【報告・動画】協議会学習会「南アジア・日本の連携とその可能性」

協議会学習会「南アジア・日本の連携とその可能性」の動画です。
元江戸川区議(日本における、インド出身者初の議員)にして公立高校の校長先生でいらっしゃるプラニク・ヨゲンドラ氏にも講演頂きました。

 「南アジア・日本の連携とその可能性」と題し、元江戸川区議(日本における、インド出身者初の議員)にして公立高校の校長先生でいらっしゃるプラニク・ヨゲンドラ氏の講演会が開催されました。

 ペマ・ギャルポ会長の紹介の後、ヨゲンドラ氏が講演をはじめました。日本人の中で、まだまだインドは遠い国であるとまず述べ、インドは大国だけど貧富の差があるとか、牛を聖なる生き物として信じているとか、インドといえばカレーとかその程度のイメージだと思うと述べました。

 そして、インドは3千年を超える長い歴史を持つこと、1500年前、2000年前からの建物が今もきれいな寺院として残っていることを見ると、歴史的に本当に優れた技術を持っていた国だと思うと述べ、また、インドのことをなんとなく男尊女卑の国のように考えている日本人に合うこともあるが、インドの神話を学んでもらえば、大事な神様は殆ど女神であり崇拝されていることが理解できるだろうと、インドへの先入観をたしなめました。

 現代のインドは、高速道路のネットワークができ、主要都市には空港や鉄道ができ、高層マンションもラッシュしている、そこには日本からの支援もたくさん入っており、モディ首相と安倍首相の関係が良好だったこともあって、多くの支援が日本から入ってきたことはとてもインドにとってありがたかったと述べました。

 そしてインドは大変多様な文化が共存している国で、それぞれの主要都市がそれぞれの文化を持っている。そして、インドは国の基本精神として、平和、純粋ということをいつも大切にしてきた。自分がインドの学校で習ったのは、インドはほかの国井を侵略したことはない、国の中の争いは確かにあったけど、海外を侵略するようなことは基本的になかった。

インドはたくさんの言葉、民族があり、共通語は英語か、ヒンディー語なんだけれど、基本、ほかの文化をおおらかに認めていくのがインドのいいところだと思う、実はインドには「国語」という概念がない、第一公用語、第二公用語という概念はあるけど、それぞれの地域はそれぞれの地域の言葉を大事にしている、それがおおらかな文化だと思うとの、ヨゲンドラ氏は述べました。

ただインドの立場で日本ではなかなか受け入れられないのは国境の概念で、インドとしては、いわゆるカシミール地方は自国の領土なんだけれど、日本では、アメリカの同盟国であり、これまでアメリカがこの領土問題についてはパキスタンに同情的だったので、領土問題ではインドの意見が通らなかった、これは意外に知られていないことだと述べました。

そして、インドの人権状況についてよく聞かれることがあるけれど、自分としては、インドにはインドの人権の基準があり、それで問題はないと思っている、自分はこうして日本で生活していて、いくつかの点では、日本にも人権問題がないとは言えないと感じることがあるけれど、これは世界の基準と、各国それぞれの歴史的、文化的な違いを認めないといけないのではないかと述べました。

インドの政府体制は、日本と同じく、国会、地方議会を持つ、ただし、条約とかを作れるのは州の知事の単位であり、州知事と州首相という二つの立場がある。そのほかは日本と同じく、国会が二院制で、総理大臣の選出も、裁判制度も日本と同じ。しかし、日本とインドで大きな違いがあるとしたら、日本では政府の力が警察より大きく、ある程度警察を動かすことができる。日本では警察が独立している、これは大きな違いだとヨゲンドラ氏は述べました。

インドの民主主義は非常に基盤が強く、軍隊も警察も大きな組織だけれど、民主主義で選ばれた議員の力を超えることはない。たとえばパキスタンではよく軍事クーデターが起きるし、この前のパキスタンでも起きたけれど、インドでは絶対にありえない。その前に民衆が立ち上がると思うと、ヨゲンドラ氏はインドの民主主義に対する信頼と自信を強調しました。インドが核兵器を持っているからと言って、軍部が独走するとかそういうことはあり得ないとも強調しました。

インドにおける大統領と首相の関係性について、大統領は、両院議員、及び州議会議員による間接選挙で選出され、元首である大統領は概ね形式的・象徴的な存在であり、法案の最終的な裁可や首相や最高裁判所長官の任命、緊急命令の発令などの権限は概ね、憲法規定どおりに執行し、内閣の助言の通りに執行する。そして首相が政府の長として行政を統括する。ヨゲンドラ氏はこう説明し、このようなシステムがインド政治の安定性につながっていると述べました。

そして、インドとパキスタンの歴史的な関係についても触れたのち、しかし自分は、インド政府が言っていることであれ、100%信用しているわけではなく、それぞれがそれぞれの国の立場があるだろう、自分自身、パキスタン人とは友人でもあるし、本来は平和的に暮らしていけるはずだと考えていると述べました。もちろん、これは今自分は日本という異国に住んでいるからこそこう考えるのかもしれないが、本来、これまでの両国の対立、またバングラデシュとの関係も、平和的に解決可能ではないか、あまり各国の対立を強調しず擬るべきではないのではないかと述べました。

そのうえで、インドの教育の話に移り、インドでは、以前から教育熱心な国の歴史があり、トップクラスの大学が存在したと述べました。インドではヴェーダという言葉があり、それは「学」という意味で、本当に多岐にわたり様々な学問や思想を研究してきた、物理学、医学、天文学、文学、いくらでも多様な学問がある。これはインドをイギリスが植民地化したとき、その流れが一時中断されてしまった。そして自分がインドを誇りに思えるのは、世界を回っていろいろな古代遺跡とかを見ると、もちろん素晴らしいものは多いけれど、金属製のものはやはりほとんどさびてしまっている。しかし、インドは古代から、8種類の様々な金属を混ぜ合わせて、錆びることのない、保存の出来る金属で銅像や仏像を作ってきたから、今に至ってもさびることなく保存されている。そのような技術が過去からあったと述べました。これは8種類を混ぜるといっても、どの程度の温度で、どの分量の割合で混ぜれば効果があるかを調べるのは簡単なことではない。自分は本気で思うけれど、ヨーロッパで産業革命ができた原因の一つは、このアジアにきて、古代からの技術に触れ、それを盗んだことが大きな力となったはずだと信じている、とヨゲンドラ氏は、インドの文化文明の価値を強調しました。

そして、現代インドの教育の強みとして、小学校から多言語の教育をしながら、数学や理科などの勉強も進めている、中学2年生から、化学、物理、生物など専攻する科目ごとに分かれて勉強する、ただ、日本の小学校の課程は、言語教育としつけが主で勉強のペースが遅いように思うと述べました。

そして、1980~90年代のインドは英国統治の影響で貧しく、保護者もまずは、自分で働いて稼げる人間になればいいという教育だったが、今では、海外で活躍する人材を育てるように教育方針が変わっている。 インドのすべての公立校には、ITを使った学習管理システムが導入されており、それぞれの生徒に見合った中学で、見合った教科を学ばせるようになっている。ヨゲンドラ氏はインドについて、また日本について様々な視点を提示する、興味深い話を聞かせてくださいました。(文責 三浦)

.