2013年6月 4日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:中国
トピック:危機にある個人
1989年6月3日と4日、中国人民解放軍は天安門広場とその周辺で無防備な市民を激しく鎮圧した。その様子は、いまだ世界中の人びとの記憶に新しい。あれから24年、活動家は独立した機関による弾圧の真相究明と開示を要求し、当局はその声をことごとく排除してきた。
中国が経済的変化への劇的な適応力を発揮してきた一方で、人権擁護の改革には頑なに背を向けてきた。人権擁護活動に狭量な当局は、しばしば擁護者とその家族を迫害してきた。例えば、この2年、ノーベル平和賞受賞者、劉暁波(Liu Xiaobo)さんの妻、劉霞(Liu Xia)さんを違法に自宅軟禁している。また、米国に亡命した盲目の人権活動家、陳光誠(Chen Guangcheng)さんの甥、陳克貴(Chen Kegui)さんは不当な裁判にかけられ、家族には脅迫や嫌がらせが続いている。政府は、天安門鎮圧を批判したりその犠牲者を悼む人びとを多数、弾圧してきた。
アムネスティ・インターナショナルは天安門事件に関し、独立した機関による、開かれた調査を、当局に繰り返し要求してきた。また、人びとが自由に表現・結社・集会をする権利を当局が保障するよう強く求めている。これらの権利は世界人権宣言に謳われ、中国の憲法と新刑事訴訟法でも保護されている。
中国の憲法第35条は「公民は、言論、出版、集会、結社、デモの自由を有する」と規定している。また、刑事訴訟法第2条は「我が国の刑事訴訟法には、人権を尊重し擁護する、また人権、財産権、自由民権などの権利を保護する役割がある」と明記している。
いまだに議論と正義の追求が許されない
天安門の犠牲者を追悼し、正義を議論し要求する行為が、強引に抑えつけられている。天安門を口にすることは、中国ではいまだダブーである。公の場で議論することは、許されない。
亡命者たちが真相究明や責任者の処罰を繰り返し要求している一方で、国内での活動は新たな課題に直面している。「天安門の母たち(事件で子息を殺された親150人らによる活動グループ)」はたびたび、当局に加害者の起訴と処罰を要求してきた。しかし、母親の多くが高齢で他界している。この1年で少なくとも4人が亡くなり現在残るのは32人で、その大半は体調が優れない。
憲法・法律で自由をうたいながら、デジタル空間も規制
5月14日に発表された「2012中国人権事業の進展」白書の中で、国は「国民が知り、聞き、見て、加わる権利を行使する手段として、また政府が国民を知る重要な手だてとして、インターネットは重要である」と認めている。ところが、ネットでの「天安門」の検索や同事件に関する意見の書き込みは、禁止されている。政府は、「グレート・ファイアウォール」と俗称されるネットのアクセス制限により、国民が知ってはならないとする情報へのアクセスを阻止してきた。Twitter、YouTube、Facebookなどのウェブサイトは、遮断される。新浪微博のようなブログは利用できるが、検閲を受ける。「趙紫陽」「民主主義」「人権」などの語句も使用禁止だという。出版物も同様である。時には、当局は表現の自由の権利を行使する作家、ブロガー、ジャーナリスト、研究者、内部告発者、一般市民らに、厳しい懲役刑を課す。
天安門記念日が近づくと、活動家は、拘束、盗聴、入出国の禁止など嫌がらせをよく受ける。深圳を拠点に活動する余剛(Yu Gang)さんは5月27日、外出を認められず、電話とネットを止められた。オンライン活動家の野渡(Yedu)さんは5月28日から自宅軟禁状態に置かれ、ネットが使えない。山東省の人権擁護者、李紅衛(Li Hongwei)さんら十数名は、追悼集会を計画して警察に尋問を受け、7時間近く拘束されていた。「天安門の母たち」の1人は、夫が香港での音楽イベントに招待を受け、一緒に香港に行こうとしたとき、警察に「香港は混乱状態だ」と警告を受けた。警告を無視していたが、イベント主催者が「天安門が近い。ピリピリしている時なので、来ない方がいい」と招待を取り下げた。
天安門弾圧事件の24周年を迎えるにあたり、アムネスティは中国当局に対して次のことを強く要請する。
・独立した機関が天安門鎮圧の真相究明とその開示を行い、人権侵害を犯した者に責任を取らせる。
・人権侵害があったことを公に認める。
・天安門抗議の再評価や犠牲者の追悼など、表現や集会の権利を行使する人びとへの嫌がらせや弾圧を止める。
・事件の被害者と家族を補償する。
「良心の囚人」の近況
天安門鎮圧についてウェブに書き込んだだけで、投獄されている人たちがいる。アムネスティは、この人たちを「良心の囚人」と呼び、即時無条件の釈放を求めている。
陳衛(Chen Wei)さん
2011年12月23日、「国家政権転覆煽動罪」容疑で有罪判決を受け、民主主義と政治改革を支持した記事で、懲役9年を宣告された。事件当時は天安門の学生民主主義運動のリーダーであったがゆえに1991年1月まで収監。1992年5月には、追悼と政党結成の活動で再逮捕され、5年の刑を受けている。
陳西(Chen Xi)さん
山東省出身の古参民主主義活動家。2011年12月、「国家政権転覆煽動罪」容疑で懲役10年を受けた。当局は民主改革を啓蒙する海外ウェブに発表した記事36本を証拠として挙げた。天安門事件での活動で懲役3年を受け、1992年6月に釈放。1996年、民主活動で懲役10年を受け、2005年刑期満了で釈放された。
朱虞夫(Zhu Yufu)さん
浙江省拠点の民主主義活動家。書いた詩が「国家政権転覆煽動罪」にあたるとして2012年2月、7年の刑を宣告された。天安門の学生活動家を支援して、当局に何度も尋問を受けた。妻は夫の体調不良を理由に釈放を訴えたが、拒否されている。夫の話では「頭がふくらんでいる」という。また、刑務所当局は高栄養価の食事を取り止め、手紙のやり取りを妨害しているという。
アムネスティ国際ニュース
2013年5月31日
中国:天安門から24年 遠い正義と続く抑圧 : アムネスティ日本
http://www.amnesty.or.jp/news/2013/0604_3998.html