【第50回・報告・動画あり】「ミャンマー軍政の現在と民主化への道」報告

(C)モーリー

講演するラエイマウン氏 (C)モーリー


アジア自由民主連帯協議会主催の講演会「ミャンマー軍政の現在と民主化への道」が、アラカン民族民主党のラエイマウン氏を講師に9月19日に東京の会議室にて開催されました。参加者は15名、報道関係の方もお見えになりました。



まずラエイマウン氏は、ミャンマーにおいては戦後3回のクーデターが起きていることから講演を始めました。まず、1962年のクーデターで、ネ・ウィンの独裁政権が誕生します。その後、1988年に、民主化運動の高まりで、ネ・ウィン政権は崩壊するが、直ちに軍がクーデターを起こして再び軍事政権に戻りました。しかし、粘り強い民主化運動と国際的な経済制裁によって、再び2011年、民主的な政権が発足、2015年の民主選挙で。アウンサン・スーチーの率いるMLD(国民民主同盟)が勝利し、民主政権が誕生。ラエイマウン氏は、自分の両親も、自分自身も、常に独裁政権下で暮らしてきたのだけれど、やっとこれでミャンマーにも自由と民主主義が確立し、自分の子供たちの世代は幸福になれる、祖国も国際社会に堂々と参加できると感動したことを述べました。

しかし、2020年11月の総選挙で、再びスーチー氏とNLDが大勝したにもかかわらず、ミャンマー軍は確固たる証拠も示さずにこの選挙は不正だと決めつけ、2021年2月1日に軍事クーデターを起こし、再び軍事政権が誕生してしまった、その時の失望は言葉では表せないと述べました。

その後は、協議会事務局長の三浦の質問に答える形で講演が進みました。まず、(1)ミャンマーの軍事政権が、今、どのような弾圧を行っているかという質問に対し、ラエイマウン氏は、犠牲者の正確な数はわからないが、おそらく千人単位で犠牲者が出ていると思うと述べ、また軍はあちこちで放火を行っている、残酷な手段で殺された人もいると、いくつかの写真を紹介しました。
ミャンマー写真1ミャンマー写真2ミャンマー写真3


続いて(2)ミャンマーの民主化運動が、それに対し、どのような抗議を行っているかという質問に対しては、ラエイマウン氏は、市民的不服従運動や抗議デモなどが粘り強く続けられているが、軍は情け容赦なく弾圧している、この事態を解決するにはどうしても国際社会の力が必要だと述べました。

(3)少数民族(カレン族、カチン族)などの軍事政権に対する抵抗運動が、今、どのように行われているか、という質問については、ラエイマウン氏は、カチン族、カレン族ら各民族は長きにわたって軍事政権と戦ってきたため独自の武力を持っており、今回のクーデターにも抗議して戦っていると述べました。

また、ラエイマウン氏自身はラカイン州の出身でもあり、(4)現在のラカイン州においてどのような事態が起きているかという質問については、弾圧によって大量の避難民が出現していると述べました。これはミャンマー全土に起きていることですが、このクーデターと、各民族軍との衝突は内戦状態になっており、国内で家や村を失った避難民が急増しているようです。
そして、会場から、アラカンの武装組織、アラカン軍の現状についての質問があり、ラエイマウン氏は、「アラカン軍はスーチー政権下ではテロ組織とされたが、国軍は逆にテロ指定を解除した。これは軍事政権がアラカン軍を味方に取り込もうとしたのだろうが、実際には、アラカン軍を含め、ラカイン州は全体でクーデターに抵抗している」と述べました。

なお、ミャンマーの少数民族の問題については、このような報道もありますので参照ください。


ミャンマー情勢の鍵握る少数民族武装勢力の動向
「前例のない大規模な内戦」目前か 停戦無視で空爆
海野麻実 (記者、映像ディレクター)

「3月に入ってからは、国軍が大規模な掃討作戦を行うなど、激しい戦闘を繰り広げてきたラカイン州の武装組織「アラカン軍(AA)」のテロ組織指定を解除するなど、大胆な動きにも打って出た。そうした経緯もあり、アラカン軍は、民衆による抗議を大々的に支援するカレン民族同盟などとは異なり、しばらくその態度を明確にしてこなったわけだが、ここへきて、中国国境付近を拠点とする「タアン民族解放軍」(TNLA)と「ミャンマー民族民主同盟軍」(MNDAA)と共に、声明を発表。「もし市民の殺害を続けるならば、『春の革命』を掲げる市民とともに立ち上がる」として、軍が市民への残虐な弾圧をやめない限り、報復を辞さないと警告した。これは国軍にとって大きな誤算であるとも指摘されている。」

「事実、国軍は先月31日、翌4月1日からの1カ月間に渡る停戦を一方的に宣言。「武装勢力から新たな攻撃がなければ、軍事作戦は1日から1カ月停止する」と発表し、混乱する事態になんとか手立てを打とうとするような動きを見せたものの、「政府の安全を妨げる行為に対する防衛」は停戦対象外としており、市民らへの武力行使が収まる兆しは見えない。」

「むしろ、今や複数の武装組織が「民主主義を掲げる市民の抗議デモを支援する」として市民を守るだけではなく、反撃も辞さないプロアクティブな態度を表明していることから、これまで非暴力が掲げられてきた民衆による抗議運動は、武装組織を交えた国軍との報復の応酬へと異なる様相を呈してくる懸念が高まっている。こうした状況が、先般の安保理での「内戦」への発展に対する深刻な指摘に繋がっている。」

「「国軍記念日」の式典が開かれた先月27日、抗議デモを行う市民らを警護するなどしてきたカレン族が自治を行う地域の村が空爆され、複数の死傷者が出た。これにより、住民3000人以上が隣国タイに避難をする事態となり、情勢は緊迫さを増している。さらに、冒頭述べたように、国軍は自ら停戦を無視して1日、再び空爆を行うなどもはや戦闘態勢に入ることを辞さない構えにも映る。カレン民族同盟側が停戦協定を破って、国軍の基地を攻撃したことへの報復だと強調しているが、非暴力での抗議を持ってして、犠牲者が後を絶たない現実に、次第に市民の側でも「戦わざるを得ない」との意思を固くする人々が出てきていることも確かだ。」(以上、引用終わり)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/22648?page=3

そして、ミャンマーの今回のクーデターについて、中国の関与はあるのかという質問に対し、ラエイマウン氏は、あくまで自分個人の見解であると述べたうえで、クーデターが起きる1か月前に中国の外相がミャンマーを訪問していること、また、中国は2013年から、ラカイン州沖のシュエー・ガス田から天然ガスをパイプラインで輸入しており、これはもちろん軍政時代に締結されている。しかもこの同時期、アメリカはミャンマー問題を国連安保理に付託しようとしたが、中国側はこれを拒否権発動で防いで軍事政権を守った。このパイプラこのように、中国と軍事政権は以前から深い関係にあると述べました。
ミャンマー写真4ミャンマー写真5

さらに、2017年4月、中国に中東・アフリカ原油を輸送するパイプラインの操業が開始され、マラッカ海峡を通じて原油を中国は輸入できるようになった、このような、中国の一対一蘆政策とも軍事政権は密接に関係していると述べました。そして、中国は、中国・ミャンマー経済回廊(CMEC)を計画しており、雲南省の昆明に始まり、ムセ、マンダレーを通り、南のヤンゴンと西のチャウピューに至るこの回廊周辺に経済特区を作ろうとしており、これは同時にチャウピュー深海港を経由してインド洋へたどり着ける最短ルートであって、中国の軍事的、戦略的拠点を東南アジアに置くことになると、その危険性を指摘しました。

最後に(7)日本がミャンマーの民主化のためにどんなことをすればいいのか、という質問に対しては、とにかく、今の軍事政権を支援しないでほしい、コロナ感染症や、貧困に苦しむミャンマー民衆を支援したいというお気持ちはありがたいが、今軍事政権を支援してしまってはかえって民衆は不幸になる、むしろ自分としては、米軍基地をミャンマーの島などに設置し、軍事的な圧力をかけてでも今のクーデター政権の民衆弾圧をやめさせてほしい気持ちが個人的にはあると述べました。


休憩後は、雑誌「宗教問題」編集長の小川寛大氏も登壇、今後のミャンマー情勢は、このまま放置しておけば極めて悲惨な方向に向かうかもしれないことを警告しました。ラエイマウン氏は、今後もミャンマーの問題を日本政府にも訴えていきたいと述べ、質疑応答後講演会は閉会しました(文責 三浦小太郎)



さらに、当日の写真を撮影頂いたものです。
(C)モーリー
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