第10回 アジアの民主化を促進する東京集会 報告

第10回 アジアの民主化を促進する東京集会 報告

 11月18日、参議院議員会館にて午後2時より、第10回アジアの民主化を促進する東京集会が開催されました。参加者は約60名。開場はほぼ満員となりました。



第一部
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 第一部は、まず、加瀬英明協議会名誉会長が登壇。先日、自分のネット番組に香港の若者が出演した時、彼がまず「こんにちは」という普通の挨拶をしたときに、今は本当に香港が大変な時だ、「大変です、大変なことになっています」ということをまず言ってもらいたいと語ったことから始め、アメリカ大統領選挙の混乱、中国の覇権主義など、まさに今世界が危機にある認識を持つべきことを指摘しました。

 その上で、香港、ウイグル、チベット、モンゴルなどアジアで今起きている人権弾圧を、ローカル、その地域の問題としてとらえるのではなく、何よりも自分たち自身の危機であるという認識が大切で、その為にもこの集会でのアジアからの訴えを自分たちの問題として受け止めてほしいと語りました。

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 続いて、この会場を借りてくださった青山繁晴参議院議員が登壇しました。そして、自分はジャーナリスト時代、実は中国には何度も行き、向こうの要人とも話している。そこでは常に本音を言うようにしていた。例えば、人民解放軍という言葉は自分は使いたくない、あれは抑圧軍であるとか、中国人は一人一人が自立していない、そこが弱点であるなど、相手を怒らせるようなことを常に言ってきた。しかし、そのような議論をしてこそ、実はお互いが理解し合えるし、また妥協点も逆に見いだすことができる。日本外交の一番よくないのは、最初から一致点を見つけようとしてこちらが先に妥協案を出してしまうこだと述べました。

 さらに、自分が今は現役の政治家として、中国共産党の人権弾圧や覇権主義と闘う時も、まず、味方を増やすことを考える。自民党の中にも、正直、親中派の政治家もいる。安倍総理にしても、例えば習近平を国賓待遇で招くという発想ははっきり言って間違っていた。しかし、まず中国に対し真摯に対峙しようとする味方を増やして、自民党の中から物事を変えていかなければならない。このアジアの民主化の運動でも、味方を増やすこと、それが何よりも重要だと述べました。

 ここで、協議会副会長の西村幸祐より、安倍晋三前総理からのメッセージが代読されました。内容は以下の通りです。

【メッセージ】
本日ペマ・ギャルポ会長の下、第10回「アジアの民主化を促進する東京集会」が盛会に開催されましたこと心よりお慶び申し上げます。
「自由」「民主主義」「法の支配」普遍的価値を共有する国々と共に、この価値観が広くアジアに行き渡るよう日本としても努力をしていかなければならないと考えております。
普遍的価値の共有こそが我が国が目指す「自由で開かれたインド太平洋戦略」であります。
その観点から、この集会が意義あるものとなることを期待しております。

衆議院議員
安倍 晋三


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 そして、会場に駆けつけてくださった亀井亜紀子衆議院議員から、現在、超党派で、マグニツキー法(グローバル・マグニツキー法、人権侵害を行なっている外国政府の責任者に対して、ビザ発給を拒否したり、資産凍結をする権限を政府が持つ)を制定するために動いていることを報告し、中国だけではなく、独裁体制全てに対しての制裁が可能であるような法律を作りたいと述べました。

 続いて、石平氏の基調講演が行われました。
 まず、石平氏は、中国を決して侮ってはならないとして、まず第一に、今回の感染症に対し、中国がある程度抑え込みに成功した面があると指摘しました。その上で、その理由はあえてい言えば独裁体制だからこそ成功したと、少なくとも中国はそう考え、それは世界の独裁国にも影響を与えている。確かに、このような感染症が起きた時に、独裁体制のほうが、人々の人権など全く考慮せずに、強引なロックアウトも、家から一歩も出さないなどの強硬な措置もとることができる。中国はある意味独裁権力の強さを示したことも認めざるを得ないと述べました。

 第二に、今回のアメリカ大統領選挙とその後の混乱に触れ、これまでアメリカの民主主義派、選挙が終われば、敗れたほうが勝者に電話をして敗北を認め、そしてきちんと政権を交代するという健全さを示していた。しかし今回の選挙では、トランプを勝たせたくないということから民主党側がかなり強引でインチキともとれる行動を行った可能性があり、その後の混迷がずっと続いている。正直この姿も、中国からは、民主主義は決して優れたシステムではない、かえって混乱を招き不正が起きやすいのだという政治宣伝に使われていると述べました。

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 その上で石平氏は、民主主義とは、わたしたち国民一人一人が自覚をもって守っていかなければすぐに危うくなってしまう政治システムであり、その意味では、中国の脅威以上に、民主主義国家の国民こそが真摯に自由と民主主義を守る意思を持たなければならないし、常にシステムに問題がないかチェックしていかなければならないと指摘しました。しかし同時に、だからと言って「自由民主主義は独裁体制に必ず勝つ」という確信を疑う必要はない、現に習近平体制は、その独裁制と傲慢さから、世界のあらゆるところで反撥と批判を受け敵を作り続けていると述べました。

 その一つの例として、ドイツの国連大使が、この10月6日、39カ国を代表して、中国の人権問題を批判する声明を発表、そこでウイグル人およびチベット人の権利を尊重するよう求め、香港の政治状況への懸念を表明したことを石平氏は紹介し、この39カ国はEU加盟国、および日本、カナダ、ハイチ、ホンジュラス、オーストラリア、ニュージーランドが含まれていること、1年前にイギリスが起動用の文書を起草した時には署名国は23であり、確実に中国への批判は増えていることを指摘、さらに、親中派とみなされていたドイツすらも今は中国の人権問題を批判していることを指摘しました。

 この原因の一つは、EUをこの9月に中国の王殻外相が訪問した際、台湾を訪問したチェコのミロシュ・ビストルチル上院議長を脅迫するヤクザまがいの発言(「自らの近視眼的な行為に重い代償を払うことになろう」)をしたことなどにあると石平氏は指摘し、習近平政権のこのような態度は世界では受け入れられるはずがなく、今はインドとも対立している、必ず追い詰められていくだろうと述べました。

 そして、中国は確かに侮ってはいけない、簡単に崩壊する国ではないと認めた上で、かってソ連崩壊直後にフランシス・フクヤマが、「歴史の終わり」を宣言し、これからは世界が自由民主主義の価値観に収斂していくと述べたことをあげ、それはあくまでヨーロッパのことで、アジアでは今でも共産党独裁政権が中国や北朝鮮でも続いている、もしかしたら、あと20年、30年くらいはかかるかもしれないが、自由民主主義がこのアジアでも勝利し、中国も将来的には分割され、中国の各民族が独立するだけではなく、より地方の省も自立していけるような平和で民主的なアジアの実現を目指して頑張っていこうと講演を結びました。



第二部

 休憩後、第二部では、アジア諸民族の訴えが、約3分ほどの短い時間でしたが行われました。

125860481_3394040817488467_1152228787403943423_n まず、ウイグルのイリハム・マハムティ(世界ウイグル会議 東アジア、太平洋地域全権代表)氏が登壇。先ほどの石平氏の講演を受けて、自分たちウイグル人は、今、収容所に次々に入れられ、不妊のための薬まで女性は投薬されている危険がある。この2,30年で確かに中国は崩壊するかもしれないが、その間に自分たちウイグル人はいなくなってしまう。そして、日本国民に向けて、日本は決してこの問題の部外者ではなく、これまで経済的な支援や交流、科学技術の提供などで、事実上中国独裁政権を助けてきてしまったこと、今もその面は続いていることをどうか考えてほしい、経済的利得だけで中国と付き合うのは危険だ、と訴えました。

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 続いてモンゴルのオルホノド・ダイチン(南モンゴルクリルタイ幹事長)氏が登壇。今、モンゴルで母語が奪われている状況にあることを訴えると共に、自分たちモンゴル人は、基本明るい、ある意味素直な民族で、どんな厳しい状況でも歌を忘れず、今回の抗議行動においても歌を歌って抗議している映像が出ている。それは弱点かもしれないけれど、同時に、今回の母語を守る運動に対しては中国国内だけではなくモンゴル国を含む世界中のモンゴル人が立ち上がったことによって、新しい運動を展開していく希望が生まれてきたことを述べました。

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 続いて、チベットのチュイデンブン(アジア自由民主連帯協議会理事)氏が登壇。氏は、今年数年をかけて発表した、チベットのための憲法草案を発表したことを述べた後に、現在の中国憲法でも認められているはずの民族の自治権が全く失われていることを述べ、この状況を改善するためにも、デモや抗議だけではなく、新しい法律を提案することも必要だと思って執筆した、ぜひ、自由民主主義と法治の国日本の政治家や有識者の方にもご意見を聞かせてほしいと述べました。

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 ここで、民主中国陣線副主席の王戴氏のメッセージが司会により代読され、続いて、王明理(台湾独立建国聯盟日本本部委員長)氏が登壇。今回、感染症に台湾が打ち勝ったこと、それも独裁政権のような強引なやり方ではなく、国民一人一人の自覚と理性によって打ち勝ったことを報告し、このような民主主義と国民性を作り上げることに大きな功績があったのは、やはり故李登輝総統の業績であることを述べました。そして、台湾は、中国共産党が作り出した中華人民共和国とも、また、侵略してきた国民党の中華民国とも何の関係もない、自立した歴史と文化を持つ国であり、そのことをこれからも貫いていきたいと述べました。



(参考)王明理氏の当日配布したメッセージ
台湾は中国の一部ではない・台湾はアジアの安全保障の要である
台湾独立建国聯盟日本本部 委員長 王明理

 台湾人から申し上げたいことは二つ、「台湾は古来より中国の一部ではない・台湾人は中国人ではない」ということと、「台湾は安全保障の要である」ということです。
 安全保障の面から申し上げると、台湾は日本の砦、アジアの砦の役割を果たしています。台湾の為だけでなく、日本やアジアの為にも、台湾が自由民主主義国家として存在する必要があるのです。
 1972年以来、台湾は国際社会から締め出されている状態で、孤軍奮闘しています。孤立させたうえで、中国はじわじわと台湾を侵略して自分の領土に組み入れようと計画しています。
 台湾が国連機関、経済協力機構の一員となることが、台湾を守り、ひいては日本やアジア世界の自由と民主主義を守ることになるのです。そうされては困る中国が、台湾の国際社会との交流の全てにストップをかけていますが、中国の台湾イジメを見て見ぬふりをしていれば、そのうち、日本も大変なことになるでしょう。
 中国が台湾を手に入れたら、台湾島が中国の軍地基地となり、軍事力を背景に、常に日本や各国に睨みをきかせ、ますます全ての面で中国の要求を通させようとするでしょう。
 チベット、ウイグル、モンゴル、香港の人々が苦しんでいる人権侵害の状況が、次は日本を襲ってくるのです。経済的利益を追って正義を忘れていると、経済的不利益どころか、国の根幹を揺るがす取り返しのつかない状態になってしまうかもしれません。
 そうならない為に、日本はじめ、世界中の人々が台湾を守ることに舵を切り替えて下さるよう切にお願いします。
 しかし、又、台湾はアジア諸民族の希望でもあります。
 台湾は1945年の終戦後から、不当にも中国国民党の支配下に置かれ、今の中国共産党の一党独裁体制に勝るとも劣らない非情な一党独裁支配を受けました。他民族による一党独裁、戒厳令下の弾圧を長期に亘って受け続け、自由な言論や行動を奪われていましたが、長い年月をかけて少しずつ民主化の方向へ進み、とうとう、静かに一党独裁体制を覆し、自由で民主的な国に生まれ変わることができました。今年亡くなった李登輝元総統による国民党内からの改革がそのエンジンであったことは間違いありませんが、そこに至るまでの台湾人のコンセンサスを作ったのは、海外に出た台湾人のたゆまぬ努力の成果でした。今年は、新型コロナウイルスに対する賢明な対策で、世界中に今の台湾の国力の高さを示すことができました。
 ですから、香港、ウイグル、モンゴル、チベットの活動家の人たちも、協力を強め、あきらめずに努力してゆけば、いつか日の光が差すと信じています。とにかく、諦めては何も生まれてきません。自分の世代で実現できなくても、次の世代で実現できるかもしれません。
 そのために、お互いに頑張って参りましょう。
 日本政府および日本の皆様、私たちアジアの諸民族に活動の場と自由を与えて下さって本当に有難うございます。日本の皆様の応援が私たちの頼りです。今後とも、どうぞよろしくお願いします。(終)


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 続いて、香港のケン・マー(香港建国聯盟 広報官)氏が登壇。香港の自由と民主主義は、もはや、独立以外では守ることができないことを強調し、そして香港独立を目指す旗を紹介しました。それは、自由と民主主義の象徴を示すもので、まだあまり現場では現れていないけれど、中国政府からの自由、独立なくして民主主義なし、という決意を表すものだと明確に述べました。
 続いてもう一人香港から、香港民主化、民主主義を守れと訴えているウイリアム・リー(Stand With Hong Kong)氏が登壇。国連人権委員会でスピーチをする機会に今年恵まれたが、そこで、国連の場で中国がかなりの発言権と影響力を持ち、自分たちに都合の悪いウイグルなどの訴えを封じ込めようとしていることが分かったと述べ、国連の実情の問題点を訴えました。そしてこの12月25日から、香港デモの渦中に飛び込み撮影された28分間の短編ドキュメンタリー『香港画』が、アップリンク渋谷・アップリンク吉祥寺にて公開されることを紹介し、ぜひ見てほしいと訴えました。
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 最後に、ベトナムから、グエン・ハー・ギオック(ベトナム革新党)が登壇。滅ぼされたベトナム共和国(南ベトナム)の旗を掲げ、自由と民主主義の国だったベトナム共和国が、ソ連、中国に支援された北ベトナムに敗れ、滅ぼされたこと、しかし、自分たちはこの国があったことをこうして訴え続けていると述べました。(グエン・ハー・ギオック氏はベトナム難民であり、先日、模範難民として表彰されています)

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 ここで、アジア自由民主連帯協議会から、今年のアジア人権賞が、母語を守るために闘い続けているすべてのモンゴル人に向けて授与され、表彰状がペマ・ギャルポ会長からダイチン氏に渡されました。


 そして、協議会広報局の古川郁絵より、以下集会決議文が朗読され、拍手をもって採択されました。



第10回アジアの民主化を促進する東京集会 決議文
このアジアの民主化を促進する東京集会も、今年で10回目を迎えた。しかし、アジアの民主化と民族自決権確立への道は未だ遠いと言わざるを得ない。
中国、北朝鮮、ベトナムなどの国ではいまだに共産主義政党の一党独裁政権が存在し、とくに中国共産党の国内における人権弾圧、民族絶滅政策、そして臓器売買などの国家犯罪は悪化の一途をたどっている。
民主運動家や法輪功には残酷な弾圧が加えられ、ウイグルでは全土が強制収容所と化し、チベットでも文化大革命時代同様の宗教弾圧と収容所体制が復活し、また南モンゴルではモンゴル語抹殺政策が強行されている。香港においては民主派議員が不当逮捕され、市民・学生の抵抗は暴力で押さえつけられている。
このような弾圧を座視することは、私たち自由民主主義体制そのものの危機につながることを忘れてはならない。現実に、東シナ海においては日本の主権が中国の不法な領海侵犯によって侵害され、南シナ海全土を中国の海とみなすような国際法違反の侵略行為が行われている。
中国が今推進する一帯一路政策とは、全世界を中国型の独裁体制の支配下に置くことであり、私たちが中国国内の人権弾圧を看過し、その覇権主義と侵略に打ち勝たない限り、私たちも今日のウイグル、チベット、南モンゴル、香港と同じ悲劇に見舞われてしまうだろう。
私たちは自由と民主主義、そして民族自決権の価値を共有するすべての諸国・諸国民と連帯し、その価値観をアジアに拡大することこそが、この日本国の自由民主主義を守ることであり、同時に世界の平和に貢献することを確信し、その為に行動していくことをここに誓う。

2020年11月18日
第10回アジアの民主化を促進する東京集会 参加者一同


 最後に、ペマ・ギャルポ協議会会長より、閉会の言葉が述べられ、ペマ会長は、こうして10年間集会を地道に続けてくることができたけれど、本当のことを言えば、このような集会が必要のない世界になることが一番よいことであること、しかし、現状はやはり、自由と民主主義のために運動していかなければならないと述べました。

 そして、民主主義は、時には間違った選択をすることは確かにあるかもしれない。しかし、時間とともにそれは正されてゆく。例えばかって、社会党には土井たかこさんのある種のブームがあって、総理大臣にもなるかという勢いがあったが、今は、ただ一人の議員のみの政党となった。それこそが民主主義であって、独裁体制には決して起こりえないことだと述べ、さらに、今日わずかな時間しか訴えられなかったアジアの人々は、本当は一人1時間でも2時間でも話したいことがあり又その内容もある、協議会でもそのような講演会は今後も主催していくし、もし地方の皆さんでもお話を聞いてみたいという方がおられれば是非企画してくれれば、いくらでも講師を派遣しますと述べ、午後4時半、集会は閉会しました(文責:三浦)

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