2012年1月のチベット人虐殺事件に際しての声明文
2012年1月23日と24日、中華人民共和国四川省のカンゼ・チベット族自治州で、チベット人による平和的なデモが武装警察によって無差別発砲を受け、多くの死傷者が出るという事件が発生した。
中国の国営新華社通信は、23日にダンゴ県で発生した数十人規模のデモ隊が警察と衝突し住民1人が死亡、翌日24日にはセルタ県で「チベット族住民による暴動」が発生し警官隊が発砲、住民側は1人死亡、1人負傷、警官は14人が負傷した、と伝えた。
しかしチベット亡命政府や国際人権団体の発表は、中国政府の宗教活動への弾圧などに抗議するためにチベット人住民が平和的なデモを行ったところ、鎮圧のために警察が発砲し、2人以上の死者が出たとしている。
更に2011年3月以降、チベットで行われている弾圧に抗議するチベット人僧侶の焼身自殺が続発しており、その数は16人にも及ぶ。しかし中国政府は焼身自殺を「形を変えたテロ活動」であると断じ、この身を賭した抗議行動ですら黙殺しようとしている。
このように中国政府は、チベット人住民や僧侶によって行われる平和的な抗議行動を「暴動」や「テロ活動」と宣伝し、無差別発砲など武力を用いた過酷な鎮圧を正当化している。
そもそも今回の事件が起きたカンゼ・チベット族自治州は四川省となっているため、中国国内で偶発的に起きた事件であるかのような印象を持たされるが、60年程前まではチベット国のカム地方と呼ばれた地域にあり、無理やり四川省に併合されたものである。近代まで独立国家であり、独自の文化と言語、歴史を持ったチベットは、1949年に人民解放軍によって侵略され、チベット自治区、青海省などにバラバラに分割され、中国の一地方として支配されている。
中国によるチベット支配は、文字通りの民族絶滅政策であり、全人口の6分の1にあたる120万人もの命が奪われ、さらに全体の95%にあたる6000もの僧院や寺院が破壊された。現在でも宗教の自由は厳しく制限されており、チベット語による教育も制限を受け、地下資源や森林の伐採、草原の農地化、核施設の建設など環境の破壊も進んでいる。
チベットで起きていることは、ウイグルでも、南モンゴルでも同様であり、不当な占領から時を経て、今まさに民族としての生命が絶たれようとしている。いずれの民族も共通して、自民族の言語による教育、宗教活動が制限され、民族の文化・歴史も否定され、中国への同化政策の最終段階にあるといえる。
近年多発するこれら各民族の抗議行動は、参加者が逮捕され懲役刑、死刑を受けることも覚悟の上で行われるものであり、人生と生命を代償として行われるものであり、民族が危機的状況に追い込まれた末の行動である。この責任は中国政府にあり、直ちにその原因となる人権弾圧と民族浄化政策を止めるよう強く求める。
基本的人権は決して侵してはならないものであり、更に国連憲章に明記されているように民族自決権も、現在を生きる人類すべての普遍の権利である。中国は国連常任理事国として、国連憲章と国際人権規約を遵守する義務があり、ウイグル、チベット、モンゴル各民族、中華人民共和国の統治のもとで生きる全ての人々に、人類普遍の権利が等しく与えられるよう果たさなければならない。
日本ウイグル協会は、中国政府のこれら非人道的な政策が改められるまで、ウイグル、チベット、モンゴルなど各民族と、中国の民主化を求める人々との連帯をはかり、抗議の声を上げ続けていく。
また国際的な圧力を加えるために、自由と人権を重んじる日本国政府、世界各国の政府、日本国内外の各団体に働きかけ、中国政府に対して抗議の声をあげるよう求めていく。
2012年1月27日 日本ウイグル協会
2012年1月のチベット人虐殺事件に際しての声明文 : 日本ウイグル協会
http://uyghur-j.org/news_20120127.html