政府主催のジュネーブにおける「拉致問題に関する国際社会への理解促進事業」から昨日11日帰国しました。
以下は、家族会・救う会の事業についての評価についての声明です。
■ジュネーブでの行事を終えて・「家族会・救う会代表団」声明
平成24年11月12日
北朝鮮による拉致被害者家族連絡会代表 飯塚繁雄
北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長 西岡 力
家族会・救う会代表はジュネーブでの「拉致問題に関する国際社会への理解促進事業」の全ての日程を終えて11月11日、帰国した。今回のジュネーブ訪問では、救う会メールニュースですでに報告したシンポジウム、国連人権理事会強制的失踪作業部会での陳述以外に、8日にEU代表部、韓国代表部、米国代表部を訪問し、8日から10日までジュネーブ大学で拉致問題に関するパネル展示を行った。
帰国にあたりまず、主催者の政府対策本部、全面的に支援してくださった現地の日本代表部、実務を担った株式会社オーエムシーをはじめとする関係者に感謝したい。
家族会・救う会の立場から今回のジュネーブ訪問全体を評価したい。
第1に、今回の諸行事は政府拉致問題対策本部が企画主催した。これまで家族会・救う会の国際活動は我々が企画し政府がバックアップする形で行ってきたが、今回は政府が企画主催する初めての行事に我々が協力参加する形だった。
対策本部から多数の担当者が現地に赴き、現地の代表部外交官と一体となって準備し、行事を進めている姿に、政府の意気込みを感じた。拉致問題は国政の最優先課題である以上、政府が意気込みを持って取り組むことは当然ではあるが、今後も政府主催国際行事をぜひ進めてほしい。
第2に、シンポジウムでの基調報告を白真勲副大臣が行った。その内容は政府として拉致問題をどのようにとらえているかを具体的に示すもので充実していた。北朝鮮の「解決済み」という主張に対する反駁は説得力があった。
もちろん、同じ主張を家族会・救う会は当初から展開してきたが、国際社会に訴える場合には民間団体が主張することと政府が主張することとは重みが違う。
ただし、白副大臣の基調報告で拉致被害国を列挙するにあたり、中国を落としていた点は批判しておく。中国政府が認めていないことが理由かもしれないが、普遍的人権の立場からしてマカオの2人の女性も必ず助けなければならない対象のはずだ。
第3に、今回の行事には家族会・救う会だけでなく、特定失踪者家族と調査会代表が参加したことも意義があった。政府がいまだに認定できていない被害者は必ず存在する。国際広報においてその点を強調する必要があった。
今春、藤田進さん家族が強制的失踪作業部会に審査要請書類を提出するにあたって、政府は経費などを支援した。この問題を熟知している松原仁大臣だからこそできた英断だった。その延長線上に今回の行事があった。特定失踪者家族の天内(あまない)みどりさん(木村かほるさんの姉)と調査会荒木和博代表が強制的失踪作業部会に出席して陳述できたことも代表部の働きかけの結果として評価したい。
ただし、失踪者家族である天内さんにとって一番切実な問題は真相究明である。金賢姫氏が訪日時に、木村さんと似た女性について行った証言を家族に開示するなど、その点での一層の努力を求めたい。
また、政府主催シンポジウムに韓国の被害者家族と専門家を招聘したことも評価したい。家族会・救う会がこの間ずっと行ってきたことではあるが、わが国が主権侵害と自国民保護という観点だけで拉致問題を扱っているのではなく、人権侵害という普遍的価値の観点から国際社会に協力を求めていることをアピールできた。
第4に、国連人権理事会強制的失踪作業部会委員、各代表部の大使らの反応が大変良かった。すでにこの問題の概要と北朝鮮の主張のでたらめさについて熟知しているような印象を受けた。その上で、直接家族の訴えを聞いたのでより実感がこもったようだ。
作業部会委員全員が非常に同情的で、なんとかして被害者帰国を実現したいという熱意を感じた。ある大使は目頭を赤くしていた。
2001年以降、継続してきた我々の作業部会に対する働きかけと代表部や関係者の外交努力などの成果といえよう。
第5に、いまだに多くのヨーロッパ国民は拉致問題について知っていないという現実も明らかになった。
ただし、ジュネーブ大学でのパネル展を熱心に参観して、この現実を初めて知ったと語った同大教授や学生の姿、また、立ち見が出るほど満席になったシンポジウムで真剣に聞き入っていた参加者の姿からは、今後、努力をすれば拉致問題に関するヨーロッパでの関心を高める可能性を見ることができた。
シンポジウムに国連人権理事会強制的失踪作業部会の委員長が参加してくれたことや、家族の訴えを聞いたジュネーブ大学生が涙を流していたことは印象的だった。
第6に、国際広報活動や国連人権理事会での活動は強制力を伴わないという限界がある。今回の行事は以上見たように成功したと言えるが、我々の目標は行事の成功ではなく被害者の救出だ。
その点から政府に求めたいことは、国連では唯一強制力を持つ安保理事会への働きかけの強化だ。安保理事会は現在、北朝鮮に経済制裁をかけている。その制裁がより実効性を持つように努力して頂きたい。
安保理の常任理事国である中国が北朝鮮の武器や軍事物資の貿易を助けて、事実上の制裁破りをしている。この点も厳しく追及してほしい。
また、やはり中国の反対で2006年、安保理の対北朝鮮制裁決議に拉致問題を明記させることに失敗した。反面イラクのサダム・フセイン政権に対し安保理が2002年11月8日に成立させた決議1441号は、「安保理は、イラク政府が、イラクによって不当に拘禁されたクウェート人や第三国国民を、送還あるいは消息確定に向け協力すべきとした(累次の)国連決議をないがしろにしてきたことを遺憾とする」として湾岸戦争中のイラクによるクウェート人拉致問題を取り上げている。この点でも中国の普遍的人権に反する行為を批判する姿勢を求めたい。
第7に、繰り返しになるが我々の目標は行事の成功ではなく被害者の救出だ。白副大臣の基調報告で、「政府は今年を勝負の年としている」と明言した。これは我々の運動スローガンに政府が同調したことを意味する。今年はあと一か月半余りしか残っていない。日朝局長級協議が開催されることになったが、拉致を棚上げにして支援をとろうとする画策に惑わされず、厳格に行動対行動の原則を守る中、被害者救出という成果を出して頂くことを求めるものだ。
<参考>国連安保理決議第1441号(2002.11.8)の関係箇所原文
UN Security Council Resolution 1441 on Iraq: November 8, 2002
The Security Council,
……
Recognizing the threat Iraq’s non-compliance with Council resolutions
and proliferation of weapons of mass destruction and long-range missiles
poses to international peace and security,
……
Deploring further that Iraq repeatedly obstructed immediate,
unconditional, and unrestricted access to sites designated by the United
Nations Special Commission (UNSCOM) and the International Atomic Energy
Agency (IAEA), failed to cooperate fully and unconditionally with UNSCOM
and IAEA weapons inspectors, as required by resolution 687 (1991), and
ultimately ceased all cooperation with UNSCOM and the IAEA in 1998,
……
Deploring also that the Government of Iraq has failed to comply with
its commitments pursuant to resolution 687 (1991) with regard to
terrorism, pursuant to resolution 688 (1991) to end repression of its
civilian population and to provide access by international humanitarian
organizations to all those in need of assistance in Iraq, and pursuant
to resolutions 686 (1991), 687 (1991), and 1284 (1999) to return or
cooperate in accounting for Kuwaiti and third country nationals
wrongfully detained by Iraq, or to return Kuwaiti property wrongfully
seized by Iraq,
以上
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