6月26日に行われました王戴氏の講演、「天安門事件から32年 中国民主化運動の現状と課題」の動画です。どうぞご覧ください。
アジア自由民主連帯協議会主催講演会「天安門事件から32年 中国民主化運動の現状と課題」講師 王戴(民主中国陣線副主席)が、6月26日、東京の会議室で開催されました。
王戴氏は、まず、中国共産党独裁に対する民主化運動は、二つの種類がある、一つは、反体制運動(共産党に対する)人達、もう一つは、組織的に活動する人たちだと述べました。そして、他にも各民族の運動、法輪功、そしてキリスト教徒など、様々な人たちが中国の弾圧に耐えながら戦っていると述べました。
また、他にも、陳情者と言われる、自分の土地や家を政府に奪われ、それに抗議する人も存在する。このように、様々な人々が、自分の自由や権利のために中国共産党と戦っていると述べました。ただ、中国共産党に対し戦っている人たちも、個人として抵抗している人たちと、組織を作り、国際的に人権団体とも連帯して戦っている人々とはやはり違う。どちらが優れているというわけではないが、やはり、一人一人で戦うよりも、組織化され、明確な目標や方針をもって運動していくことが重要ではないかと、運動がしばしば個々人の思想や個性に染まり過ぎて独善的になりかねない傾向に気を付けるべきだと述べました。
そして、ここ日本における民主化運動には、正直、日本国が、政治亡命者をなかなか受け入れないという問題があることも指摘せざるを得ないと指摘しました。中国人民主運動家で政治難民として認められた中国人は、天安門事件以後、未だに二人しかいない。他の運動家は、人道的立場から特別在留として認められてはいるが、政治亡命者、難民として認められるのはとても日本では難しいと述べました。
また王戴氏は、自分が属している民主中国陣線は、もともと台湾人がリーダーを務めており、台湾では今でも駐豪民主化運動が盛んで、亡命者も受け入れている、そして台湾民主基金という団体があり、経済的にも支援してくれていると述べました。そして民主主義を勉強するために、台湾の民主選挙なども見学したり学んだりもしている、やはり言語が同じと云う事もあり、一つの拠点として台湾があると述べました。
さらに、現在の台湾は、香港の例を見て、一国二制度の危険性はよく理解している、たとえ中国本土との一体化、統一を考えている勢力にしても(例えば連邦制度など)アメリカ合衆国のように、民主政治の下でなければ無理だと考えていると述べました。そして、昔は国民党が台湾で独裁政権を敷き、蒋介石政権は多くの台湾人を虐殺、弾圧した歴史があり、このようなことにならないように、様々な議論が、独立を求めるもの、現状維持などを含め議論していると述べました。
そして、昨年、今後の中国の体制をどう考えるべきかの民主化フォーラムが開催され、様々な組織、団体が参加して、広い議論がなされたけれど、運動の中の色々な違いも明らかになった、特に香港の運動家の中では、30代後半以後の、40,50代の人は、自分の中に中国人というアイデンティティを持っているが、若い20代はむしろ、中国ではなく、香港人というアイデンティティを強く持っており、香港独立を求める人たちもいるなど、世代による違いも起きていると王戴氏は指摘しました。
また、「私たちはシナ人に支配されたくない、共産党はもう嫌だ」という意見も見られた。これは中国国内の民族運動もそうなのだが、今後、どうやって各民族と、中国人が平和的に生きているか、それは重要な問題だと述べました。中国は文化大革命などで、共産党が政権を取って以後、数千万の犠牲者を出したと言われており、そのような目にあった人々が、今後どう共存していくかを考えねばならないと述べ、中国人とそのほかの民族の問題の複雑さを王氏は指摘しました。
同時に、習近平が一人っ子政策から、三人までの子供を認めることになった。これは高齢化対策で、中国の経済が落ちていることへの恐怖感から敷かれた記事だと王戴氏は指摘しました。そして今の中国は、表向きは共産主義政権というが、今の中国は最も残酷な資本主義で、労働者の権利が全く認められていない。今中国では、「何もしたくない」というある種の引きこもりの人間は増えているのだが、それも、いくら自分が努力して働いても全く結果が得られないことから来ていると述べました。
そして、1989年の天安門事件の段階で、中国共産党は本来倒れるべきだった。しかし、それが起きなかったのは、世界の民主主義国家が、日本を含め、経済的に中国共産党を事実上助けてしまったことだったと王戴氏は指摘し、現在、アメリカの対中政策は、トランプであれバイデンであれ、基本的に、中国共産党に対決する方向で進んでいる。そこで重要なのが、「中国共産党と、中国人一般を峻別しよう、共産党とその政権、イデオロギーが敵なのであって、中国人そのものが敵ではない」という考えに立っていることだと述べました。
王戴氏は、もちろん、現実の中国人の中には、中国共産党の正体に目覚め、それを批判している人もいれば、今の中国共産党を支持している人もいる。これは海外の中国人もそうで、例えば留学生の中でも、香港の民主化運動を応援している人もいれば、批判し、中国政府を支持している人もいる。それは事実なのだが、この共産党と中国人を分けて考えるという視点に立ってこそ、現在の中国の民主化も、他の問題の解決もなしうる、それは特にアメリカ在住の華僑や、中国知識人が提言したものだと指摘しました。
そして王戴氏は、会場の質問に答える形で、あくまで自分個人の考えだが、チベット、ウイグル、南モンゴルなど、各民族に対しては、民主化と共に、その民族自決権が基本的に認められなければならない。自分自身回族であり、いわゆる漢民族ではない。そして同時に。各民族の運動も、より大きな敵である中国共産党を倒すために、バラバラに戦うのではなく、意見の違いは違いとして広い連帯を民主化運動とも作っていくべきではないかと述べました。