「カンボジアに自由と民主主義を! ムー・ソクア氏、テット・キムフン氏講演会」報告
5月15日、東京大井町のきゅりあん会議室にて、カンボジアKMD(クメール民主運動)代表ムー・ソクア氏、カンボジア救国党女性部長テット・キムフン両氏による講演会が開催されました。参加者は約25人。
まずムー・ソクア氏は、最初にこのような機会を与えてくださった協議会並びにボランティアのあぼともこ氏に感謝するとともに、カンボジアの歴史と現在に対し講演を始めました。
まずソクア氏は、カンボジアは50年前のクメール・ルージュ(ポルポト政権)の時代には、国民には言論の自由もなく、また福祉制度もなく、自由な経済活動もできず、インフラ整備もない状態で、国家のすべてが破壊されて国民は虐殺の恐怖の中生きていたと述べました。この時代に殺された国民は約200万ともいわれます。
その後、ベトナムによるカンボジア侵攻と長い内戦ののち、1991年10月、パリ和平協定が日本を含む18か国で締結され、カンボジアに平和と民主的な選挙が実現した、私たちカンボジア人は日本と国際社会に対する感謝の念を決して忘れたことはないとソクア氏は述べました。しかしその上で日本の皆さんに考えてほしいのは、今のカンボジアの実情であると付け加えました。
ソクア氏によれば、確かに今のカンボジアは表面的には経済的にも発展し、仕事もあれば家庭も学校もあり、人々は普通の日常を送っているように見えるかもしれない。しかし、私たちの実感としては、現在も民主主義は存在していない、世界各国の協力のもと民主的な選挙が行われた時期に比べたらゼロに等しいといっても過言ではない状況だと述べました。
さらに、この会場に参加してくれた在日カンボジア人のほとんどは、余儀なく国を離れなければならなかった人たちだ、誰も生まれ育った国を離れたくて離れるのではない、しかし、今は帰国できない状態にある。人々は自由と民主主義を求めている、再びカンボジアが独裁体制の闇の中に戻ってほしくはない、そのために、私たちは外国で活動しているとソクア氏は述べました。
その上でソクア氏は、私がKMD(クメール民主運動)を立ち上げて、これまでどんな運動をしてきたかを見てほしいと、短い動画を紹介しつつ講演を続けました。カンボジアでは、社会評論家で、2016年に、当時のフンセン政権の不正を批判して殺害されたケムレイ博士がいる。ケムレイ氏は、カンボジアの民衆が政治を学び民主主義を草の根の運動から立ち上げていくことを訴えてきた、私たちKMDはその遺志を継ぎ、若い世代が政治意識と民主主義の理念を学び、将来の世代を育成することを試みている。もちろん街頭などでの政治運動もするけれど、環境運動家や政治学者を招いての学習会、そして何よりも、自分たちがカンボジア国民であるというアイデンティティを抱かせること、具体的にはカンボジアの言語、伝統、歴史、また礼儀作法などの教育に努めているとソクア氏は述べました。
その上で、今のフンセン・フンマネット政権はカンボジアの私物化を企んでいる、それだけではなく、領土や文化遺産を他国に売り渡そうとしており、このままでいけば、カンボジアの重要な文化遺産であるアンコールワットですら売買されてしまうかもしれないとソクア氏は警告し、また同時に数百万ヘクタールの農地をカンボジア政府は農民から収奪していると、その独裁制だけではなく売国的側面をソクア氏は批判しました。
そして、カンボジア、ラオス、ベトナムとの間に結ばれたCLVも、カンボジアの国益には全くならず、結局内外のカンボジア人の抗議を受けて中止となった、これは前進だとソクア氏は述べましたが、今はタイとの交渉でもカンボジアは正当な領土を奪われつつある、しかしこのように国益も民主主義も否定されているのに、カンボジア国内では民衆は抗議デモもできないため、KMDはこうして国外でデモや抗議などの活動を続けている、私たちは決してあきらめることはないし、多くの殺害された政治犯の真相究明と、カンボジアの自由のために運動を続ける、日本国も、例えば在日カンボジア人で、家族が脅迫されたために運動から離れざるを得なかったハイワンナー氏の事例などに対し、カンボジア政府に抗議してほしいと講演を結びました。
続いて、カンボジア救国党女性部長、テット・キムフン氏が登壇。キムフン氏はもともと、女性の人権問題に取り組んできたが、今は、カンボジア政府の「国境を越えた弾圧」に抵抗、抗議することを中心に活動していると述べました。
そして、日本における実例としてハイワンナー氏の例を挙げ、ハイワンナー氏を助けたかったが、カンボジア当局の警察は彼の兄を完全に監視、尾行しており、兄は海外に逃れられず、結局兄を人質に取られたハイワンナー氏は、カンボジア政府の言いなりに運動から去り、今の政権を支持しているようにふるまわざるを得なくなったと述べました。
ほかの事例でも、カンボジア政府の国境を越えた弾圧はどんどんひどくなっており、今はタイ政府もカンボジア政府に協力し、自国内に逃れた難民を強制送還するようになっている、自分たちは様々な抗議活動を行い、17世帯のカンボジアへの送還を阻止したとキムフン氏は述べました。そして、このような国境を越えた弾圧に対しては日本政府もぜひ民主主義国として抗議してほしい、日本で活動している民主運動家を守ってほしいと強調しました。
ソクア氏、キムフン氏両氏は、カンボジアの独裁を支えているのは明らかに中国であり、ポルポト政権をかつて支えたのも中国だった、現在カンボジアは独裁政権下中国の影響が再び高まっており、しかも中国系マフィアまで勢力を伸ばしている。このままではマフィアによるオンライン詐欺などがはびこり、しかもその大本にはフンセン・フンマネット自身が詐欺にかかわっている状態だ、これは国際問題として解決しなければならないと強く述べました。
休憩後も活発な質疑応答が交わされ、午後9時少し前に講演会は閉会。来日されたお二人はこれ以後も日本の政治家への訴えなどを行う予定とのことです(文責 三浦)
(参考資料)現代ビジネス記事
「緊急警告!日本をなめたカンボジア・フンセンの挑発が…「トクリュウ」ら日本のオンライン詐欺や犯罪グループがひしめくカンボジアのヤバすぎる実態」
鈴木 譲仁(ジャーナリスト)
フンセン独裁政権が実弟を逮捕
今年の8月、日本で暮らすカンボジア人、ワンナー氏に突然、一通のメールが飛び込んできた。添付された写真には実弟が警察に捕まった姿がある。実弟はカンボジアの衛生局に勤める普通の役人で政治活動とはまったく無縁の人。政治的な話も一切しない兄弟だが、日本で「カンボジア救国会議」の代表として民主化活動をするワンナー氏に対し実弟を人質に取り活動を止めるよう脅迫してきたのだ。全く関係のない実弟に「私は日本の兄と連絡を取り合いながらデモや反政府活動をしていました」という虚偽の証言と念書を強制し拇印を押させた。そして、直後に人民党の工作員3人が来日、弟を解放させたければ、二度と民主化活動しないと謝罪声明を出せ、と迫ったのだ。
フンセン独裁政権の恐怖を感じた彼は、「フンセンとフンマネット現首相への謝罪、野党関係者との絶縁、政権批判を止め、与党人民党への入党を志願します」と屈辱的なビデオ声明を受け入れたのだ。
「いまカンボジアは「トクリュウ」など日本のオンライン詐欺や犯罪グループの温床になっているのでまともな企業は投資しない。一帯一路で繋がっている中国経済の落ち込みも酷いので中国からの投資も激減している。だから投資や観光への悪影響を心配して海外の民主活動家を必死に潰しているのです」
フンセン家族は日本政府をなめている
とワンナー氏から代表を継いだ「カンボジア救国会議」の露木ピアラ氏はいう。彼女の所にも最近人民党の工作員と思われる人物から「逢って話がしたい」と連絡が来たという。「国家がマフィア化している」と露木氏は憤る。
これは明らかに犯罪だ。しかもワンナー氏も露木氏も日本国籍で長く日本で働き普通に暮らしている。「日本国籍の我々が日本での活動を脅迫、弾圧されているのに日本政府が何もしないのはおかしい。なぜ毅然とした対策を講じないのか。フンセンファミリーはこんな犯罪をやっても開発支援を止めない日本政府をなめているんです」と露木氏はいう。
20年以上内戦の続いたカンボジアを平和へと導いた1991年の「パリ和平協定」。戦後初の国際和平会議へ参加した日本はじめ世界から19か国が参加した。その後日本は5名の犠牲者を出しながらも初のPKO派遣や復興支援、法整備支援を含め民主化を主導的に援助し、国際社会でも存在感を示した。確かに日本のアジア外交史の中でも誇れる一面だろう。
しかしその後数十年に及ぶ国際社会の変化の中で、フンセン一族による独裁化、国家の私物化への暴走はあまりに異様な状態だ。
何もしない日本政府
カンボジア・パリ和平協定の第15条には「カンボジアにおける人権と自由の尊重および順守を確保する事」と明確に記されている。しかし、日本人が虚偽告訴でまともな裁判もなしに刑務所に収監、多額な賄賂を要求され、日本国籍で日本在住の民主活動家を家族の人質によって脅迫、弾圧する国が人権を順守している国とは、とうてい国際社会は認めないだろう。しかし、日本は外交的にもなんら異議や要請などアクションは起こしていない。
日本の外務省はODAや技術支援を長年続け、特にカンボジアの検察官や裁判官の訪日研修や法制整備への人的、経済的援助は1996年から数十年に及ぶ。今年4月にも「安心・安全な社会の実現」として司法・行政機能への経済的、人的支援を発表している。しかし、法律条項が表面上いくら整備されても順守され的確に執行されなければ無用の長物だ。まして「賄賂漬けの検察官や裁判官を産み出す研修」など、いったいどんな研修や支援なのだろうか?まさに、まったく効果のない現実とはかけ離れた日本型「太陽政策支援」を例年通り何ら検証もせず続け、多大な国民の税金を“前例に沿って”を垂れ流しているだけなのだ。(以下略)