金正男独占告白、文藝春秋社から発売

 文藝春秋社から金正男とジャーナリストの五味文彦氏のインタビュー、交換メールなどをまとめた本が出版された。(「父・金正日と私:金正男独占告白」五味洋治/著)ここで、金正男のいくつかの発言をここで要約しておく。

1、自分は北朝鮮の政治には無関係でありかかわることもないことを何度も強調。

2、改革開放政策を主張、しかし、この政策には体制を揺るがす困難があることも確認。

3、延坪島砲撃のような韓国への軍事挑発には反対、南北の緊張関係を高めたい軍の影響による危険な行動とみている。同時に、南北の対話にはあまり期待をかけていない(南北両国の対話はお互いの立場のぶつけ合いだけで不毛と判断)。また、核問題では、北朝鮮は絶対核を手放さないと語る。

4、日本に対しては批判的なコメントはほとんどしていない(自分が入国時につかまったことに対しても好意的に、日本側は誠実に接してくれたと述べる)。同時に、拉致問題については、新たな情報はないが、「遺憾な問題。今のように議論が平行線では解決は難しい。拉致被害者とは会った ことはないが最近拉致被害者に関する情報管理が厳しくなった。」と述べる。これは逆に、「情報管理は厳しくなった」ということは、拉致問題は解決したという北朝鮮政府の発表は嘘であるとも取れる。

5、金正恩体制に対しては表面的には期待感を示しているが、本音では否定的で、改革開放路線に向かうべきだという主張を入れそうにない不満も感じさせる。

6、父親の金正日も三大世襲に反対だったと主張、しかし、それしか国内の安定には方法がなかったともいう。

7、中国が自分を警備、管理していることは認めるが、それ以上の中国の姿勢については触れようとしない。

 上記のような主張が繰り返されるが、これは基本的には、中国内の北朝鮮を改革開放に導きたいグループの意向と基本的に大きく異なるものではなく、逆に彼が北朝鮮で後継者になれなかった理由はまさにそれではないかと思わせる。

(文責:三浦小太郎)


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