1945年8月6日、広島に、そして続く9日長崎の2回にわたって、アメリカが行った原子爆弾を用いた人類初の核攻撃は、無辜の民間人に対する無差別殺戮、かつ、最新の化学兵器の人体実験としかみなしようがないものでした。そして、この犯罪が「人道に反する罪」として裁かれる瞬間が全くなかったというただ一点においても、連合軍による東京裁判は不公正なものであり、勝者が一方的な正義感で敗者を裁いた、国際法の原則を踏みにじるものです。私たちは今日、犠牲者の方々に深い哀悼の意を示すとともに、いかなる国であれこのような犯罪を繰り返すことがあってはならないという誓いを深く胸に刻むものであります。今年のオバマ大統領の広島訪問が、原爆を投下したアメリカがその歴史に対し向き合う勇気ある一歩となることを祈念致します。
そして、広島・長崎の悲劇は、その後さまざまな平和運動の原点ともなりました。科学の進歩は平和的利用という原則を決して踏み外すべきではないこと、公正な国際秩序と国家犯罪の取り締まりのためには中立的な国際司法裁判所の存在が不可欠であることは、今日普遍的な価値観として具現化しつつあるところです。
しかし同時に、今や、世界の核保有国は、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国、インド、パキスタンに広がっているだけではなく、イスラエルおよび北朝鮮も、事実上の核保有国に向かっているという現実も、私たちは直視しなければなりません。特に隣国の、しかもわが同胞を含む多数の他国民を拉致し、国内では世襲独裁体制による人権弾圧を続けている北朝鮮が核武装に向けて歩んでいることは、深刻な平和への危機となっています。そして、中国は自国の核実験を新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)にて、住民の充分な退避なく、数十度にわたり強行したとされ、多くの被爆者を生み出しました。しかし、それによる健康被害や環境破壊の実情を、今もなお公開せず、国際機関の調査も拒否し続けています。これはまさに、平和時に、自国内のウイグル民族に対し行われた核攻撃といえるでしょう。
私たちは広島に原爆が投下されたこの8月6日、平和は単に国家間の力の均等によるものではなく、各国が双方の主権、歴史観、民族自決権を互いに尊重し、民主主義と法治の原則が確立されることによって、真の意味での世界平和が実現されるのだという信念を、広島・長崎の犠牲を無駄にしないためにも世界に訴え、かつ、そのような世界平和の実現のために努力していくことを誓うものであります。
2016年8月6日
アジア自由民主連帯協議会
会長 ぺマ・ギャルポ
※PDFファイル
https://freeasia2011.org/statement/20160806.pdf