こちらは4/2に追記された記事です。
アジア自由民主連帯協議会報告
チベットは今、どうなっているのか
講師:ペマ・ギャルポ
3月21日、東京四谷の会議室にて、当会会長ペマ・ギャルポによる講演会「チベットは今どうなっているのか」が開催されました。参加者は約30名。
まずぺマ会長は、本来、今日ここでは、チベット人僧侶ラマ・ウゲンが、チベットの現状について語る予定だったけれど、彼はチベット仏教講座があるため参加できなかったことを謝罪しました。
その上で、現在、チベット亡命政府のホームページを見るだけでも、「国家機密を漏らした」という罪で、羊飼いや、旅行会社のガイドなどが逮捕され、殺された人もいることをペマ会長は報告しました。今のチベットでは、厳しい弾圧下、大きなデモや抗議行動などができるような状況ではなく、その中で多くの人々が弾圧に苦しんでいることを指摘しました。そして、ヌシ・ワンギャル、チャンパ・ツェリン(元サッカー選手、反政府行動の罪)、リゲ・ニマ(遊牧民、釈放後、刑務所での拷問の後遺症で3月死亡)、クンチョク・ゲンバ(観光ガイドだが外国人に国家機密を漏らしたという罪で逮捕)などの実例を挙げました。
(参考資料)チベット人ツアーガイドが、チベット自治区ディル郡の刑務所における負傷で死亡(ダライラマ法王日本代表部事務所ホームページより)
中国の刑務所で21年の刑に服していたチベット人のツアーガイドが、今月初め、刑務所における負傷のために死亡したとヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が報じた。
クンチョク・ジンパ氏(51歳)は、2月6日、刑務所から移送された後、ラサに所在する病院で亡くなった。クンチョク・ジンパ氏は、脳出血を患い、麻痺していた。ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、クンチョク・ジンパ氏は、2013年11月8日、家族さえ知らされないまま中国当局に拘束された。2013年、地元のチベット人が、すべての家から中国国旗を掲げることを余儀なくされた、中国による強制的な中国国旗掲揚キャンペーンに対する一連の平和的な抗議の後、数百人のチベット人がディル郡から拘束された。クンチョク氏は、拘束された人の一人だった。その後、同地域における抗議活動に関する情報を外国メディアと共有したことで、国家機密を漏えいしたとして有罪判決を受け、懲役21年の判決を受けた。中央チベット政権首席大臣のロブサン・センゲ首席大臣は、深い悲しみと懸念を表明し、「中国の刑務所における拘禁中の拷問と虐待により、クンチョク・ジンパ氏が亡くなった悲劇的なニュースは、19歳のテンジン・ニマ氏が、同様に死亡したわずか1ヶ月後に報じられた。 良心的な在監者に対しての中国による広範な拷問行為は、世界に知られていないわけではない。チベットに対する中国の支配に抵抗したとして、何百人ものチベット人が不法に拘束された上、拷問を受けている。」と述べた。また、ロブサン・センゲ首席大臣は、「国際社会と国連人権専門家は、こうした中国政府による恣意的な拘禁、正当な手続きによらない有罪判決、チベット人に対する拷問や殺害行為に介入し、調査しなければならない。」と言及し、国際的な介入の重要性を訴えた。(中略)
先月、カルゼ(中国名:甘孜)セシュル郡ザ ウォンポ出身で10代の僧侶だったテンジン・ニマ氏は、中国当局から激しい暴行と拷問を受けた後、1月19日に死亡した。
2020年8月、ナクチュ市ドリル郡出身、3人の子の母親で36歳のラモ氏は、中国当局による拘留中の拷問を受け死亡した。
そして、この2月に中国政府は、チベット人70万人に職を与えると述べたが、これは逆に言えば、ウイグルでも行われている「職業訓練センター」、つまり強制収容所を作り出すことを意味しているのではないかと思われるとペマ氏は警告しました。
また、先の全人代において、50兆円の予算を投じてチベットを開発しダムをつくること、チベットを流れていく7つの川、それはアジアの多くの国々を潤しているのですが、そこに水力発電所を作ることが予定されており、これもまた中国の水資源を奪う外交と、環境破壊をもたらす危険性をペマ氏は指摘しました。
さらに、四川省や青海省の、本来チベット領土である地域に広大な動植物の保護地区を作ることを中国は発表しているが、人権をここまで無視する中国政府が動植物のことまで考えているとはとても思えない、おそらくその地域に住む人間(農民や遊牧民)を追放し、そこに宇宙開発基地を作ろうとしているのではないか、事実、中国政府は、世界最大の展望台建築、ロシアと協力しての宇宙ステーションなど、様々な宇宙における軍事展開について考えていることをペマ氏は指摘し、中国の脅威を訴えました。
その上で、2008年に東京新聞が作ってくれた、平野聡(「清帝国とチベット」等の著書のあるすぐれた研究家)先生が監修した、中華人民共和国全土の地図をペマ氏は示し、それによれば、チベット、モンゴル、ウイグルなどを除けば中国の「本来の領土」がいかにごく一部に過ぎないかが分かる、しかし中国は、「民族」問題を逆に領しているのだとペマ氏は指摘しました。
それによれば、中国国内には、ミャオ、カチン、チワン人なども少数存在する。しかし、その大多数は、中国の外、例えばビルマ(ミャンマー)などのほうがよほどたくさんいるのだけれど、こういう小さな民族もすべて中国国内の民族として数え、場合によっては、その民族がすんでいる外部の地域まで「中国」だとして侵略の手を伸ばしかねないと述べました(これはビルマにおけるクーデターとも関連した問題ですし、沖縄の危機にも直結する指摘です)
そして、中国はまた7月1日には、チベットを通る鉄道を高速化する、新幹線のようなものにして、ネパールとパキスタンに向かってつなげていくことを予定しており、ペマ氏は、ある種の世界制覇戦略でもある「一帯一路」は、多くのトラブルにぶつかっても決して停滞してはいない、警戒を怠ってはならないと強調しました。
その上で、現在重要なのは、2022年に予定されている冬季北京オリンピックであり、すでに多くの人権団体や有識者、また議員などの間から、冬季オリンピックボイコットの声が挙がっている、イギリスでは、45%の世論がボイコット、55%が、選手団は送るが、政府関係者、特に高官は行かない、という意見を持っていることを指摘し、この北京オリンピックに向けて大きな運動を盛り上げるべきだと呼びかけました。
そしてペマ氏は、今回のビルマの軍事クーデターの背後に中国の影響があることは、ビルマ民衆はほぼ疑いのないことだと考えている、ビルマのみならず、全アジアの様々な独裁政権、そしてそれがもたらす平和への脅威の背後には必ず中国の存在があり、だからこそ、私たちアジア諸民族は連帯して中国に当たってかなければならないと述べました。
そして、今回の全人代で明らかになったのは、何よりも軍部の権力の強化と、習近平の神格化であり、これは文化大革命時代の再現である、そう考えれば、ウイグルにおけるジェノサイド、モンゴルの母語絶滅政策、そしてチベットで現在制限されている寺院の破壊などは説明がつく問題であり、毛沢東・林彪時代に中国が回帰していることを指摘し、その危機に備えることを呼び掛けて講演を終えました(文責 三浦)