【第45回・動画および報告】取材と宗教から見るミャンマー問題」講演会報告(上)


2月27日、東京四谷の会議室にて、アジア自由民主連帯協議会主催講演会「取材と宗教から考えるミャンマー問題」が開催されました。参加者は約30名、まず、当日登壇したラエイマウン氏の講演内容を、事前に直接氏にお聞きした内容を加えて再構成の上報告いたします。


ミャンマーの民主主義を守らなければ東南アジアは中国の支配下に陥る

ラエイマウン

 今回の祖国ミャンマーの軍事クーデターの知らせを聞いた時、最初に感じたのは何とも言えない哀しみと怒りでした。私のおじいさんの世代は、ネ・ウィンの軍事政権の下で苦労しました。私の御父さんの世代も、やはり軍事政権下で、1988年の民主化運動が起きたけれど、その後もすぐ軍事クーデターが起きて、アウン・サン・スーチーさんが軟禁された。その後、2010年にやっと民主選挙ができる状態になって、私たちの世代、そして私たちの子供の世代以後は民主主義のミャンマーで暮らしていけると思ったけれど、今回再び軍事クーデターが起きて、このままでは、私の孫の世代も、軍事政権下で暮らしていかなければならない。それを思うと本当にたまらないです。

 今回、軍は、2010年の総選挙でNLDが大勝したことについて、不正選挙だったと言っています。私個人の考えですが、ミャンマーはまだ民主的な選挙の歴史が短いから、日本のように選挙のシステムが完成されているわけではないから、多少のミスや間違いはあったかもしれません。しかし、今回の選挙の結果が変わるほどの大きな不正があったはずはないし、その証拠は全く出てきていません。日本財団の笹川氏も選挙結果をチェックし正当だと認めています。

 もちろん、軍が、選挙管理委員会に投票結果をもう一度チェックすることを求めた時、私としては、管理委員会はそれを断らずに、メディアの前でもう一度選挙結果を調べてもよかったと思います。しかし、そのようなことで、軍のクーデターがそれで正当化されることはありません。2008年の、まだ軍事政権だった時に制定されたミャンマー憲法においても、今回の軍のクーデターは全く正当化できません。

 今、ミャンマーでは市民が立ち上がってクーデターに抵抗しています。危険な状態ですが、今、正義を貫き、民主主義を守るためには軍政と戦うしかありません。すでに亡くなった人もいて、その数もはっきりとはわかりません。しかし、今は芸能人や、公職に就く役人まで、軍への抗議デモに次々と参加しています。そして、ミャンマーの諸民族も、ほとんど軍事政権に反対だという点では一致しています。

 そして軍事政権は、今、刑務所から犯罪者を釈放してお金を渡し、彼らに軍事政権支持のデモをさせたり、また貧乏な子供たちにお金を出して軍を応援させたり、クーデターに反対する民衆を襲わせたりしています。また、夜はインターネットを含む情報が遮断され、その間に何が起きているかわかりません。

 このクーデターの背後に中国がいること、少なくとも応援していることは確実です。中国の外務大臣がミャンマーのクーデター前に訪れていますが、そこでもクーデターを支持したという話が出ていますし、実際、ミャンマーの経済は軍関係者に今も握られていて、それと中国の関係はとても深い。そして重要なのは、もし今回のミャンマーのクーデターが成功すれば、同じように、中国の影響の強い軍事政権が、東南アジアに次々と出現していくでしょう。

 そうならないためには、国際社会が、このクーデターにもっと反対し、ミャンマーの民主主義を応援してほしい。日本政府にもそれはお願いしたいです。これまでの日本政府のミャンマーへのODA支援などには本当に感謝していますが、今こそ、日本はアジアに影響力があるのですから、今、スーチーさんの釈放を軍事政権に要求してほしい。日本国民にもぜひ民主主義を護るために応援してほしいとお願いします。

 残念なのは、日本のジャーナリストの人で、スーチーさんのことを批判する人がいます。言論は自由ですが、ミャンマーの民主化を実現するにいは、スーチーさんという存在は絶対に必要な人です。スーチーさんにも欠点はもちろんありますが、しかしミャンマーの民主主義を護るためには、今、スーチーさんやNLDを応援するしかありません。

 最後にもう一度申しますが、私はせっかくこれからミャンマーが民主主義国として発展し、豊かな国になるチャンスがあったのに、それがすべて崩されていく、再び軍事政権に戻って世界から孤立してしまうことが悲しくて仕方がありません。この軍事政権を倒し民主主義を復活させなければ、東南アジアの諸国が次々と軍事クーデターが起きてしまう危険もあります。今は、このクーデターを失敗させるために、国際社会の応援を本当にお願いしたいと思います。 (文責 三浦)

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