イーサン・ガットマン氏講演会報告(中国の臓器収奪について)

 3月4日午後、東京有楽町の交通会館会議室にて、中国専門アナリスト、イーサン・ガットマン氏の講演会が開催されました。主催は三省堂書店。通訳を交え、約1時間の講演会でした。

(参考書籍 臓器収奪――消える人々 – 中国の生体臓器ビジネスと大量殺人、その漆黒の闇 – (ワニプラス))
https://www.amazon.co.jp/dp/484707100X

 まずガットマン氏は、参加者並びにこの講演会の主催者、通訳の方々に御礼を述べた後、今日お話しする中国による臓器収奪は、過去の問題ではなく、現在進行形の問題であることを最初に認識してほしいと述べました。そして、この問題の解決のためには何よりも粘り強く取り組むことが重要であること、中国の臓器収奪は、まずは法輪功に始まり、チベット、ウィグル、カザフなどのトルコ系民族に移行しているが、根本的な中国の国家犯罪としてのシステムは全く変わっていないと述べました。中国が、何の罪もない人々から臓器を収奪し、それを産業化していること、そのことに対し、日本も決して中立的な立場をとることはできないことを今日は理解してほしいと述べました。

 ガットマン氏は、まず、この臓器収奪を時系列に沿って解説しました。

 1980年代後半から、中国では、主として死刑囚を対象に臓器収奪を行われてきた。しかし、最初の証言があったのは1994年、ウイグル自治区のウルムチにおいて、生体臓器移植についての最初の証言がニジャット・アブドゥレイムにより、そして95年には、直接死刑囚からの臓器収奪を行った医師、エンバー・トフティによる証言がなされたことをガットマン氏はまず挙げました。

 その後、1997年のウイグルにおけるグルジャ事件(ウイグルの民俗伝統行事である若者の祭り、マシュラプが禁止され、抗議するウイグル人たちは弾圧された事件)における政治犯たちからも臓器収奪が行われたという証言が現れました。

 そして、1999年からは法輪功に対する大弾圧が開始され、2001年には、中国の労働改造所(政治犯収容所)に拘束された役200万人の法輪功修練者を対象に「小売りできる臓器」を絞り込むための医療検査が行われるようになります。
 これにより、2002年からは、海外からの移植ツーリズム患者の待機時間が、なんと2週間以下になったことが報告されました。

 2003年には、拘束されたチベット人と、家庭教会(地下協会)の信者も同様に「移植のための医療検査」の対象となりました。2007年には、中国の医療機関が、年間1万件の移植を行っていることが発表され、2012年には、最低でも年間6万件の移植手術が行われていることが、中国の個々の病院での移植件数から明らかになっています。

 2014年には、収容されている修練者だけではなく、法輪功修練者の自宅に警察が踏み込み、強引に臓器の組織適合性を調べるために血液やDNAサンプルを採集することが行われます。そして2016年には、中国政府は1000万人単位でウイグル人から強制的に採血(漢民族はこの対象外)。しかも、採血時は健康検査や治療のためという言い訳がなされていますが、ガットマン氏が調査した範囲内、その後治療を受けたウイグル人はいません。

 2017年以後、ウイグルで100万人以上の囚人を収容できる収容所が建設され、そこに収容されたウイグル人(カザフ人含む)は、2か月に一回の「健康診断」を受けるようになり、同年、ウイグルの複数の空港で、「臓器輸送優先通路」の張り紙が見られるようになります。そして2018年には、ウイグルで火葬場が建設され(ウイグル人はイスラムなので本来仮想は選択しません)ます。最初の火葬場はウルムチに建設され、漢民族の護衛50名が配置されていました。

 このような事実経過をガットマン氏は述べたのちに、ウイグルのアスク市における収容所を、撮影された衛星写真をもとにケーススタディとして開設しました。

 まず、RFA(ラジオフリーアジア)が得た証言によれば、アクスの二つの「再教育センター」とされている収容所には、1つには33000人、1つには16000人が収容されている。そして、この収容所から約900メートルのところに火葬場が設置されている。そして、収容所の付近には病院が離接されており、これは法輪功のケースと同様、臓器収奪が行われていることを示唆しているとガットマン氏は述べました。

 そして、この収容所について、あるウイグル人の緒言によれば、ここはもともと、SARS感染の際に建てられた病院であること、また、明らかにこの火葬場からはひどい異臭がしており、火葬が行われていたことを証言しています。また、アクス空港にも「人体器官専用通路」が設けられており、この空港からは車まで30分ほどのところに病院がある、これも臓器移植を証拠立てているとガットマン氏は祖適しました。

 そして、上海市付近の浙江省行政区にある病院では、ECMO(体外式膜型人工肺)のトレーニングセンターが置かれており、この機械を使いこなすことによって、臓器の保存時間がそれ以前よりはるかに長く可能になった。そして中国では2020年3月1日、コロナ患者への肺移植成功を大々的に宣伝している、これは、コロナ禍の中でも臓器収奪と移植が堂々と行われていたことのある意味証拠でもあるとガットマン氏は述べました。

 そして、ウイグル人の収取所証言者であるサイラグル・サウトバイ氏によれば、収容所全体で、2,3か月に一回「生体検査」があり、それが終わると囚人の名簿に3人ほど、名前の横にチェックが入り、その人たちはその後すぐに消えてしまうという体験を語っていました。ガットマン氏は、これもまた臓器収奪である可能性が否定できないとしました。

 そして、収容所の囚人たちは、18歳から25歳の間の囚人は「卒業」という形で釈放された後は、工場で強制労働を課せられるが、25歳から35歳までの者は、臓器収奪に最も適した年齢としてその対象となる、という証言も紹介し、様々な証言を総合すると、年間35000人ほどのウイグル人が収奪の犠牲となっているのではないかとガットマン氏は指摘しました。

 最後にガットマン氏は、日本が今後どうすべきかを述べて講演を終えました。まず、カナダや米国は、すでに、中国への移植ツーリズムを法的に禁止している、そして今年4月コロラドで開催予定の国際移植学会にて、自分が臓器収奪の問題について25分ほど話す機会を与えてくれることになった、これは自分の人生の中で最も意義深い25分間になるだろうとガットマン氏は述べました。

 そして、これまで、中国と関係を深めることにとって中国をよくしていこうとする西側の行動はすべて失敗に終わっている、今回のコロナにおいても、中国側が虚言を行ってきたことは明らかになった。中国における移植産業はウイルスと同じく、これを隔離・排除する必要があるとガットマン氏は強く訴えました。

 そして、今後、この臓器収奪の問題について「中立」や「どっちつかず」の態度はもはや終わった、日本は、中国側につくか、それに抗議する側につくかを今や選択しなければならないと思うし、私の講演や文筆活動がその選択の参考になればこれほど光栄なことはない、と講演を結びました。

 ここで、日本在住ウイグル人の参加者で、アクス出身のイスマイル氏が、自分の故郷で起きたことも全く今日の講演と同じで、周囲でどんどん行方不明の人が出てきた、また、収容所に入れられた人が中で死亡しても、その遺体を返してくれない、また、遺体の顔は見せてくれても、その体は見せようとしないという話を聞いていると述べました。ガットマン氏は、あなたの証言もぜひインタビューしたいイスマイル氏に答えていました。(文責 三浦)

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