2月18日、東京四谷の会議室にて、アジア自由民主連帯協議会第24回講演会「習近平体制の現状と今後の民主化運動」が、講師に当協議会副会長、また中国民主化運動海外聯席会議として、中国民主化運動に取り組んできた相林氏をお迎えして開催されました。参加者は約20名。当日の内容を簡単に報告いたします。
相林氏は1989年の天安門事件当時留学生として日本在住、日本国内で抗議活動に参加しました。そして現在に至るまで、海外から国内の民主活動家との連帯、香港、台湾の問題などに積極的にかかわるとともに、チベット、ウイグル、南モンゴルの独立に対しても、彼ら民族がそれを望むのならば引き留める理由はないという原則を貫いてきています。
相林氏はまず、天安門事件から20年以上が経過した現在でも、中国政府はこの事件を徹底的に隠蔽しようとしており、毎年、この時期になると天安門事件の実態を証言しようとする人々を逮捕、拘禁し、彼らが仲間たちと共にこの事件を語り合うような場(日本の感覚では集会ですらない)に、彼らを参加させないという姑息な手段をとっていると、いくつもの実例を挙げて述べました。
特に、17歳の息子が天安門で殺された丁子霖(ディン・シーリン)さんは「天安門の母」として、事件の真相究明を求める運動をしてきたが、高齢もあって、運動の指導者の地位を他人に譲ったのに、天安門事件から27年後の昨年もまた、6月1日から自宅で軟禁下に置かれたことを例に挙げ、相林氏は、このような民主化運動家の逮捕・勾留は、日本人には理解できないかもしれないが、中国では「ビジネス」にすらなっていると述べました。
その意味は、拘留した活動家を監視する中国公安、そしてそれに協力する民間人(多くは公安の関係者で、他に仕事などろくにしていないひとたち)は、監視している間には多額の給料が出る。24時間、三交代制で見張り、それだけで収入を得ている人がいる。これこそ「弾圧ビジネス」なのだと相林氏は述べました。
さらに、日本では勘違いがあるようだが、中国をはじめとする共産党独裁体制が、何か確固としたイデオロギーや思想を以て行動しているかのように考えている人がいるけれど、それは全くの間違いだと述べました。相林氏は、共産党独裁は、中国も、たぶん現在の北朝鮮もそうだけれど、自分の権力をどう維持するか、もしくは拡大できるか、その一点に全てを絞っている、その意味では、自分たちの権力が守れると思えばどんな妥協もすることはあるし、また、守るためにはどんな残酷な弾圧も暴力も平気でおこなう、思想なき集団こそが共産党独裁の本質だと指摘しました。
そして、天安門以前、70年代末から「民主の壁」という民主化運動を展開し、逮捕され、長い獄中生活を送った魏京生氏の例を挙げ、彼が97年釈放、事実上のアメリカ亡命の時に、自分も民主化運動大会でアメリカにいたため、そこで出会えた時の感動を回顧しました。そしてこの時の釈放も、北京オリンピックの開催、最恵国待遇を得るためなど、国際社会との交渉上、釈放したほうが有利だと共産党側が判断したにすぎず、他の民主化運動への弾圧は最初に述べたように全く変わっていないと述べました。
また、成田空港に「籠城」した民主活動家馮正虎氏、また「真の革命家」と相林氏が考える張林氏という二人の民主活動家を紹介。彼らが行ってきた運動を紹介するとともに、中国共産党の「全人民代表大会」なるものは、中枢幹部以外は、日本でいれば国会議員に当たるはずなのに、その連絡先すら公開されていない。これでは「代表」でもなんでもないし意見を届けることもできないので、その連絡先をすべて公開せよという運動をしたこと、「民主化」等言葉を使えば本国では徹底した弾圧に遭うため「合憲」、中国共産党が憲法で認めているはずの権利は認めよという、彼らも反対できない言葉を考え出すなどの、様々な戦術をも紹介しました。
特にあまり日本では知られていないけれど、張林氏は、海外という安全地帯で運動をするよりも、国内で闘うことを望み中国に密入国、何度も逮捕されても志を曲げずに戦っていると述べました。そして相林氏は、自分が常に行いたいのは、国内で闘っている人たちへの救援、連帯であり、そのためには様々な手段がある、例えば、自分に直接連絡してもらえれば、彼らあての手紙一枚、はがき一枚を届けることができる、それが獄中で屈せず戦っている運動家へのどれだけの励ましになるか、そのことを忘れないでほしいと述べました。
さらに、中国共産党権力は堅固に見えるけれども全く強くはない、その証拠の一つとして、中国の弁護士たちは、かっては権力の手先だった時期もあったけれど、今は民主化運動や市民を守ろうと弁護する側に回っている、これは想像できないほど大きな進歩であり、それとともに習近平政権も追い詰められ様々な混乱をきたしている、今後、暗殺やクーデターが起きる可能性すら否定できない状態にあると、相林氏は中国の崩壊の可能性をも示唆しました。
そして、中国共産党独裁が続く限り、ウイグル、チベット、南モンゴルの独立も民族自決もあり得ないし、北朝鮮他アジア、世界の独裁体制も彼らが支えることによって継続してしまうだろう、自分は中国共産党独裁を倒すためには、誤解を恐れずに言えば手段を択ばない、そのつもりで行動していると述べ、講演を結びました(文責 三浦)