【第60回・報告・動画あり】イラン人お二人の証言

イラン人の方の証言は、動画内では51分ごろから始まります。

前半の荒木氏講演についてはこちらの記事をご参照ください。

アジア自由民主連帯協議会主催講演会
北朝鮮拉致問題の本質 なぜ被害者を取り返せないのか
報告(2)イラン人お二人の証言

 荒木氏の講演ののち、現在のイランの状況について、日本在住のイラン人お二人から報告がありました。
 まず、ベウラニ・ビナ氏から、イランの歴史、1979年のイスラム革命、イランと北朝鮮の関係性と類似性、そして日本にとっての脅威について説明がなされました。
 ビナ氏は、イランは紀元前6世紀のアケメネス時代からの古い歴史のある国で、民族的、宗教的にもきわめて多様な国であると述べました。ペルシア、アゼルバイジャン、クルド、アラブ、バルーチなど民族も様々で、また宗教もイスラム教シーア派以外にも、ユダヤ教、キリスト教、ゾロアスター教など。しかし、1979年のイスラム革命は、このような多様性を全面的に否定した、ホメイニーによる独裁体制と全体主義支配を実現してしまったと述べました。

 そして、もともと1979年の革命とは、それまでのイランを民主化しよう、改革しようとする、自由主義者、社会主義者、そしてイスラム勢力など様々な運動から起きたものなのだけれど、様々な対立と抗争ののち、ホメイニー師による独裁体制に終わってしまった。現在のイランは、北朝鮮と極めて類似した独裁体制だと指摘しました。

 そして、2009年、当時の大統領選挙における不正に抗議する緑の運動が、近年における大きな運動の始まりであったことを述べたのち、イランにおいては形式的には大統領選挙もあり民主的な運営がなされているように見えるけれども、実際には、原理主義的な最高指導者が大統領や政府の上にいて実質的な決定はみな握られている、そのことへの抗議運動が始まったのが、まずこの緑の運動で、その後は2017年。2019年と抗議運動、民主化運動が続き、現在に至るまでこの運動は継続していると指摘しました。そして、現在の運動の有名なスローガン、「女性、命、自由」に引き継がれていると述べました。

 そして、イランと北朝鮮の関係は以前から深く、現在最高指導者のハメニイ氏は1989年に北朝鮮に行き金日成に面会している。日本や韓国とも国交があるため、北朝鮮との関係は隠そうとしているが、現在に至るまで、様々な武器貿易、北朝鮮の核・ミサイル開発への協力などを継続し、国際社会の対北制裁に違反する行為を行い続けていることをビナ氏は批判し、北朝鮮と政治的、経済的結びつきが強いことを指摘しました。

 さらにビナ氏は、北朝鮮とイランは、その政治体制が極めて類似している、ともに国際社会から孤立し、極端な反米主義、反民主主義、そして全体主義的な専制支配を行っている。政治面、経済面での寡頭制、国民への独裁者個人崇拝の強制など、この二国は政治的に類似した性格を持っているからこそ接近しているのだと述べました。

 そして、仮に東アジア、朝鮮半島に何らかの軍事的危機が起きたとき、必ずイランは現体制のままである以上、北朝鮮に味方して軍事面での支援を行う、それは日本にとっても確実に脅威となるはずだと述べて証言を終えました。

 続いてガラハニ・ファテメ氏が証言、現在イランの運動のスローガンは「女性・命・自由」であることの理由を次のように説明しました。イランではイスラム革命以後、イスラムの教えに基づき、女性は国籍や宗教を問わず、公共の場所ではヘジャブと呼ばれるスカーフをかぶり、髪の毛を隠す義務があり、違反者は逮捕され、罰則が科せられる。2022年9月13日、22歳の女性マフサ・アミニさんが、テヘランでヘジャブの着用が不適切だとして警察に逮捕され、警察署で意識を失い、搬送先の病院で死亡するという事件が起きた。

 警察当局は「心臓発作」と発表しましたが、彼女には特に持病はなく、SNSで拡散された、彼女が病院のベットに横たわっている写真などから 警察当局の暴力が疑われました。アミニさんの葬儀では参列者が最高指導者ハメネイ師に抗議する声を挙げ、葬儀は現政権への抗議運動に発展。これ以後抗議は全国的に広がり、参加者たちは「女性、命、自由」と声を上げていると説明しました。この運動は単にヒジャブの問題に限らず、イランの現体制の独裁的な政治そのものへの抗議として続いており、だからこそ、体制を守ろうとする革命防衛隊による暴力的弾圧を受けていると述べました。

 そして、1979年のイラン・イスラム革命は、当初は確かに国王体制下における貧富の格差の是正、抑圧政治への抗議と民主化への要求、汚職の廃止や経済的公正などを求めて始まったもので、イスラム共和国も発足当初は民衆の正当な要求を実現し、人権を保護すると約束していたのだが、すぐに自分たちと意見の合わない政治勢力に対しては弾圧、追放、処刑などを行い、現在の専制体制を作り上げた、現在のイランは最高指導者のハメネイ師がすべてを決定しており、民主主義もなければ人権もない状況だと批判しました。

 しかし、弾圧に屈することなく、イラン民衆は2009年の緑の運動で数千人が抗議に立ち上がったのにはじまり、2017年12月、2019年11月と、全国的な抗議行動を続けてきた。そして現在の「女性・命・自由」を守るために立ち上がった民衆は厳しい弾圧にさらされているが、だからこそ、自分たち海外にいるイラン人が声を挙げなければならない、日本の皆様にも支援してほしいと証言を結びました。(文責 三浦)

2017年のデモについてはこの報道も参照ください。
イラン各地で異例の反政府デモ 物価上昇などに抗議
「イランの第2都市マシュハドで28日に異例の反政府デモが起きたのを皮切りに、29日には複数の都市で物価上昇やハッサン・ロウハニ大統領に抗議するデモが相次いだ。」
https://www.bbc.com/japanese/42520667

2019年11月のデモ
イラン:抗議デモを弾圧 死者100人以上か

「国内外から入手した動画、目撃証言などで、イラン各地で始まったほぼ平和的なデモ隊に対して、治安部隊は過剰な力を行使し、多数の死傷者や逮捕者を出していることが明らかになった。」
https://www.amnesty.or.jp/news/2019/1123_8459.html

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