【第58回・動画あり・報告】ミャンマー(ビルマ)の現状とこれからの民主化運動

アジア自由民主連帯協議会主催講演会
ミャンマー(ビルマ)の現状とこれからの民主化運動

 9月18日東京の会議室にて、アジア自由民主連帯協議会主催講演会「ミャンマー(ビルマ)の現状とこれからの民主化運動」が開催されました。講演者はタウン・ミィン・ウー氏(NLD日本組織委員会議長)。まずウー氏は、ミャンマーは1948年の独立以後、ミャンマーでは様々な内戦が生じたが、それでも経済的にも文化的にも発展し、東南アジアの先進国の一つだったと述べました。
 
 しかし、1962年3月、1988年4月、そして2021年2月の、三回にわたる軍事クーデターによって、ミャンマーは大きな打撃を受け、とくにこの2021年2月1日のクーデターは、民主化がやっと進みつつあった中、軍部が2020年に選挙で選ばれた正当なアウン・サン・スーチー政権を、投票に不正があったと決めつけてその選挙結果を認めずに起こしたクーデターで、まさにビルマの民主化を逆行させたと批判しました。

 60年以上、軍政に抗議して民主化を求めてきたミャンマーの民衆は、このクーデターを受け入れることはできないと抵抗運動に立ち上がり、ビルマ人だけではなくほかのさまざまな民族も連帯して戦い続けているとウー氏は指摘し、そのスローガンは以下の3つだと述べました。

1, アウンサン・スーチー氏を含めすべての政治犯の解放
2, 2020年の選挙結果を正当な民主運選択として受け入れる
3, 民主的な議会政治を尊重する

 これは、今回のクーデターによる軍事独裁政権を全否定することを意味し、さらに、ミャンマーの各民族の自治権の尊重、マイノリティの保護、女性の権利の尊重などを求めていること、そして今回の抵抗運動、民主化運動の特徴は、これまでの運動が政治家やエリート主導の面があったのに対し、若者、公務員、労働者など一般民衆が自発的に立ち上がったことだと指摘しました。

 そして、当初この運動は非暴力・不服従の運動で、平和的な抗議行動を展開しており、ミャンマーでは、太鼓をたたいて悪魔を打ち払うという習慣があるが、武器を持たない市民は、夜になると太鼓を鳴らして軍に抗議していた。しかし、軍はこのような人たちに対し、自平然と発砲し、運動に参加した人たちの家に不当に立ち入って逮捕する行為に及んだ。これに対し、市民も労働者も武器を取って戦うことを決意し、国民防衛隊(PDF)が結成され、各民族の武装組織に参加するものも、自ら武器を取って住む町や村を防衛しようとする運動が現れたとウー氏は指摘しました。

 そして、国際社会は、本来国民を守るべき組織である軍が、自国民を弾圧、虐殺するありさまを見せつけられ、今も民衆の命を懸けた抵抗運動が続いている。そして、NEDとPDFの支配地域は今や拡大しつつあり、軍事政権は全土の約22%を支配しているに過ぎないと述べました。

 しかし、同時に2243名の罪のない国民が殺され、1万人以上が不当逮捕されている,また、軍側にも多くの犠牲が出ており、民家が焼き払われ、避難民、戦争難民は300万に及んでいると述べ、また、捕らえられたNEDメンバーの中には、拷問で殺害された人たちも出ている。農作業ができないため、多くの難民が飢餓に苦しんでおり、国際的な人道支援が緊急に必要であると、ウー氏は悲惨な状況を訴えました。

今、ロシアの侵略によってウクライナ民衆が苦しんでいるように、ミャンマーでは、自国の軍隊によってミャンマー民衆が苦しめられ、命を奪われている状況があることを、ぜひアジアの民主主義国である日本国政府と国民ももっと関心を持ってほしいとウー氏は訴え、以下の二点を特に政府と国民にお願いしたいと述べて講演をむすびました。

1、日本政府は、スーチー氏の民主政権と友好な関係を結んできた。しかし、今はクーデターで倒した軍事政権ともやはり関係を持とうとしているように見える。ぜひ、軍事政権ではなく、それに抵抗している正当な民主運動との関係を大切にしてほしい。
2、ミャンマーと日本の両国民は、これまで様々な友好関係や交流を続けてきた。これからも民衆同士の交流や連帯を深め、民主化運動を国民レベルで支援していただきたい。

 以上の講演は通訳を通じてなされ、質疑応答後、午後4時半に講演会は閉会となりました。今のミャンマー情勢について、以下のニュースを紹介しておきます。(文責 三浦)

ミャンマー軍事政権が抗議運動取材中の日本人ジャーナリストを拘束
https://jp.globalvoices.org/2022/09/07/60520/

 7月30日、ミャンマーのヤンゴンで、日本のドキュメンタリー制作者でジャーナリストの久保田徹さんが、軍事政権に対する抗議デモを取材中に逮捕された。

 ミャンマーの軍事独裁政権は、久保田さんを扇動罪とビザおよび入国管理法違反で起訴した。8月16日に裁判が開始された後、当局は、電子通信に関する法律に違反したとして追加の起訴を検討していると述べた。

 伝えられるところによると、現在久保田さんはミャンマーの悪名高いインセイン刑務所に拘留されている。彼のTwitterアカウントは、拘留以降停止したままだ。これまで、さまざまな団体や個人が久保田さんの即時釈放を求めてきた。

 久保田さんは、以前にYahoo! News Japan、Vice Japan、 Al Jazeera Englishなどの国際メディアで仕事をしてきた。ミャンマーで認められず、迫害されている少数民族ロヒンギャの状況に関するいくつかのドキュメンタリー作品も制作している。

 2021年2月のクーデターで権力を掌握した後、ミャンマー軍は国内でのニュース報道を規制した。 これまでに、民主化運動を支持したとして多数のジャーナリストが逮捕されている。久保田さんは軍事政権に逮捕された外国人ジャーナリストとしては5人目。もう一人の日本人ジャーナリストである北角裕樹さんは、2021年5月に釈放されるまで25日間勾留された。

 2021年のミャンマーでの軍事クーデターとその後の弾圧の後、日本政府はミャンマーとの関係を断つことを公表した。しかし、深いつながりは断ち切れない。 日本企業はミャンマーへの投資を続けており、日本はミャンマー軍への訓練を提供し続けている。

 東京に拠点を置く日本ミャンマー協会は、軍事独裁政権への投資をし続けている一方で、久保田氏の拘留やその他の人権侵害についてコメントを控えている。(以下略)

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