【主催講演会報告】イリハム・マハムティ「東トルキスタン(ウイグル)で何が起きているのか」

アジア自由民主連帯協議会主催講演会報告

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 10月25日午後2時より、品川区のきゅりあん会議室にて、イリハム・マハムティ当協議会副会長による講演会が開催されました。参加者は約40名。
 まずイリハム氏は、ウイグルの近代史についてから講演をはじめ、ウイグルを支配していたのは満州人による清帝国であって、これは現在の中国政府とは直接の関係はない、そもそも日本で差別語とされている「シナ」という言葉は、英語の「チャイナ」同様何ら差別の意味合いはなく、何度も王朝が後退し様々な民族が支配してきた中国を一連の歴史に基づく国家とみなすこと自体が疑問があると述べました。

 その上で、近現代の時代はまず清帝国から派遣された役人が、現在の東トルキスタン(ウイグル)地域を支配していたが、1933年と44年、東トルキスタンは二度の独立を果たしており、前者は「東トルキスタン・イスラム共和国」であり、後者は「東トルキスタン共和国」であったことを指摘しました。
 イリハム氏は、「前者はイスラム教を基本とした国づくりを目指し、当時のソ連が、自分の領土内のイスラム教徒にもこれをきっかけに独立の気運が高まることを危険視して潰してしまった。後者は、逆にソ連の影響下にあった左派の指導者が建国の中心となったが、これもまた、旧ソ連の圧力とヤルタ会談による大国の取引きによって潰されてしまった。そして、中国政府は現在まで『この地域は平和的に『解放』された』と言っているが、実際に行ったのは軍事的制圧だった」と説明しました。
 
 中華人民共和国による制圧後、知識人、富裕層、信仰者など、ウイグル民衆に多少なりとも影響力を持つ人はすべて弾圧され、1960年代は文化大革命によってさらに酷い弾圧が行われた。その理由として、ウイグル人たちは「汎トルコ(突厥)主義者」であり、民族分裂主義者であるという名目がつけられ、それは現在のウイグル全域を収容所化した政策まで直結しているとイリハム氏は指摘しました。
 
 第二次世界大戦中、ユダヤ人に対する強制収容所や、ソ連での政治犯収容所などの悲劇が起こり、人類は二度とこのような過ちを起こしてはならないと宣言されたはずなのだが、今、ウイグルで起きているのは、ナチス政権下のユダヤ人と同じ悲劇だとイリハム氏は強調しました。
 
 中国政府は、ウイグル人を今「教育」していると言っているが、中国側が公開した写真や資料を見るだけでも、現在収容所に入れられているウイグル人は、老人も、また大学を卒業した人も多く、「再教育」も「教育」も全く必要ではない。中国政府の言い分はすべて嘘だとイリハム氏は強く批判しました。そして、今ウイグル人は、入所の理由も、いつまで収容所にいなければならないのかの景気もわからない状態で強制収容されている、その中で不法な臓器売買の被害に遭ったり、精神的、肉体的な拷問や虐殺を受けていると指摘しました。
 
 また、大人だけではなく、子供までも強制的に「施設」に入れて、そこでウイグル人としてのアイデンティティを奪い、中国人になるように洗脳している、子供たちの中には、中国の暴力的な考えや、ウイグル人であることは恥であり否定すべきだという事すら教えられており、彼らが成人したら、逆に同じ同胞のウイグル人を攻撃する側に回るかもしれないと、洗脳教育の恐怖を指摘しました。
 
 そしてウイグル人女性について、収容所に入れられた女性は、正体のわからない薬を打たれたり、避妊手術を強制されたものもいる、また、収容所の外で暮らしている女性も、しばしば移民してきた中国人(漢人)と強制的に結婚させられている。中国政府はウイグル人と結婚した漢人には支援金を出し、また、仮にウイグル女性が結婚を断れば、家族が収容所に送り込まれる危険性があることを説明。イリハム氏は、本来喜びに輝いているはずの結婚式場のウイグル人女性の写真を示し、悲しみや恐怖におののいているとしか見えない表情を紹介しました。
 
 さらにイリハム氏は、自分たちウイグル人が主張しているのは実際に収容所を体験した人々の証言、またBBCをはじめとする信頼できる報道によるものであり、そこでは「50平方メートルもない狭い部屋に50~60人が拘束されていた。男性は右側、女性は左側にいた」「全員、『フォー(4)ピース』と呼ばれるものを身に着けていた。頭にかぶる黒い袋、手錠、足かせ、手錠と足かせをつなぐ鉄チェーンだ」といった証言が伝えられていると紹介しました。
 
(参考資料)
ウイグル族のモデル、中国の収容施設から動画 BBCが入手
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-53659893
 
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 そして、収容所内部を体験した元囚人たちのうち、釈放された人のほとんどは、外国籍を有していたウイグル人であり、彼等、彼女らも出所時、内部のことは一言もしゃべらない様に誓約書にサインさせられている。しかし、沈黙を続ければ、そこにいたほかの囚人たちが殺されているのを見捨てることになるのだから、どんな圧力や暴力にも負けずに証言しているのだと、イリハム氏は証言者たちの勇気を讃えました。
 
 そして、中国はあくまでこの収容所を「教育施設」と言い張っている、つい数日前も、中国の外務省報道官趙立堅は、ウイグルでの人権弾圧を「荒唐無稽」と述べ、ネットに流れている収容所写真を「トルファンの役所」とまで強弁したが、それならAFPの報道による「自治区ホータン(Hotan)の当局は今年、警棒2768本や電気棒550本、手錠1367個、催涙スプレー2792缶など、教育とはほぼ無関係な物品を数度にわたって購入している。」という事実はどう解釈すればいいのかと、イリハム氏は、なぜ教育のために、こんな武器が必要なのかと中国側の虚言を批判しました。
 
(参考資料)
催涙ガスにスタンガン、手錠…中国ウイグル収容施設の実態 180か所超存在
https://www.afpbb.com/articles/-/3194615
 
 そして、ウイグルでは、今年もノーベル平和賞候補にもなったイリハム・トフティ(彼は中国政府に、中国の憲法でも認められている各民族の当然の権利を認め、共生社会をつくることを主張しただけで投獄された)をはじめ多くの知識人が逮捕され、中には中国政府の指示でかつてコーランをウイグル語に翻訳した学者もいる、彼は80歳を超える年齢で収容所に入れられてそこで亡くなった、そんな人に何の教育が必要なのかとイリハム氏は指摘しました。
 
 しかし、イリハム氏は、今世界は抗議の声を上げ始めている、私が最も共感したのは、アメリカのボンペオ国務長官の発言で、2018年、国連でウイグルの問題をここまで明確に発言してくれた政治家は自分の知る限りいなかった。この演説から、最近のウイグル人権法案制定、そしてアメリカでは9月23日、ウイグル強制労働防止法案が提出されている、これはウイグルにおいて、強制労働などウイグル人の犠牲の上に成り立つ企業行為をも批判するもので、日本企業も、ウイグルでの経済活動が現在の弾圧と強制収容所の中行われている危険性についてぜひ考えてほしいし、仮に中国への経済支援や交流が独裁体制の民族絶滅政策を結果的に支援する者であった場合、必ず日本国はいつかその責任を問われることになる、そうなる前に、ぜひ、日本は対中国外交や対中国経済関係を再考し、改めてほしいと力説して講演を結びました。(文責:三浦小太郎)
 
米国務長官、ウイグル人拘束めぐり異例の中国批判
https://www.afpbb.com/articles/-/3190586
 

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