【報告】中国における集団虐殺と臓器収奪(国際人権弁護士デービット・マタス氏)

中国における集団虐殺と臓器収奪
国際人権弁護士デービット・マタス氏による中国における臓器収奪問題講演会

SMGネットワークの主催により、10月24日、国際的な人権弁護士デービット・マタス氏の講演を中心とした講演集会が、参議院議員会館会議室にて午後2時から開催されました。参加者は約80名、会場の外にも人が溢れました。

まず、冒頭に、丸山治章逗子市議会議員が開会あいさつを述べました。
丸山議員は、SMG地方議員ネットワークメンバーであり、以前から中国の臓器移植の問題点を指摘してきました。丸山議員は、いま中国で起きていることはまれにみる人権蹂躙であり、これを世界に先駆けて発表してきたのが本日講演をされるマタス氏であること、本日はマタス氏の貴重な講演を聞いて今後の運動のあり方についても考えたいと述べました。

また、当日は青山周平衆議院議員、和田有一朗衆議院議員、上野ひろし前議員、宮川豊史東久留米市議会議員、三井田孝欧前議員、中沢克行鎌倉市議会議員、中村裕之衆議院議員、小坪慎也行橋市議会議員などが参加しました。

そして、デービット・マタス氏の講演に先立ち、石橋林太郎参議院議員が登壇、中国が現在行っている臓器収奪(当人の意志亡くして臓器を手術で収奪し違法な移植に使う)行為は、証言など二次情報はかなりあるが、一次情報や客観的証拠は難しい面もある、しかし、今日のマタス氏の講演によって最新情報やこの問題の根本を皆さんに理解してほしいと述べました。

そしてマタス氏が登壇し、米国の学者グレゴリー・スタントン氏を引いて、ジェノサイドは以下の10段階を経て完成すると述べたうえで講演を始めました。

(1)分別 「彼ら」と「私たち」
法輪功修練者であれウイグル人であれ、中国政府は彼らを、一般的な中国国民とは全く異なる存在であると「分別 Classification」する。
(2)象徴化 symbolization
そのうえで、法輪功修練者は、自殺志願の反社会的集団、ウイグル人はテロリストというイメージをかぶせて象徴化する。
(3)差別化 Discrimination
そして、そのような反社会的存在であるとして、差別し、市民権から排除する。

ここでマタス氏は、当初、中国政府はむしろ法輪功を健全な気功集団として評価している時期があったが、やがて彼らに民衆の支持が集まり、中国共産党よりも信用される集団になるや、このような排除を行うようになったと指摘し、このように独裁体制は平気でその時その時において対処を変更しうると指摘しました。また、ここでの分別や象徴化の過程で、最新の科学による顔認証や監視カメラなどが有効に使われていると、AIによる監視社会の恐怖を指摘しました。

その上で(4)非人間化:人間以下の存在とみなす、(5)組織化:訓練された民兵による弾圧、(6)分極化:徹底したプロパガンダによる排除 などの過程を経て、(7)準備:大量殺人の計画に至ることをマタス氏は述べました。

(7)準備;大量虐殺の計画
(8)迫害:強制収容、強制移住、強制労働
(9)根絶:被害者は人間とみなされず、「駆除」対象となる
法輪功が集団として検挙され、システマティックに臓器の収奪のため検査される。同時に、精神的、肉体的拷問を受け、中国共産党に従うものは許されて解放されることもあるが、それを拒否したものは臓器収奪の対象とされる。これは、法輪功が大量に臓器収奪の対象となってその数が減少してからはウイグルに対し行われていく。この過程は上記の7から9にあたるとマタス氏は説明し、その上で、具体的には、1990年代から2000年にかけては法輪功、そして2017年に全土が収容所化したウイグルでこのようなジェノサイドが進んでいると指摘しました。

そして、当初中国政府は、臓器収奪を死刑囚から行っていた。しかし、国際世論の批判を受け、死刑判決を以前よりは控えるようになり、臓器収奪の対象が減ってきたことから、法輪功やウイグル人が対象になった可能性もあるとマタス氏は述べました。(2015年には中国政府は公的に死刑囚からの臓器収奪を中止したと宣言)

そしてこの臓器収奪は、単なる犯罪だけではなく、鄧小平の改革開放政策以後の社会の変化と密接に結びついている、それまで国営だった病院が民間経営となり、財源が必要となったため、このような犯罪に手を染めるようになったとマタス氏は指摘し、移植により多大な利益を得ることができ、しかも、無尽蔵に臓器収奪の対象が法輪功やウイグル人から得られることから、まさにこれが経済システムになってしまっていることをマタス氏は指摘しました。

その上で、ジェノサイドにも、熱いジェノサイドと冷たいジェノサイドがある、後者は、徹底的に秘密裏に行われるもので、外部に情報がなかなか出にくく、特にこの臓器収奪では、被害者は抹殺されてしまうので証言もできず、かかわった医師も、ここの手術過程はわかっても全体像は把握していないことから、この臓器収奪がなかなか明るみにならなかったことを指摘しました。

そして、今は法輪功やウイグル人が対象となっているが、やがてその範囲はほかの中国の国内民族や、あるいは、将来中国が台湾を占拠すれば台湾の人たちにも及ぶだろう、そのような事態を迎えないためにも、核国の裁判所や国際刑事裁判所、国際司法裁判所などの積極的な活動が必要であることを述べて講演を結びました。

その後、日本ウイグル協会ハリマト・ローズ氏、クリルタイ(世界南モンゴル会議)代表ジョショープト・テムチルト氏、ダライラマ法王代表部日本事務所のアリヤ代表が、様々な立場から中国の民族弾圧の実態を訴え、講演会は閉会しました(文責 三浦)

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