チベット民族蜂起から57年を迎え チベット問題の根本的解決を求めます
2016年3月6日
中華人民共和国 国家主席 習 近平 殿
駐日本大使 程 永華 殿
Students for a Free Tibet Japan (SFT Japan)
代表 Tsering Dorjee (ツェリン・ドルジェ)
私たちは深い悲しみと怒りのなかで以下の声明を発表します。
2月29日、チベットの2人の若者が命を捧げました。一人はチベット東部ニャロン(中国名:四川省甘孜州新龍)の18歳の僧侶ケルサン・ワンドゥ、もう一人は北インド・デラドゥンの16歳の高校生ドルジェ・ツェリンです。少年僧はチベット暦新年の重要な儀式期間が終了した後に、男子高校生は難民寄宿学校の正月休暇で家族のもとに帰省していた朝に、「チベットに自由を」と叫び、自らの体に火をつけました。
2016年3月10日、チベットの民衆がチベットの首都ラサにおいて中国共産党の抑圧に対して蜂起した1959年から57年を迎えます。同時に、2008年にアムド、カム、ウツァンのチベット全土で中国共産党政府に抗議する非暴力デモが広がってから8年となります。さらに、徹底的な弾圧の中で、究極の自己犠牲をもって正義を訴える焼身の悲劇がチベットで7年続いたことをも意味します。僧侶、遊牧民、学生、作家、高僧、母親――かけがえのないただひとつの生命とひきかえにチベットの正義を世界に求めたチベット人は、ケルサン・ワンドゥとドルジェ・ツェリンで150人にのぼります。
これらすべてを引き起こしているのは中国共産党政府の誤った政策にほかなりません。私たちは今日、1959年3月10日にチベットのために立ち上がったチベットの民衆、またこれまでの57年間闘い続けた人々と思いを一つにするとともに、現在この瞬間も続いているチベットでの中国政府の所業を糾弾し、正義はチベットにあることを訴えます。
5日に開幕した第12期中国の全国人民代表大会で、李国強首相は「開発において区域バランスのとれた発展と新しい都市化を促進する」と述べた上で「チベット自治区および4省のチベット区の発展を促進する施策措置をとる」と言及し、チベットに、成都からラサに至る2本目の鉄道を建設することを明らかにしました。私たちは、ここに根本的な認識のずれがあることを指摘します。
現代社会に合わせた当然の変化として、チベット人は経済発展を歓迎しています。しかし、チベットのチベット人が現在直面している「都市化」は、産業構造が変えられ、社会的に排除され、環境が破壊されるものにほかなりません。政府主導の急激な都市化で、中国人労働者が中国全土から移住し、中国人の数が爆発的に増え、チベットは「中華街」へと変わっています。チベット人は仕事を失い、インフレに苦しみ、土地の主役から転落しています。発電所やダム建設などの河川開発、無軌道に進められる鉱山開発により自然環境と生態系が破壊されています。中国政府の進める経済開発によって、社会産業、経済構造、生態環境すべてのバランスが崩壊しています。中国政府の発展施策は、チベット人の歓迎するものではないのです。
16歳の少年ドルジェ・ツェリンは、亡くなる前に肉声を映像に遺しました。「自分はチベットのためになにかすべきだと思い続け、唯一の方法は、自らを灯明と化すことと結論を出しました」「自分のような若者が焼身する理由が祖国のためであることを知って、世界の関心を呼び起こしたい」
中国共産党は1950年代から60年以上にわたり、チベットから自由を奪い、尊厳を踏みにじり、銃口で弾圧し、文化的虐殺を繰り広げてきました。しかし、私たちは今、中国政府の行ってきたすべての弾圧は完全な無駄であったと確信を持っています。
ケルサン・ワンドゥは自由であったころのチベットを知らない世代です。中国政府の喧伝通りであるなら「封建農奴制から中国共産党によって解放され、中国政府に感謝して愛党心と愛国心を抱いている」はずでした。しかし、ケルサン・ワンドゥは「チベットに完全な自由を」と叫んだと伝えられています。共産党政府統治下で生まれ育った若者であっても、チベットへの帰属意識は薄れず、チベット問題に対する責任を自らのものとして毅然と引き継いでいるのです。ドルジェ・ツェリンは、中国の侵略を逃れた両親から生まれ、ふるさとチベットの風景を見ることもかなわなかった難民世代です。しかし、そのような状況下でも、チベットへの強烈な帰属意識を大切に持ち続け、チベット独自の文化的価値とアイデンティティを自らのものとしているのです。
私たちは申し上げます。中国政府がどれだけ弾圧を強め、監視を厳格にしても、チベット人の誇りを奪うことはできません。チベット人は強く、辛抱強く、楽天的で、希望を失いません。そして、正義はチベットのもとにあります。
暴力によるテロが世界を覆い、出口の見えない報復の連鎖が続いている情勢のなか、自由と民主主義を信じ、希望と理念に則ったチベットの非暴力の闘いはますます存在価値を高めています。一方で、中国政府は南シナ海の軍事拠点化などの覇権主義的行動が各国からの警戒感を招いています。チベットの闘いはチベット1地域だけのものではなく、自由と民主主義が軍事覇権主義にどう立ち向かうかをとらえた象徴的なものになっているといえるでしょう。
SFT Japan(スチューデンツ・フォー・フリーチベット・ジャパン)は、中国共産党政府に対し、チベットにおける現在の誤った政策を速やかに撤回するよう求めます。
チベットの文化と宗教を尊重し、チベット高原の乱開発と生態系破壊をやめ、チベット人の代表者であるチベット亡命政権とダライ・ラマ法王との対話を速やかに再開して、チベット問題の根本的な解決をはかるよう求めます。
Students for a Free Tibet Japan
Tsering Dorjee
【声明】チベット民族蜂起から57年を迎え チベット問題の根本的解決を求めます : Students for a Free Tibet Japan
http://www.sftjapan.org/nihongo:m10appeal2016