【第42回・講演報告】中国共産党政府によるモンゴル民族浄化政策について

9月20日、東京品川会議室にて、アジア自由民主連帯協議会主催の講演会が「南モンゴル民族浄化政策の現状」と題して開催され、約40名の方々が参加されました。講師はクリルタイ(世界南モンゴル会議)副会長のジャルガル氏、以下は講演会原稿を掲載します(事務局)



9月20日講演原稿
中国共産党政府によるモンゴル民族浄化政策について

南モンゴルクリルタイ
チメド・ジャルガル

現在、南モンゴル問題は世界中に注目されている。9月12日に、東京で日本在住のモンゴル人を中心とした1000人デモが行われ、同時に関西で100人以上の南モンゴル人また日本人支援者が大阪に集まり、中国共産党政府によるモンゴル人同化政策に抗議活動を行った。  
他にも、8月28日に、南モンゴル人留学生数名が在日中国大使館の前で抗議活動を行い、中国政府によるモンゴル語教育廃止政策に抗議する声を挙げた。続いて9月2日に北モンゴル(モンゴル国)の留学生約10名が、同じく在日中国大使館の前で抗議活動を行った。これらの抗議行動で共通のスローガンは「モンゴル文化を抹殺するな」、「南モンゴル人はモンゴル人であって中国人ではない」というものであり、同胞である南モンゴル人を支援する姿勢を明確に示している。
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9月5日には、クリルタイ(世界南モンゴル会議)が中心となって呼びかけた抗議行動が、南モンゴル人、ウイグル、チベット、香港人なども参加する形で展開された。このように、南モンゴルにおける中国政府の民族浄化政策を反対する抗議活動は国際的な広がりを見せている。。
中国政府は今年9月1日から、南モンゴルにおいて第二類の双語教育を実行する政策を打ち出し、それを国家統編教科書の実施法案と呼んでいる。この政策は、モンゴルの子供たちに対し、幼稚園、小学校、中学校の段階ですべてにおいて、モンゴル語ではなく中国語で教育を行うというものだ。この法案が実施されれば、教職員や公務員も抗議の声を挙げた。モンゴル語を使う公務員たち全員が、この法案の元では将来職業をすべて失うことになるのだ。
さらに、モンゴル語排除によってモンゴル人社会は壊滅し、モンゴル民族は絶滅するに違いない。それで南モンゴル全域に、この第二類双語教育政策を拒否する抗議の声が広く挙がり、モンゴル学校の先生たちをはじめ、公務員、農民、牧民、学生まで署名運動を広げ、政府に陳情を行っている。しかし、中国政府はモンゴル人たちの意見を一切聞くことなく、陳情者を逮捕、抗議運動を弾圧している。
しかし、モンゴル人たちは屈していない。9月1日の学校始まる時期に当たり、親たちは子供を学校に行かせないという、非暴力的だが断固とした抗議行動を行っている。一部の生徒が学校に行ってしまったが、親たちは子供たちを取り戻そうと学校に押し寄せた。しかし、中国政府は武装警察を派遣し親たちを鎮圧している。

現在の状況

中国政府は南モンゴルの市町村の幹部や校長先生らにノルマを制定し、一定数の学生たちを学校に行かせるよう義務付けている。ノルマに達成できない場合、罰金または免職している。このような圧力により、校長先生や市町村の書記の何人かが自殺したという。
武装警察は学校を包囲し生徒たちを親に合わせない。学校の中に子供が泣き、門の外側に親たちが泣いている悲しい状況が続いている。また子供を学校に行かせていない保護者を罰金あるいは免職、銀行からの借り入れを禁ずるなどの、行政や経済面での圧力が駆けられている。また、中国政府の強制する共産主義的な規律や法律を学ばされ、それに抵抗して拘束された小中学生や親たちがいるほどだ。学生たちの中には、数人から数十人のグループが学校を脱走、山の中に隠れる事態も起きている。彼らは学校での恐怖に耐えられず、この実態を北京に行って訴えようとしているのだ。同時に、南モンゴルでは学校内に監視カメラが設置され、教師や生徒たちの言動を全て監視している。
現在の南モンゴルの状況は、現在の全土が収容所と化したウイグル、また文化大革命時期に南モンゴルで出来た「5・7幹部学校」、それに1940年ころにヒトラーのナチスが作り上げた強制収容所と、民族抹殺政策という点では本質的に変わらない。

中国政府によるモンゴル民族浄化

民族を定義するならば、それは共通の土地、共通の言語、共通の文化を有する人々の総称であるモンゴル語にはtulgin guban chulu という言葉があるが、かまどの三つの足という意味である。これは民族として構成し認識され、そして存続には土地、言語、文化はまるでかまどの三つの足のように、どれ一つ欠けても成り立たない。
 現在南モンゴル、中国政府の言い方では内モンゴル自治区では、8割が中国人、モンゴル人が2割にすぎない。なぜ南モンゴルにこれほど多くの中国人がいるのか?
現段階では正確な数字では示せないが、清朝が滅びる1912年ころ、南モンゴルではモンゴル人と中国人の割合は大体半々になっていたといわれる。勿論地域差があり、中国に最も近くて降水量の多い、いわば農作業が可能な地域に中国人が多数で住み、遊牧地域では中国人はほとんどいなかったとされる。
 清朝末期(1902年)に敷かれた新政(新しい政策)により、多くの中国人をこの地域に移住させ、続いて中華民国時期に、中国人軍閥らは、モンゴル地域を横領し中国人農民を入植させた。この時にモンゴル人社会に反漢運動が盛んになっており、当時は「何々旗王は土地を売り出した」といった言葉使われている。それは逆に、この時期には、既に弱体化してはいたが、モンゴル地域の土地所有権をモンゴル人が持っていたことを示唆している。
  1949年に中国共産党政府が成立してから、モンゴルに対して、決定的な民族浄化政策を実施した。
1、土地略奪
中国共産党はいわゆる無産階級専政を駆動させ、モンゴル人民族主義者や知識人を虐殺し、モンゴル人を恐怖支配下においた。1966-1976の十年間だけで当時モンゴル人人口の三割の人を拘束や拷問し、中に3万人以上のモンゴル人エリートを殺害した。
 内モンゴル自自区は共産中国より2年も前1947年に成立し、政府機関のトップがほとんどモンゴル人であった。中国共産党は「奪取政権」と言って、政府機関の職をモンゴル人の手から奪ったのだ。現在、南モンゴル政府機関に中国共産党の手先になる数少ないモンゴル人以外にほぼ全員が中国人である。
 また、「辺境を支援、辺境を建設」、「大躍進」から「西部大開発」などの政策を打ち出し、大勢の中国人を南モンゴルに移住させた。
 何度も修正した後の中華人民共和国土地法では「土地は国のものだ」と定めてある。よって、南モンゴルではモンゴル人たちが中国人から土地を借りて生きていると言うしかない。

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2、文化破壊
モンゴル文化と言えば、その神髄は遊牧文化にあり、モンゴル人の歴史は民族の血流である。
中国共産党政府は1960年代からすでにモンゴル人の遊牧を禁止し、定住放牧に切り替えた。それに草原開墾を広げ、食糧生産を推し進めた。それによって、砂漠化が進行し、深刻な環境問題を引き起こした。さらに、2000年頃から今日にかけて、南モンゴルにて多くの露天掘り炭鉱を開発し、地下資源を略奪している。
中国政府は金持になりGTPが世界二番目となったというが、一方、内モンゴル自治区が「模範自治区」とされ、この称号とともに、モンゴル民族は絶滅の危機に追い詰められたのである。モンゴル文化の精髄が破壊され、遊牧知恵も失われた。民族衣装、競馬、ブフ(モンゴル相撲)、モリンホール(馬頭琴)のほかに、滅亡寸前の縦書きモンゴル文字がまだ残っているが、他は殆ど残っていない。
また、中国共産党は政権を取ったとたん、モンゴル人の伝統的な仏教を禁止して、お寺を潰し、お坊さんたちを殺害した。それでも法律上は「宗教は自由だ」と書かれてある。しかし現在、習近平が「宗教の中国化」と強調しているが一体どういう意味であろうか。モンゴル人の場合では伝統的仏教を信仰してはいけない、中国共産党の政策を支持し習近平を謳歌するお寺なら認めるというのだ。これは中国憲法から見ても違法である。
学校ではモンゴル歴史を教えない。歴史を歪曲し、「モンゴル歴史は中国の歴史の一部だ」、「チンギスハーンは中華民族の偉大な皇帝だ」と宣伝している。

3、言語抹殺
中国政府は南モンゴルにて今年の9月1日から第二類双語教育を実施する政策を取った。内容としては内モンゴル自治区のモンゴル学校(幼稚園を含め)モンゴル語以外のすべての授業を中国語で教育するということだ。いうのが「双語教育」と言っているが、実質は単なる中国語で教育するということである。
今まで実施してきた第一類双語教育とは中国語以外のすべての科目をモンゴル語で教えることだ。南モンゴル全域の漢化された社会環境の中、モンゴル人子供たちは授業中だけモンゴル語を聞いたり話したりしている。いわばモンゴル語で教える授業だけがモンゴル人子供たちの母国語を学ぶ唯一のルートになっている。その結果、殆どのモンゴル人子供がモンゴル語でコミニケションできないのが現状である。このまま進めば近いうちに南モンゴルでモンゴル語が絶滅することは避けられない。モンゴル民族浄化を加速する目的である第二類双語教育政策の実行は阻止しなければならない。

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結論
上述した内容を検討すると、中国共産党習近平政権が南モンゴルで実施しようとする第二類双語教育政策は、単なるモンゴル民族浄化を目的としていることだけでなく、その背後にはさらに野蛮な狙いがあると考えられる。
習近平の政策は、「チベット人弾圧」、「香港人弾圧」、「ウイグル人強制収容所」、「モンゴル人文化的ジェノサイド」また「台湾問題」「尖閣諸島問題」「南シナ海問題」などの弾圧と覇権主義に根差しているが、最も顕著なのは「一帯一路戦略」である。
習近平が、地球の経済共同体をつくるためと称している「一帯一路戦略」の本当の目的は全世界を侵略することに過ぎない。これに、世界各国の人々は気づきつつある。習近平の言う地球共同体=中国人による世界支配体制を作るために、まず国内を同一しなければならない。それで言語の同一、文字の同一、宗教の同一、思想の同一を目指しているのだ。その目的は、中国全体が一つの中華民族となり、一つの習近平思想の下で全世界を同一することである。いわば中国共産党習近平政権は、独裁共産主義と中華思想を無制限に暴走させているのである。

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