きたんですよ。今度は日本人がテロをやった。拉致された田口さんは、そのために(工作員に)日本人化教育をしたわけです。そして日本のパスポートを持って、今度は在日ではなく、日本人に化けた金賢姫と金勝一がテロをしたんです。

 あの時、金賢姫が自殺に成功していたら、この反日デモよりも、もっと大きな反日デモが起きる可能性があります。

姜 その前の83年10月には、ラングーン事件があり、韓国の大統領は助かったんですが、外務大臣他17人の閣僚等が暗殺されています。北朝鮮がやったことは、この他にもいっぱいあります。

西岡 しかし彼らの特質は、テロをやったのにも関わらず、「自分たちはやっていない」と言うのです。ラングーン事件もそうですよね。朝鮮戦争以来全部「でっちあげ」と言うのです。

姜 自作自演とかでっちあげ、と言いますね。

西岡 そのために拉致をして、拉致被害者に工作員の日本人化教育をして日本のパスポートを持たせて大韓機事件をやったのです。あの時、金賢姫さんは自殺したわけです。しかし、3日間こん睡状態だったけれども、彼女は体力があったから生き返った。生き返らなければ、東洋人の死体が2つ、そして偽造された日本のパスポートが2つしか残らないんです。

 民族性というのは文化ですから、遺伝ではないんです。従って、遺体からは日本人か韓国人か分からない。死体は、言葉はしゃべりませんから。そして中東には当時、赤軍派がいたんです。テロをやっていた。あの大韓機事件はソウルオリンピックを妨害しようとしたんですが、なぜ飛行機を落とすことがオリンピックの妨害になるのかと当時言われましたが、私は、その赤軍派がテロをしたということになったら、文世光事件から考えれば絶対なると思います。

 あの時、金賢姫たちが逃げていたら、怪しい日本人が逃げたということになる。あるいは死んだとしても、2人の日本人の死体が残ったということになる。日本のマスコミは韓国がでっちあげたのではとまた言う。あのパスポートは偽造だと言う。

 そして日本人が韓国人をテロしたということになったら、この時以上の大きな反日デモが起きて、日本の選手団がソウルオリンピックの入場式に日の丸を掲げて入場できたかどうか。日本人の観光客がソウルオリンピックを見に行けたかどうか。危なかったんです。

姜 彼らは常にそういうことを狙って行動を起こしていることを如実に物語っていると思います。

西岡 彼女が生き残って、ソウルに行きます。これは洪(ホン)公使に教えてもらったのですが、当時の韓国のKCIAには、北朝鮮の元工作員を取り締まるノウハウがあったそうです。過酷なことは一切しなくていい。そのままのソウルを見せると、みんなびっくりして、だまされていたと思って転向する、と。

 つまり北朝鮮では、韓国というのはまだ乞食がいて、子どもたちは飢えていると教わっているのです。金賢姫もそう教わっていた。ところがソウルに行ってみて、彼女は外交官の娘ですからホテルやデパートは驚かないんですが、汚い市場に行って、南大門市場だと思いますが、リヤカーで腕時計を売っていたそうです。

 多分、偽ブランド時計だと思いますが、でも北朝鮮では時計はものすごい貴重品です。それをリヤカーで売っているのでショックを受けた。入っていくと、おでんの屋台があったり、豚足があったり、牛の血を固めたスープなど、庶民の食べ物がいっぱいあって、目の前にあるのに誰も盗んでいかないんです。

 食べ物を目の前に置いておいたら北朝鮮では盗まれるから、パンなどは網をかけています。80年代の話です。今より北がもっと豊かだった時でもそうでした。それで彼女はショックを受けて、自分はだまされたと思った。

 彼女は、自分は死刑になると思っていたんです。だまって死刑になれば北の家族は英雄の家族です。しかし、自白すれば、北にいる家族は裏切り者の家族になって収容所に入れられる。それでも自分がやった殺人というのは罪だ、申し訳ないと一言言って死刑になりたいともんもんとして、彼女は自白したわけです。

 それがなければ金正日の思う壺で、日韓関係が悪くなっていた。それに拉致被害者が利用されていたということですよね。そのことについて、「統一日報」は、最初から書いているのです。

それでは、質問をお受けしますが、まず家族の方たちからどうぞ。

【質疑応答】

◆韓国では国民が拉致問題にあまり関心がない

飯塚 韓国では国民が拉致問題にあまり関心がなく盛り上がらないという話がありました。そういう中で、この問題は日本だけでやりなさいということになるのかどうか。アメリカもありますが、日本がどれだけイニシアティブをとるかというのが、私は大事だと思いますが。

姜 日本がイニシアティブをとることは望ましいことですし、すべきだと思います。私は李明博大統領に期待をしましたが、その前二代の大統領があまりにも親北だったので、今度こそまともな政権をと思ったのです。

 ところが、もう5年目になろうというのに、ほとんど変わっていない。個人的には怒りを感じています。大統領の就任の挨拶で、「もう理念の時代は終った」と言って、前の親北政策をそのまま継続するというような方向にいった。部分的には是正されていますが、基本はそのまま残っています。

 従って次の大統領ですが、韓国は議院内閣制ではないですから、大統領制はものすごく権力が集中します。小さな橋をかける場合でも、大統領の決裁をとらなければならないくらい権力集中の弊害が出ています。

 この問題に対して理解のある大統領が誕生することによって、またそういうふうに仕向けさせることによって、政策を十分に変えることができると確信しています。そして、最後は我々が絶対勝つと思います。確信をもってやれば、いつかは必ず勝つんじゃないですか。韓国も変わるだろうと思います。

◆少なくとも3桁の工作員が今も

増元 70年代の工作員の話がありましたが、今現在、協力者を含めて何人くらいいるでしょうか。

姜 すみません。私は公安当局ではないので実態を把握することはできません。今までの流れからすると、70年代、80年代よりは減っていると思いますが、やり方が巧妙で、韓国系の民団の中にも疑いを持っている方がたくさんいます。

 というのは、在日韓国人社会も再編の時代になり、全体で約60万人と言われていますが、戦前からずっとおられた方は段々日本国籍を取得して減っていっています。最近来られたニューカマーが約18万人~20万人と言われます。

 また、朝鮮籍の方たちが、思想が変わったのではなく、便利がいいから韓国籍を取っています。とにかく民族学校を出たというだけで無条件でつながる特性があります。だから朝高出身とか、朝鮮大学校出身は今どんどん韓国国籍に切り替えています。

 前は、民団の支部組織を通して国籍変更をしたのですが、今は韓国の領事館に行けば直接変更できます。大阪の朝鮮学校では韓国籍の人が70%いるそうです。韓国系の民団の方が送っているのかと思ったら違うんです。

 朝鮮籍のままでは便利が悪いのです。韓国籍の方がパスポートも取りやすいし、世界旅行もできるし、色々といいわけです。

 しかし、考え方が変わったわけではない。だから非常に危険視しています。

西岡 韓国政府のチェックが甘くなってしまった。

姜 チェックしようがないんです。だから、こういう制度をどう変えるのかということが今一番頭の痛いところです。今年は大統領選挙がありますから、在日韓国人に対しても、海外国民として投票権が与えられたのです。彼らが全部投票できるようになったのです。そうすると権利が発生して投票することになると、朝鮮籍から韓国籍に切り替えた方は、7~80%は野党、特に親北派候補に入れるんじゃないかと思って、警戒して見ています。

 これに対し、何の対策も講じていません。これは工作員がいるよりも、状況はもっと悪いと思います。

西岡 私があるところから聞いたのでは、公安当局は少なくとも3けたの工作員が入っていることをつかんでいるということです。一部、銃火器も入っている。しかし、厳しく監視しているということです。ある国会議員から聞きました。

本間 北にお金を送る時、どういうルートで送るのか把握できているのでしょうか。

姜 先ほど話した、朝鮮総連の財政副局長をしていた韓光煕さんは、工作員の侵入ルートは100箇所以上ということですが、送金については、80年代に朝総連が送ったお金は3000億円を越すということでした。

 今は、公のルートでは制限がありできなくなりましたが、あるとすれば朝鮮学校の生徒たちが北に修学旅行に行く時に持たせるレベルだと思います。日本との資金的、人的なルートは昔に比べるとかなり厳しくなっていると思います。

 今、朝総連の中央本部が競売にかかりますが、昔だったら、すぐ買えるわけですが、それも買える状況ではないと思います。

参加者 数日前、脱北者を装った女性が韓国で逮捕されたという報道がありました。何かご存知でしょうか。

西岡 数日前のことは分かりませんが、よく脱北者を装って韓国で逮捕されることがあります。黄長●(●=火ヘンに華)さんを暗殺しろとか、金聖●(●=王ヘンに文)さんを暗殺しろと言われて来たという人が何人か捕まっています。私も、暗殺リストに載っているから気をつけろと韓国当局に言われました。

姜 私も中国に行く場合は、延辺に朝鮮族が住んでいますが、公安の友だちから、ああいうところには絶対行くな、身元保証できないよと言われています。金正恩体制になって、統一革命党の元幹部と少し前に会いましたが、今でも独自の情報ルートを持っていて、軍人の約3000人が旧満州で処刑、左遷されているそうです。

 金正恩を支える新軍部と金正日に仕えてきた旧幹部との間でものすごくあつれきがあります。27日は、張成沢というナンバー2が、長男の金正男と中国で会ったということです。なぜ会ったのかはまだミステリーですが、金正恩体制がおかしくなった場合は、長男を代わりにしようとしているという説もあります。そのための地ならしではないかと東京新聞の五味さんは言っていました。

 これらはすべて未確認の情報です。「統一日報」の記事は、必ず裏を取っています。住所も載っていますし、でっちあげは絶対ないと確信をもって書いています。

西岡 「統一日報」は、日本の新聞に出ていないすごい情報がたくさん出ていますね。月1500円です。特に朝鮮総連、韓国に関する情報を正しく見るために必要です。北朝鮮のことは日本のマスコミも少し報道するようになりましたが、朝鮮総連の活動や北朝鮮の地下活動はこれを読まないと分からない。

姜 朝総連には二重組織があり、学習組という裏組織がまだあります。また、教科書をみますと本当のことを教えていない。例えば朝鮮戦争は、ソ連崩壊後金日成が何回もスターリンの所に行ったという文書が出ているにも関わらず、未だに韓国とアメリカ帝国主義が攻めてきたと書いています。

 これは正しい民族学校とは思いません。また、そういう所に日本の公的資金が行くのは宜しくないと思います。教育内容を是正すべきです。「統一日報」の目標の一つは、朝総連を弱体化してなくすることです。

参加者 金正恩のお母さんが在日出身であるということが広がっていますが、どう思われますか。在日の人は成分(階級)が下ですよね。
◆金正恩の母は在日朝鮮人

姜 高 英姫(コ・ヨンヒ)が在日朝鮮人だということはみんな知っているでしょう。父は柔道をやっていて、力道山にプロレスで負けてシュンとしている時に朝総連が声をかけて、「共和国(北朝鮮)に行って若い人に柔道を教えてほしい」ということになって、第3次帰国船で帰ったと聞いています。

西岡 北社会ではまだそれは知られていませんね。

姜 それは血統の問題があり、何年か前に軍の中で、「尊敬するお母さん」ということで少し流れたことはありましたが、金正日が病気で倒れたりする過程の中で、中断されました。今後は、歴史をどう作り上げるかまだ分かりませんが、何か出てくると思います。

参加者 同じ方に二度署名をお願いしていいでしょうか。

西岡 今1000万署名運動をしていますが、私たちは何「人」と言わず、何「筆」と言っています。つまり、今回は署名用紙の内容を新しくしており、「今年は勝負の年」というタイトルの内容に同意してくださる方にお願いしています。従って、新しい署名用紙については、以前に署名してくださった方にもお願いしています。

 また、今日始まる前に、もし9月2日の国民大集会が総選挙の真っ只中ということになったらどうするのですかと聞かれましたが、それでも絶対やります。また、その時自分の選挙区に行っている政治家に国家のことを任せられるのかと、判断の材料にすればいいと思います。総理大臣を含め、来ていただきたいという要請をしています。

◆根拠のないめぐみさん死亡情報

西岡 さっき増元さんがおっしゃった、めぐみさん死亡情報について少し報告します。メールニュース(横田めぐみ死亡情報は信憑性なし2012.06.16参照)には書きましたが、基本的に信憑性がありません。

 2つの理由があります。まず基本的なことですが、死亡情報の中身は何かですが、死亡確認書が出てきたということです。横田めぐみさんの文書が「49号予防院」、申淑子(シン・スクチャ)さんの文書が「695病院」となっています。申淑子さんは、呉吉男(オ・ギルナム)さんの奥さんです。

 この2つの病院の名前しか出ていないので、これは完全に嘘だと分かります。なぜなら、めぐみさんが93年3月に死亡したという死亡確認書を出したのは「49号予防院」です。同じ病院から2枚目が出ても、1枚目が嘘だったのですから、何の根拠にもならない。

「695病院」というのは、田口さんや増元さんなど他の7人が死んだという死亡確認書を出した病院です。「695病院」がどこにあるかというと、金正日政治軍事大学の中にあるのです。「695」というのは金正日政治軍事大学の隠し番号で、その中にある診療所のような病院です。

 申淑子さんは耀徳(ヨドク)収容所にいて、病気で出てきたというのですが、耀徳から病気で出てきた人が、金正日政治軍事大学の中の診療所に行く筈がないんです。

 なぜこの2つの確認書が出てきたかですが、インターネットで見ると、日本政府のホームページにこの二つの病院の死亡確認書が出ています。拉致被害者の死亡確認書はこの病院から出るのかと思った人が作ったのかなと思います。

 もしかしたら、北朝鮮が同じ病院で作り、増元さんの言う謀略の可能性もあるし、もっと単純にお金がほしい人が、インターネットで見て、日付を少し後にすればお金になるのかなと思って作ったかもしれない。

「朝鮮日報」が報道したとしても、日本のメディアはあまりにたくさん報道し過ぎです。検証してから報道してほしい。「49」と「695」と見ただけで、これは偽物だと分かる筈です。あるいは、「49」と「695」から出たとして、北朝鮮の意図は何なのか。死亡情報が出たのではなく、北朝鮮がまた謀略情報を出してきた可能性がある。今のタイミングで謀略情報を出してきたのは、日本に接近しようとしながら、めぐみさんは死んでいるとして終らせようとしているのではないか、という記事なら分かります。「死亡」という字を出しすぎるのは、ちょっと考えていただかなければならないと思います。

 私は最初無視しようと思ったのですが、あまりにも会う人、会う人が、「めぐみさん亡くなったのですか」と言うものですから、横田さんのところにはすぐお電話しましたが、メールニュースでもかなり長いものを書きました。

 近く、支援者の方々にちらし等を送らせていただいて、署名のお願い等をしますが、その中でもご報告しようと思っています。

◆真実が北朝鮮から少しずつ漏れ始めている

 先ほど早紀江さんもおっしゃいましたが、私も民間ですが情報活動をやっていますが、(拉致被害者は)生きています。間違いないです。証拠までは出せませんが、多数のところから、全然違う関係者から生存情報が出るということは、北朝鮮は死亡情報は意図的に流しますが、生存情報を意図的に出すということはありえないわけです。

 にも関わらず、北の内部から生存情報がたくさん出てくるということは、北朝鮮が死亡と言おうとしているにも関わらず、真実が少しずつ漏れ始めているとしか思えない。

 問題は、北朝鮮が日本に最近接近しようとしてきていることは間違いないです。それにはレベルがあって、第1は、日本人妻と遺骨の問題だけで制裁の一部を解除させ、食糧支援等を取りたいという工作です。第2は、金正日が日本をだまそうとして決裁した「8人死亡」にはさわらないで、それ以外の人を何人か出して終わりにしてほしいという工作です。

 そして、その2つのレベルでは日本の大多数は納得しない、自民・公明政権から民主党政権になっても納得しないということを北朝鮮の指導部が分かった時に初めて、「8人死亡」の金正日の決裁をどうしようかというところまで行くと思います。

 その時、拉致を認めると言ったことが遺言なんだと、死亡と言ったのは調査のしかたが間違っていたと内部の人が理屈を作れば、「死んだ」と言った人に付いて「生きている」といわざるを得なくなる可能性はありえる。

 それは向こうがどれくらい困っているかということが一つの変数で、もう一つは、先ほど言いましたが、日本人は第1と第2では絶対あきらめないというメッセージが送り続けられていることです。その2つがあって第3まで行けるわけです。

 しかし、松原大臣は、そのことを頭に置いて、北朝鮮に対して、「時間がないのは北朝鮮。家族が被害者に会えなければいけない」と言っているのは、「8人死亡」と言っている人が帰ってこなければだめという意味です。それも含めてでなければだめということです。

 そして一方で、「死んだと言われた人が生きていたという発表になっても、その責任は問わない」と言っています。つまり第3段階まで持ってきなさい、と。そうすればその責任は問いませんよ、というメッセージを就任以来ずっと同じことを言っています。

 それ以外のメッセージが色々な所から出ると、北朝鮮はまだ日本をだませると思うかもしれません。そうじゃないようにしなければならない。そのためにも、9月2日に全政党が集まって、総理大臣にも是非来てもらってやりたいと思って要請していますが、その席で、オールジャパンで皆怒っているということを示さなければいけないし、石原知事や安倍元総理も来てくださると思います。また全国の都道府県からたくさんの議員の方々が来てくれると思います。また、我々国民もたくさん集まって会場があふれるようにしたいと願っています。

 また署名の1000万という数字は、大きな数字ですから、北朝鮮をびっくりさせるためにも、彼らの人口の半分ですから、それだけ署名したという事実を突きつけたいと思っています。

 韓国の大統領選挙で、変な従北大統領がまた生まれると、北朝鮮が困らなくなってしまうということがあります。そういう点では、北と同じ戦いをしていると思います。

 まず我々ができることは、日本人はだまされないということを示せるかどうかです。ぜひ日本人の怒りを示したいと思います。我々も全力を尽くします。ありがとうございました。

●次回の東京連続集会は8月9日(木)18時半から文京区民センターで。東京連続集会は、初期は「各被害者の思い出」を一人ずつそれぞれの家族に語ってい
ただくものでしたが、改めて少し視点を変えて、各被害者一人ずつについて報告します。第1回目は、8月12日に拉致された増元るみ子さんについて新しい視点を含め報告します。以後順次、各被害者をテーマに報告します。

以上


自由統一か独裁か 朝鮮総連・北との闘い-東京連続集会67報告(2012/07/13)
http://www.sukuukai.jp/mailnews/item_3079.html

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