ペマ・ギャルポ会長 1月講演会報告

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 令和二年1月18日、アジア自由民主連帯協議会の今年最初の講演会が東京四谷の会議室にて開催されました。講師はペマ・ギャルポ会長。講演会冒頭、昨年亡くなった知識人、関岡英之先生への黙とうが行われたのち、ペマ会長の講演が開会されました。参加者は約30名。

 ペマ会長は、2018年にアメリカのベンス副大統領がウイグルの人権問題を鋭く告発し、続いて、2019年にはウイグルを支援する法律がアメリカで提案され通過しつつあること、そして、香港における民主主義を求める闘いが続き、それによって先の台湾総統選挙における祭英文総統の勝利につながったことなど、アジアの自由と民主主義を求める闘いが前進しつつあることをまず指摘しました。しかし同時に、ここで私たちが安心してはいけない、引き続き、台湾を支援し、香港を支援する、そして中国の弾圧に抗議の声をあげつづけることが大切だと捕捉しました。

 そして、ここ日本でも、特にウイグルの弾圧についてマスコミも報道するようになってきた、これはもはや弾圧がひどく隠し切れない状態にまで悪化していることによるものだが、今の日本の報道は、現象だけにとどまっており、中国北京政府の過去の歴史、そしてこの弾圧の背後にあるものなどを深く掘り下げるところにはまだ至っていないと分析しました。

 一部では、ウイグルはひどい状態だが、チベットでは多少それに比べれば緩やかなのだろうか、という言葉を自分たちチベット人に語ってくる人が最近いるのだが、中国政府の対チベット政策が穏健になったわけでも人権状況が改善したわけでもない、まず、現在のチベットの置かれている状態について少ししゃべりたいと述べました。

 そして、今現在アメリカでは、2002年のアメリカ議会で採決されたチベット支援法が、昨年、これを充実化しようという試みが再びアメリカ議会でなされ、新たな法律が制定された、その趣旨は3つあり、一つはダライラマ法王の後継者の問題だと指摘しました。

 ダライラマ法王の後継者を選ぶのは、何よりもチベット人の権利であり、チベット人だけが選ぶ権利がある、そしてその原則をアメリカも支援するという姿勢を明らかにした。第二には、アメリカはチベットのラサにアメリカの領事館を作り、そしてチベット人の状態を調べたり、直接チベットを支援することを求める、という発表をした。もちろん、現在の中国政府がそんなことを認めるはずがないのだけれど、アメリカの原則として、中国側がラサにアメリカの領事館を置くことを認めない限り、同時に中国の新しい領事館をアメリカ国内に立てることは認めないという姿勢を明らかにした、これはとても大きな前進だとペマ会長は評価しました。

 三番目は、20年くらいもうアメリカはチベットに対し海外のチベット人を支援してきたけれど、これをさらに強化し、アメリカはチベット人団体だけではなく、チベットを支援している人たちにも積極的な支援をしていくべきだと決定した、これも大きな意義を持つとペマ氏は評価しました。

 これに対し北京政府は現在、チベットでは宗教弾圧をますます強め、東チベットのおそらくアジアでも最も大きな寺院の一つに対し、お坊さんたちが宿泊している施設をブルドーザーで破壊するような暴行を行って、修行に来ていたお坊さんたちの住む場所を無くして、それぞれ自分の住んでいた国や地域に帰りなさい、ということを強制している。この中にはチベットだけではなく、マレーシアやタイから来ている人たちもいるのだけど、その人たちも含め数千人がなくなく家や自分の地域に戻ったけれども、そこに残ることを決意した人たちは収容所のようなところに送られてしまった、そのような、まさに文化大革命時代に行われたようなことが今再び中国で行われていると述べました。

 そして、このような中国の暴挙に対し、幸いなことに欧米のメディアや政治家はある程度批判の声を上げるようになっているけれども、残念ながら日本においてはまだその傾向は薄い、正直、個々の政治家の立場を越えて、党として抗議しているのは日本では共産党だけだとペマ氏は指摘しました。そして、もちろんここには、共産党としては中国共産党と一緒に見られたくないという意識や、他の党が発言しないテーマを選んで発言しているという計算もあるかもしれないが、少なくともこの姿勢は認めたいと述べました。

 そして、チベット国内では、共産党が書くチベット人の家を番号化し、それぞれの家の家族構成をチェックし、おそらく携帯電話などを使っているのだろうけれど、お坊さん一人一人がどこに今いるかを監視するような体制を作り上げている。残念ながら、抵抗運動ができるような状態ではないところまで監視と抑圧がいきわたってしまっていると述べました。

 もちろんウイグルに対しても、去年、ニューヨークタイムズが入手した内部の秘密資料などを見ると、習近平が自ら現在の弾圧の指令を出していることが明らかになっている。実は習近平のお父さんは、文化大革命時代のウイグル弾圧を少しやり過ぎではないかと発言したことや、ダライラマ法王が最初に北京に訪れた時に頂いた時計を大切にしていたことなどが、むしろ罪として弾圧された。だからチベット人の中には、その息子の習近平が多少は民族問題に理解があるのではないかと期待する人もいたのだけれども、残念ながら、習近平が主席になって以後、徹底した残酷な弾圧を自ら指示していると指摘しました。

 しかし同時に、習近平は、香港に対してもまた国内問題に対しても、ある意味いら立っているように見える、何をやってもうまくいかないので焦っているようにも見える、と指摘しました。そして、経済面では、国営企業も破産したり、多くの労働者が給料未払いに抗議してデモを起こしている。北京政府の発表している数字はどうあれ、経済はよくない状態にある。少なくとも東チベットでは、給食とかもどんどん貧しくなっていて、中国全土でも、食料、例えば豚肉などが足りなくなって配給制になるのではないかといううわさまであると述べました。

 しかし、残念ながら、中国が困ったときに、しばしばこの日本が経済的に支援をしてしまうようなことがある。そしてトランプ大統領は、国連をあまりにも軽視していて、1950年以後、独立した国々が100以上あって、非同盟諸国として冷戦時代に米ソからある意味自立した地域を持とうとしてきたのだが、かってはインドがこのような諸国のリーダー的な存在だった。しかし今、インドもアメリカや日本を重視して、これら非同盟諸国を軽視する傾向が出てきた。そのすきをついて、中国がお金を使ってこれらの国々を自分の側に取り込んでいっていることにも、国連をどう評価するかは別として、もう少し考え、対応を考えるべきではないかと述べました。

 日本はかって、国連を世界政府のように高く評価し、80年代、日本経済の強かった時代に、お金のかかる国連のポストを、緒方さんのようにいくつか占めていたけれど、そのような地位を今は失っている。中国が南シナ海に人工島を作って基地を作っているようなことは、眼に見える中国の覇権主義だけれど、国連内部で重要なポストを占めようとしている、眼に見えない脅威についても考えるべきだと指摘しました。

 そして、中国政府は、現在「目に見えない闘い」に力をより注いでいる、まず、敵を弱体化させる、そして敵の中に潜入して敵の中に味方を作ることを行っていて、いわゆる「友好団体」「平和団体」の美名のもとに、そのような団体を作って外国のいろいろな分野に自分たちの味方を作っていく、そのような「トロイの木馬」を全世界に作ろうとしている、自由と民主主義の社会を破壊するためには、内部から壊す、という作戦を使っていると述べました。

 日本国内における中国のスパイ活動や、また日本国内の親中国団体の行動について、実は、アメリカのほうがより正確につかんでいるところがあって、アメリカから日本にそのような情報が伝わってくることがしばしばあるとペマ氏は述べたうえで、日本のマスコミも、このような現実をきちんと伝えない、日本のマスコミは、共産主義国家のようなねつ造や歪曲はあまりしていないのかもしれないけど、国民にきちんと真実を伝えるという作業においては、まるで国民を愚民と思っているのか、充分な役割を果たしていないとペマ氏は批判しました。そして、自分たちの活動は、武力ではなく言論なのだから、言論の場、眼に見えにくい場で、中国が何をしようとしているかを告発していかなければならないと述べました。

 そして、かって安倍首相が述べた「自由で開かれたインド太平洋構想」こそが、中国に対抗するための最も正しい道ではないかと述べ、この戦略が中国を孤立させる、その為には、アジアと日本、特にインドと日本の連帯が必要であると述べました。しかし、この1年ほど、少しその方針は弱まり、安倍首相の言葉からもインドという国名が消え、今は、中国との関係がよくなったとか、新しい中国との関係、などという言葉が増えているように思われると指摘しました。

 しかし、今大切なのは、アジアの最も古い民主主義国日本と、もう一つの民主主義大国であり日本との関係も歴史的に深いインドとが連携して、自由民主主義の価値観で独裁体制と対抗する姿勢こそが必要だと述べました。そして同時に、中国も様々な工作活動でこの連携を妨害しようとしている。しかし、かって安倍首相が提起した日本とインドとの連携という構想こそが、アジアの民主化にとって大切な役割を果たすだろう、アジアの人たちもそれを期待している、日本が経済力だけではなく、政治外交に大きな価値観を持って、アジアに対し働きかけようとしたことで、力づけられた国々や民衆がいたはずだと述べました。そして、安倍首相にも、かっての姿勢を取り戻し、現在の中国の習近平主席を、国賓で呼ぶようなことは考え直してほしいと述べ、講演を結びました。

 その後は、参加者との積極的な質疑応答がなされたのち、懇親会に移りました。今年最初の協議会主催講演会として、様々な問題が提起されたと思います(文責 三浦)

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