第9回アジアの民主化を促進する東京集会報告
10月19日、東京九段下の会議室にて、第9回アジアの民主化を促進する東京集会が開催されました。参加者は約90名、会場はほぼ満員となりました。
開会挨拶 西村幸祐(アジア自由民主連帯協議会副会長)
午後2時に開会、まず、杉田水脈衆議院議員から寄せられたメッセージ、並びに加瀬英明名誉会長のメッセージが紹介されたのち、西村幸祐副会長が開会の辞を述べました。西村副会長は、現在、中国政府の抑圧と闘い続けている香港市民を支援するための香港人権法が、アメリカの国会では審議され、成立しつつある。しかし、アジアの民主化の最前線というべき香港市民の闘いに対し、わが日本政府が殆ど支援の姿勢を見せないばかりか、来年は、習近平主席を国賓待遇で招こうとしている。私(西村)を含め、このような日本の現状に怒りを覚えている日本国民は多いはずで、今日ここ九段下の集会場から、日本政府がやらないのなら国民の力でアジアの民主化を求めるメッセージを挙げようと述べました。
第一部 基調講演
渡辺利夫(前拓殖大学総長)「日本の国柄とは何か」
続いて、渡辺利夫前拓殖大学総長の基調講演「日本の国柄をどう考えるか」が行われました。渡辺氏はまず、一枚の写真のコピーを配ったのち、自分は山梨県甲府市の生まれなのだけれど、我が家からこの一枚の写真が見つかったという所から話を始めました。そこには、赤ちゃんを抱いた祖母、抱かれている母親(まだ2,3カ月)が映っていたこと、真ん中に軍服を着た祖父が映っていて、その祖父が、日露戦争に出征する日に、一族を集めて記念撮影した時のものだったことがわかったと述べました。
そして、祖父の胸に、出征前というのに勲章がつけられているのを見て、調べてみると、その勲章は、祖父が日清戦争に従軍して受けた勲章だということがわかり、自分の家の歴史を知ることが出来た思いがしたと述べました。そして、このような写真を見ると、日清、日露の戦争という歴史が、わが家を通じて、今の自分にとっても大変身近なものに感じられると述べました。
このような写真を通じて歴史を見ると、自分という人間はただ一人抗して生きているのではなく、家族を通じて歴史とつながっている、歴史に於ける一人の旅人なのだという意識を持つことが出来る。現在は遺伝学の進歩によって、DNAを通じて様々な情報が、祖父から父へ、父から親へ伝えられているという考えがあるが、そのような視点に立っても、自分が今考え、悩み、時には喜び感動している気持というものも、ほとんど同じように、父も、祖父も感じていたのではないかという気持ちにもなってくる。そして、もっと古い先祖も、同じように考え、感じていたのではないかと思うと、渡辺氏は人間の歴史を貫く経糸のような意識のつながりの存在について指摘しました。
そして、このような視点に立てば、人間は本質的には、古代の昔から変わらないのではないか、人間が時代とともに進歩するなどということはあり得ないのではないか、と渡辺氏は述べました。もちろん、AIなど科学技術や通信手段は技術的には進歩しているのだけれど、それはある意味社会の表層に過ぎないのであって、人間そのものの意識が進歩したとは到底思えない。人間精神が時代とともに進歩していくという考えを仮に進歩史観と名付けるのならば、自分はその見解には立たない、むしろ人間というのは同じことをいつもくり返す、いわゆる循環史観の立場に自分は立つと述べました。
そして、だからこそ、自分たちは歴史に学ばねばならない、時代とともに進歩していくのなら、過去の歴史を振り返る必要はないが、自分たちが過去の人たちと本質的に変わらないと考えれば、逆に、過去の先輩たちがどういうところで悩み、失敗したのか、あるいは成功したのかを真摯に学び、同じ過ちを繰り返さぬよう考え行動しなければならないと述べました。
そして、明治維新以後、日本に「個人の尊厳」という概念がもたらされた、そのことは共産化された皆さんも学校などで個人の尊厳の大切さなどは充分教育されたと思う。しかし、明治時代に「インディビジュアル」という言葉が入ってきた時、当時の日本知識人にはこれが何を指すかわからなかった。このような政治用語に日本語訳を付けたのはだいたい福沢諭吉なのだけれど、福澤はこの言葉に、「社会に対する究極的な単位として。もうそれ以上は細分化できない」と考えた。そして福沢は「独一個人」と訳した。それがいつの間にか、これでもわかりにくいということで「個人」「個」という言葉が今は残っている。
渡辺氏は、しかし、「社会」を指す「ソサイアティ」という言葉も当時はなかった。「世間」という概念はあったけれど、社会というのは日本人にはなじみがなく、存在したのは「家」「藩」における、ある「身分」こそが日本人の伝統にとっての最小単位だった。
しかしそれがいつの間にか、「個人」「個」が、社会よりも、家よりも、国家よりも高い価値であるかのように考えられるようになって行った。人間が、言葉を使うのではなく、逆に、もともとなかった言葉こそが、使われることによって逆に自己運動を展開し、その言葉が逆に人間を支配するようになる、これが、現在の日本国憲法第13条、24条などに反映しており、個人の尊厳こそが社会や家庭を上に置かれている。しかし、この社会は実は個人ではなく、家族を最小単位として構成されている現実もあるのに、そのようなことは全く記されていない、わが国の現憲法には家族条項すらない。個人の尊厳だけが強調され社会や家庭が軽んじられる、そのような憲法は実はわが国にしかないと渡辺氏は指摘しました。
渡辺氏は、ここから家族の崩壊は現実に起きている、それは日本の出征数を見ただけでも明らかで、現在の出生率の減少にそれは顕著な形で表れている。この事態を受け、渡辺氏は、憲法に家族条項を入れ、社会の最も基盤となる最小単位は個人ではなく家族である、家族はその意味で国家から保護されるべきであるという視点を憲法の中に位置づけていかなければならないと述べました。
その上で、渡辺氏は、家族というものから、自分たちが離れることが出来ない様に、もう一つ、決して離れることが出来ない、運命的な存在がある、それは国家だと指摘しました。戦後日本では、国家というものに価値をあまり置くべきではないという概念があった。しかし、パスポートを例にとれば、日本人がパスポートを採るためには戸籍謄本が必要であり、自分がこの日本国において家族の歴史を引き継いでいることを証明して、はじめてパスポートが支給され、同時に、国外において日本国政府の保護を受けることが出来る。いくらグローバリゼーションの時代が来たと言っても、国家という存在から逃れることはできない、もちろん、国籍を変更することはできるかもしれないけれど、その場合でも、別の国の国籍を得なければ保護を受けられない。このことを、きちんと認識しなければならないと述べました。
渡辺氏は最後に、日本の国柄とは、形容詞で著せば3つほど頭に浮かぶ、それは、同質的(ホモジーニアス)、自成的、連続的、という3つであると述べました。日本が同一の国土で、ほぼ同種の人々が住み、他国ではまず使われない言語、日本語を使って歴史を営んできた(孤立言語)。そして、宗教上の争いが日本の社会に亀裂をもたらしたことは、全くないとは言わないがほとんどない。これはある意味、幸せな歴史を持っていると言えるのではないか、と渡辺氏は指摘しました。
さらに、日本では伊勢神宮の式年遷宮を20年に一度行う。これが始まったのは持統天皇の時代であり、約1300年前から続いている。なぜこのような儀式がずっと続いてきたのかを考えると、日本の歴史の連続性を再確認するという意識が民衆に共有されていたからこそ、このようなしきたりを継続してきたのではないか、そして、こうしたしきたりを守り続けたいという意志が、日本の歴史を連続させてきたという見方もできる。渡辺氏は、令和の時代になり、万世一系の天皇こそが、日本の歴史が内乱や侵略で深刻な危機に陥ることなく、連綿と続いてきたことを明かしている。現在の日本国憲法では、天皇は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴だと書かれているが、本当は「天皇は日本という国家と民族の連綿と続く連続性の象徴だ」という意味の言葉が本当はあるべきではないかと個人的には考えていると渡辺氏は述べ、新たな令和の時代、日本国民の意識と叡智が、より良き時代を作り出してほしいと講演を結びました。
第二部 アジア諸民族の訴え
続いて第二部を迎え、アジア各民族の訴えが行われました。
まず最初に、ペマ・ギャルポ会長から、渡辺利夫氏の講演について一言コメントをいたしました。ペマ会長は、約40年間、無国籍の状態で過ごしてきたこと、国家の庇護がないということがどれだけ大変なことかをまず指摘しました。その上で、これから語る多くのアジアの人々は、国家を奪われているか、もしくは、国家を国際社会が承認していない人たちがたくさんおり、そのことを日本の皆様はぜひ理解して彼らのメッセージを受け止めてほしいと述べました。
(1)王明理(台湾、台湾独立建国聯盟日本本部委員長)
最初に台湾の王明理氏が登壇。自分も、無国籍歴の時代が28年あり、現在は日本国籍を取得していることから話をはじめ、今台湾は、一見、民主的で、国民は親切で常識を持ち、インフラは整っている、何ら問題はない民主主義国に見えるけれど、実はそれは砂上の楼閣、全く危うい状態に常にあると述べました。
なぜなら、中華人民共和国という巨大な侵略国家が、常にこの台湾の息の根を止めようとしてきたからであり、台湾は、そのものすごい圧力に耐えながら、ひたすら孤軍奮闘してきたのが現実だと述べました。
しかも、台湾は、中国国民党の長い支配の間は、戒厳令が38年間に及び、その間は、少しでも反政府的に見える言動をすれば、独裁者蒋介石の気分次第で処刑される、今の中国共産党支配化と同じ体制が続いていた。そこから、長い時間をかけて、国内外の台湾民主化運動の力によって、自由と民主主義を勝ち取ってきた、この自由民主主義を、私たち台湾は引き継いでいかなければならないと王氏は述べました。
しかし、現実は、中国の圧力は一層強まり、台湾と国交のあった太平洋の国々が、中国のお金の力によって切り崩され、台湾の孤立化はますます進んでおり、ユネスコや、WTO、国連などに入ることはできず、オリンピックに出る時も、「チャイニーズタイペイ」という恥ずかしい名前でしか出場できない。しかもそのことを、日本をはじめ、民主主義国家が、きちんと中国に抗議してくれないのが現実だと述べました。
そして、今台湾にとって最も重要なのは、1月に予定されている大統領選挙であり、これは、台湾の自由民主主義を守る闘いか、中国独裁体制との統一を選ぶかの、運命の闘いであると述べ、国民党の候補に中国政府はものすごく力を入れている、台湾の民主的な選挙に、お金やサイバー攻撃、デマ攻勢などで、国民党を勝たせようとしていると指摘しました。
そして、今台湾を事実上応援しているのはアメリカのトランプ大統領であり、眼に見える形で台湾を支援し、勇気づけてくれている、もう一つの大きな影響は香港の事態であり、次の選挙で民進党を勝たせねば、「今日の香港、明日の台湾」の事態を迎えたくないからこそ、自分たちは民進党を勝たせて自由民主主義を守らねばならないという意志が高まったと語りました。
さらに王氏は、日本国民も、政治家も、心の中では台湾を応援してくれていることはわかっている、しかし、そのような静かな形では台湾の人たちの勇気にはならない、ぜひ、日本の政治家も、国民も、眼に見える形で、台湾の、そしてアジアの自由民主主義のために力を注いでほしいと述べました。
(2)民主中国陣線 王戴氏
続いて、民主中国陣線の王戴氏が登壇。自分は天安門事件の時代に日本に留学しており、もう30年間も時間が経過してしまった。今日は、主に香港について話したいと述べました。
王戴氏は、香港で今起きている自由民主主義を求める運動は、1989年の天安門事件と、同じ面もあるけれども、根本的に違う点もある、1989年の段階では、若者たちは、共産党の改革を求めてはいたけれど、共産党そのものを否定するものではなかった。王戴氏は。ここを突破できなかったこと、共産党の嘘を根本的に否定できなかったことが、あの時代に成果を挙げられなかった原因ではないかと述べました。
そして、香港で起きたことは、若者たちが、逃亡犯条例に象徴されるように、これ以上中国政府の影響が強まり、香港の民主主義が否定されたら、もう自分たちの未来が亡くなると考えたからこそ始まったと述べ、その意義は、自由民主主義はない限り、本当の幸せも発展もあり得ないことを示したことにあると指摘しました。
確かに、数字の上では中国は世界でも第二位に発展した大国であるように見える。しかし、中華人民共和国建国以来、ノーベル賞を受賞した人はほとんどおらず、その一人は劉暁波氏であり、ノーベル平和賞を受賞したにもかかわらず、事実上、獄中で毒殺されてしまった。社会の本当の進歩は、政治の民主化、個人の自由の確立以外にあり得ないと王帯氏は指摘しました。
そして、残念なことに、中国の若い人たちの多くは、政治に無関心で、香港の事態についても全く無理解であり、日本国内での香港支援デモに対し、本当に野蛮な言葉で日本の方々を罵るような場面が繰り広げられている、これは本当に情けないことだと王戴氏は語り、また、中国は自分が大国だという自信を持ち始め、全世界に対して、覇権主義と侵略をむき出しにしている、これとは戦って勝たねばならないと力強く訴えました。
そして、日本には沢山の中国人が移民し、中には日本の国籍を取っている人もいるが、その心は、日本共産党そのものの考えの人もいる。しかし、本当に中国に戻ったら、弾圧されてしまうような中国人が、難民として認められることもない。私の知人のある女性も、日本に住むことが認められず中国に戻るしかなく、その後は連絡も取れなくなった例があると、日本のシステムに対しても疑問を呈しました。
また、中国の民主運動家の中にも、今回の香港の問題に対し、「もう目標は達成したのだから解決に向かうべきだ」と語っている。しかし、香港では、いまだに市民・学生の要求する民主化は実現していない。それなのに、「人権」「非暴力」「平和的解決」を唱えている一部民主運動家が、香港当局や中国政府の立場に立っている。今、私たちは、中国共産党の悪の支配を打倒しよう、というメッセージをはっきり出して、戦っていかなければならないと述べました。
(3)レテプ アフメット (日本ウイグル協会理事)
続いて、日本ウイグル協会のアフメット氏が登壇、現在、中国政府は様々な犯罪行為を行っているが、現段階において、中国政府がウイグル(東トルキスタン)に対し行っている犯罪行為は、全く次元の違うものだという所から話しを始めました。
中国政府は、「再教育センター」などと名付けた強制収容所を東トルキスタン全土に建設し、そこにウイグル人を強制収容している、その中で何が行われているか、中国政府は徹底的に隠しているので、その全容は未だわからないが、フランス通信は、この収容所をつくるために様々な機材や材料を輸入したり購入したりした数字を確認した限り、少なくとも、180か所の収容所を建設する規模で今建設が進められている可能性があることを報じていることをアフメット氏は指摘しました。
さらに、中国は教育施設というけれど、中国自身が発表している収容所関連の文書の中には、一切の民族的ルーツを断ち切れ、という趣旨のことが実際に書かれている、そして教育施設ならば世界に開放すればいいのに、その中で何が行われているのかを見ることは、基本的に誰にも許されていない。そのこと自体が不自然だとアフメット氏は指摘しました。
また、衛星写真や潜入取材などで、収容所の実態が少しづつ外部に伝えられており、特にBBCの報道によれば、ウルムチ郊外の一つの町で、一か所に13万人も収容できる巨大な収容所を発見したという報道がある、今、国際社会では、少なくとも100万人が収容されていると思われており、中には、40%、50%のウイグル人が収容されているという説もあり、ウイグルの人口は中国の発表では1200万人くらいなのだから、その40%と言ったら数百万人のウイグル人が収容されていることになると、アフメット氏は事態の深刻さを訴えました。
さらに、その収容者の中には、ウイグルの文化を育ててきた人たちが多く含まれており、これはウイグルの文化を断ち切るための収容なのだ、中には日本に関係のある人もおり、一例を挙げれば、タシポラット・ティップ教授は2017年5月に、学会参加のためドイツへ向かう途中、北京空港で当局に拘束され、強制収容所に入れられ、2018年9月に2年間の執行猶予付きの「死刑」判決が言い渡された。
ティップ氏は、新疆大学大学を卒業後、1992年に東京理科大学大学で理学博士号を取得。1996年から新疆大学大学の副学長、2010年から2017年まで同大学学長、党副書記と務めていた。研究プロジェクトの成果から中国教育省に賞を与えられたことも多数あり、新疆では著名な学者だった。このような人までが「地位を利用して反政府活動を行い、分裂主義を実現しようとした」として処刑判決を受けている、日本政府も、また、出来れば東京理科大学も抗議の声を挙げてほしいとアフメット氏は訴えました。
さらに、収容所では沢山の人が殺されていることは確実だが、情報が閉ざされているので、どの程度の人が殺されているかわからないけれど、既にわかっている範囲でも100人を超えており、若い人も、お年寄りも、また子供もいる、しかもほとんどのケースにおいては、遺体を遺族にも返さず、収容所の近くに焼却施設を作ってそこで処分してしまう。これは、臓器売買に使ったり、また、ひどい拷問を受けて殺されたりしたことを隠すためではないかとアフメット氏は指摘し、これほどの犯罪を、日本政府も、国際社会も決して見過ごしてはならないはずだと訴えました。
(4)ジリガラ(南モンゴルクリルタイ副会長メッセージ代読)
続いて、南モンゴルクリルタイのジリガラ氏からメッセージが寄せられ、司会の三浦小太郎が代読した。内容は、南モンゴルでは環境破壊が進み、モンゴル民族の伝統であった遊牧生活は全く不可能な状態となっている。さらに、中国は本来モンゴル人が必要としている地下資源を、すべて搾取するために、環境に負荷をかける露天掘りを行い、さらには公害企業を誘致して現地の砂漠化を進めている。これはまさに、中国人によるモンゴルの植民地支配に他ならないことを知ってほしいと訴えました。
(5)チュイデンブン氏(チベット、アジア自由民主連帯協議会理事)
続いてチベットのチュイデンブン氏が登壇、ここでは「チベットの主権をチベット人に返せ」と題された同氏の原稿をそのまま紹介します。
皆さん、こんにちは。
今から68年前の1951年に、共産主義の中国は、我がチベット政府の代表団と結んだいわゆる『17条協定』を自ら破って、軍事力で我がチベットを侵略し、中国に合併しました。この『17条協定』の中には、中国は、チベットの外交以外に「チベットの内政に一切干渉しない」ことや「チベットから針一本も、糸一本も取らない」ことを約束しています。
しかし、実際には、中国は、いまの香港に対するものと同じようにこの約束を破って、「民主改革」と言う名の下では、120万人以上のチベット人を虐殺し、6000ヶ所以上の仏教寺院を破壊し、その中の金銀など貴重なものを奪いました。そして、「人民公社」と言う名の下では、一般チベット人の財産も略奪し、「土地改革」と言う名の下では、日本の八倍以上の面積を誇る我がチベットの領土も奪いました。日本の八倍以上の面積を誇る我がチベットの土地は、いま共産党独裁政権の力を養うための最も重要な財源の一つとなっています。
中国は、世界中に飛び回って、「チベット人は中国の民族政策のお陰で幸せに暮らしている」と宣伝していますが、しかし、実は、その民族政策は、奴隷的で封建的で植民地的な政策に過ぎません。今、我々チベット人は、その奴隷的で封建的で植民地的な民族政策の下で言論の自由も、信仰の自由も、出版の自由も、学問の自由も、集会の自由も、自分たちの言語や文化を守る権利も、自分たちの土地や財産を守る権利も奪われ、民族的危機に直面しています。そして、そのような中国の奴隷的で封建的で植民地的な政策は、今国境を超えてカンボジア、ネパール、アフリカ、更には日本や欧米など自由民主主義の国々の報道機関、教育機関、航空会社、ホテル、スーパー、スポーツ界などにも影響を及ぼし始めています。これは、いわゆる「特色ある社会主義」なのでしょうか。
日本は、アジアで唯一の世界的な自由民主主義の先進国です。私は、留学生活が終った後も、チベットに帰らず日本に留まったのも、日本は、世界的な自由民主主義の先進国となっているからです。中国の支配下にある最大多数のチベット人も、最大多数のウィグル人も、最大多数の内モンゴル人も、最大多数の中国人も自由で民主的で平等、公平、正義、法の支配のある社会で暮らすことを待ち望んでいるに違いありません。日本のような自由な社会で暮らしている私たちは、アジアのために、世界のために、自由・民主など人類普遍的価値観を守るために、世界最大人口を持つ中国の自由民主化を正々堂々と推進し、支えて行かなければなりません。
本日、私は、一人のチベット人として、我がチベットの将来について、そして、中国人のために、ウィグル人のために、内モンゴル人のために、香港人のために、台湾人のために、要するに、アジア及び世界の平和のために、中国の指導者たちを初めとするすべての関係者に向けて三つの政策提言を致します。
提言Ⅰ ヨーロッパ連合をモデルに現代中国の再構築を考えること
中国の共産党政権も自由、民主、平等、公正、法の支配などは「中国社会主義の核心的価値観」として一般国民に広く宣伝しています。しかし、それは水の中に油を入れたような状態になっており、実際には一つも実現していません。私たちは、それらを水の中に塩を入れたように中国社会の隅々にまで浸透させておかなければなりません。中国の奴隷的で封建的で植民地的な独裁政治体制は今年70年を迎えていますが、これ以上続くことを許すことができません。この政策提言Ⅰについて、近い将来に重要な発表が行われるだろう。
提言Ⅱ チベットの主権をチベット人に返すことを前提に、中国はダライ・ラマ法王14世及びチベット亡命政府との対話を再開し、中国の再構築について真剣に話し合うこと
ダライ・ラマ法王14世は、今の中国が抱えている民族問題を解決するためのカギです。中国の指導者たちは、ダライ・ラマ法王14世を敵視するのではなく、彼の存在とその地位を尊重し、その素晴らしい指導力をすべての中国人及び世界のために活かすべきです。
提言Ⅲ 中国は、軍事力の強化及び領土・領海の拡張主義を放棄し、すべての近隣諸国と真の平和共存関係を構築すること
現在の中国の指導者たちも「中国人は偉大な文明を築いてきた民族」としての誇りを持っていますが、本当に偉大な文明を築いてきた民族なのでしょうか。もし偉大な文明を築いてきた民族であるなら、他の民族の人権や文化を否定し、破壊するのではなく、他の民族と真の兄弟姉妹のような関係を築き、他の民族と本当に平和共存できる能力を養ってほしい。軍事力の強化や奴隷的で封建的で植民地的な領土・領海の拡張政策は、非文明的であり、本当の国益にはなりません。
ご清聴、有難う御座いました。(アジア自由民主連帯協議会理事 チュイデンブン)
(6)洪ヒョン氏(韓国、統一日報主幹)
続いて、韓国から、統一日報主幹の洪ヒョン氏が登壇。洪氏は、現在韓国で起きている事態は、20世紀初頭、イタリアの共産主義者グラムシの理論に基づいているとまず指摘しました。グラムシは、高度に発達した資本主義社会では、労働者の蜂起などの直接的な暴力革命は難しい。法曹界、教育界、文化界などに、プロフェッショナルな革命家を潜入させ、そこから共産主義体制を作り上げていくことを提言した、韓国では正にここ数十年をかけて、従北派が、ソ連、中国など外部の力を借りて韓国社会にそのような革命組織を作り上げており、それが現在の韓国の混乱を来していると述べました。
さらに、中国のような悪しき体制、自由民主主義の敵である体制とも、経済交流を通じて利益を得ることができる、また、そのような交流を通じて中国をいい方向に誘導できるというまったく間違った考えが、中国との国交回復以後の韓国には生まれている、このような考えこそが、危険な全体主義体制と自由民主主義が共存できるというまったく誤った考えであり、私たちはそのような考えを絶対に否定しなければならないと述べ、共産主義・全体主義体制との対決を訴えました。
(7)グエン・ハー・キエン・グオック(ベトナム革新党)
続いて、ベトナム革新党のグオック氏が登壇。自分は、ベトナム難民の子供としてこの日本で生まれたことから話をはじめ、現在のベトナムも、やはり共産党の独裁体制であり自国民が自由を奪われている、しかし同時に、中国共産党からの領土侵略をベトナムは受けていることを述べました。
だからこそ、ベトナムの民主化は、ベトナム共産党とも、中国共産党とも対峙しなければならない。しかし、ベトナム国民は、中国の侵略に対しては絶対にそれを許さないという国民感情があり、これが自分たちの運動としては大きな救いであると述べました。
そして、グオック氏は、中国がアジアに対する覇権を握ろうとしている先には確実に、ここ日本にも向けられている、日本の皆さんは、今こうして各民族に対し中国が行っていることは、日本の問題でもあることを認識していただきたいと述べました。
(8)プロヴィール・ビカシュ・シャ―カ―(バングラデシュ、アジア自由民主連帯協議会理事)
続いて、バングラデシュのシャ―カ―氏が登壇。アジアは、まさに問題ばかりであることを強調しました。そして同時に残念なのは、このアジアの諸問題を、自主的に解決しようとする政治家、知識人、マスコミ人などが、問題の深刻さに対し極めて少ないことがさらに問題だと述べました。そして、今インド・バングラデシュでは、イスラムをはじめとする宗教対立の問題が、これからの深刻な問題となると述べました。
そして、今後のアジアの問題を考える上で、必要な視点の一つとして、かって、ベンガルの詩人、タゴールや日本の岡倉天心などがアジアをどう考え、どうとらえていたかを再確認すること、歴史を知ることが重要ではないかと述べました。
最後に、このアジア諸民族の訴えの総括として、ペマ・ギャルポ会長が登壇。この会は、10年ほどまでに、ウイグルのイリハム・マハムティ氏、石平氏らとこの会を作ろうと思ったのは、当時は中国、ウイグル、モンゴルなど、いわゆる中国国内の「三民族」と言われていた地域での弾圧に対抗する運動はすでにあったのだけれど、中国は、国内に限らず、アジア全体への侵略の意図を強めていること、それに対抗し、アジアに自由と民主主義を広めていくのは、さらに広い連帯が必要だと考えて「アジア自由民主連帯協議会」という枠組みを考えたことを述べました。
しかし、現在中国は、さらに、アジア諸国、諸民族の内部にまで浸透し、その中で反中国、反共産主義の運動を破壊しようとしている、それが、本日の様々な問題提起によって明らかになったと指摘しました。
そして、このような事態に対抗するためには、さらに自分たちの、自由と民主主義を促進し、独裁、全体主義や侵略と闘う連帯を強めていくこと、そして、本日集まってくださった皆様のような方々のご支援を、今後さらにお願いしたいと述べ、この集会の結びの言葉としました。
続いて、アジア自由民主連帯協議会による本年度アジア人権賞が、自由民主主義と法治の原則を守るために不屈な戦いを今も続けている香港市民に授与されたのち、本体化の決議文が三浦事務局長によって朗読され、参加者の拍手をもって承認されたのち、午後5時、集会は閉会となりました。(文責:三浦)