第82回アジア自由民主連帯協議会主催講演会「カンボジアの現状 戦争、腐敗、国境を越えた弾圧 そしてカンボジア民主化運動の現在」報告
1月17日午後5時より、東京御茶ノ水の会議室にて、第82回アジア自由民主連帯協議会主催講演会「カンボジアの現状 戦争、腐敗、国境を越えた弾圧 そしてカンボジア民主化運動の現在」が開催されました。参加者は在日カンボジア人を含めて約40名。
まず、カンボジア救国活動の会の露木ピアラ氏が登壇。本日は司会と通訳に徹すること、カンボジア救国活動の会のメンバーがそれぞれの立場から報告することを伝えました。
最初に登壇したのは、マーチ・ケムラ氏。カンボジア・タイ国境紛争の原因と現状について語りました。
まず、もともとタイのタクシン政権と、カンボジアのフンセンファミリーは親しかったことをケムラ氏は指摘。しかし2024年9月末から関係が悪化し、特に2024年末からタクシン政権はカンボジアを悪く言うようになり、2025年1月7日には、バンコクのワット・ボーウォンニウェート寺院の外で、カンボジア救国党(CNRP)の元国会議員リム・キムヤ氏が暗殺されるという不可解な事件まで起きたと述べました。
続いて同年5月28日、タイ軍がカンボジア兵士を銃撃、カンボジア兵1名が死亡する事態となりましたが、この時点で、フンセンは、タイの軍、政府、国王の間に混乱を起こさせようと、自分とタイのベートータン首相との電話録音を公開しました。その中では、タイの首相がフンセンと親しげに会話したり、また、むしろタイ軍部を批判しているような発言すらあり、タイの国民感情が怒り狂うとともに、ベートータン首相も、カンボジアをオンライン詐欺の拠点国だ、と批判、これに対し今度はフンセンが激怒するなど、さらに緊張が高まっていったとケムラ氏は述べました。
7月半ば、カンボジアで大規模なオンライン詐欺への取り締まりが起こり、またタイではベートータン首相が辞任、王政と軍部が政権を握ってカンボジアに侵攻、7月24日から28日まで激しい戦闘が起きました。以上からケムラ氏は、むしろこの戦争は、タイ国内の分裂から起きた面もあると指摘しました。
続いて12月7日から27日には第二次紛争が勃発、タイ軍は40か所のカンボジアの都市に侵攻しましたが、ケムラ氏は、これはタイ側は、フンセンに対するある種の懲罰と、特にオンライン詐欺の拠点撲滅を目的としていると述べているが、しかし、結局一般民衆の住居が次々と破壊され、汚職や犯罪にかかわっているはずのフンセンファミリーではなく、カンボジア民衆が犠牲になっていると訴えました。そして、最もショックなのは、この戦争でカンボジアの素晴らしい仏教寺院で世界遺産でもある、プレア・ヴィヒア寺院が破壊されていることだと付け加えました。
(三浦注:7月31日、7月末の紛争における死者を、カンボジアは軍人5人、民間人8人と発表した。しかしこれは実数とはかけ離れており、タイ軍は、戦場におけるカンボジア兵の遺体をカンボジアが回収もせず、また、タイが返還した遺体の受け取りを拒否した例もあると主張している。)
続いて、プレープ セレイボット氏が登壇。自分は6年前に来日し、2024年には難民認定を受け、今は群馬県で仕事をしていると自己紹介しました。そのうえで、自分の家はカンボジア・タイ国境近くにあり、私の家族も住む家を失っているとまず述べました。
セレイボット氏は画像を示しながら、国境地帯が様々な空爆を受け、カンボジア防衛相は、拠点が14か所奪われたといっているが、RFAなどの報道によればすでに40か所がタイの手に落ちていた。タイ軍の優れた武器による空爆やロケット攻撃にカンボジア軍は全く防衛できていないと述べました。
そして、現時点ではすでに50万人の難民が出ており、爆破された町や州に住民が戻れずにいる、この戦争の始まりはフンセンとタクシンの個人的な対立によるものだと思うが、実際に被害を受けているのはカンボジアの民衆たちだと氏は強調しました。そして、プレア・ヴィヒア寺院が爆撃されて焼け落ちているのを、タイ軍と思われる兵士たちが歓声を上げている映像を映し、この戦争の悲劇を訴えました。
3人目にはコン チ氏が登壇、2023年、家族とともに政治難民として来日したことを述べ、今日はカンボジアの政治状況とオンライン詐欺について語りたいと述べました。
まず、カンボジアの正当な野党であるカンボジア救国党が、2012年に結成され、サム レンシー氏、ムー ソクア氏の活躍もあり、救国党の支持は国民の間で大変上がった。2013年の選挙では、国民の信を受けて多数の議員が誕生したことにまずコン チ氏は指摘しました。しかし、そうして生まれた議員たちは、弾圧や、直接の暴行を受けた、本来ならば議員には暴力や逮捕を受けないという特権が憲法上はあるのに、2014年には、13件の議員への迫害が起きていると批判しました。
2013年の総選挙では救国党は44%、与党は48%という大接戦だったので、カンボジア政府はこの党を許しておいては危険だという判断を下した、2017年11月16日、救国党はカンボジア最高裁によって解党され、議席もすべて奪われた。議員118人の資格が取り消され、最高幹部10名は、生涯、政治活動はできないという判決が下され、ほかの政治家にも5年間は政治活動はできないという判決が下りたと氏は述べました。1979年から2026年現在まで、カンボジアでは、暗殺された著名人は約13名に及び、フンセン政権下で約500人が不当逮捕され、今の段階でも94名が獄中にいる。フンセンは、タイとの戦争のためにすべての国民と政治家は一致団結しようと呼びかけているが、この94名はいまだに一人も釈放されていない。また、数日前にも二人の活動家が逮捕されている、フェイスブック投稿なども逮捕の対象にされている。
また、救国党解党後、キャンドルライト党が結成され、2022年の地方選挙に参加した時、キャンドルライト党は約20パーセントを獲得したが、フンセンは2023年の総選挙に、キャンドルライト党は選挙に立候補できないようにしてしまった。以前来日したタッチ・セター氏も、2022年12月の来日後、カンボジアに戻った後に逮捕されている。また「国民の力」のスン・チャンティー党首が反政府活動を扇動した疑いで、5月に来日した後帰国してすぐ9日にプノンペンの空港で拘束された。野党の活動はどんなものでも迫害される、特に、ここ日本という民主主義国に来日し、講演や発言を行い、民主活動家たちと交流した後に逮捕されていると批判しました。
そして、フンセン政権は、このような様々な弾圧を行い、国際社会から孤立し始めてから、オンライン詐欺に深くかかわるようになった。カンボジアは今、外国からの債務の約40%を中国に依存しており、欧米からの制裁を受けてますます中国と一体化する方向に走り、かつ、犯罪組織とのかかわりを深めていったと氏は指摘しました。
オンライン詐欺のトップはジェンシー(陳志氏(37))、彼は2024年、カンボジア国籍を取得、フンセンと親しく、カンボジア国家幹部にも深くかかわり、有力な政治家の顧問ともなっている。こうして政治家と癒着してから、ジェンシーはやりたい放題で、カンボジアをオンライン詐欺の拠点としている。カンボジアの不動産王など様々な有力者がジェンシーとかかわり、麻薬売買などに手を出している人もいる。警察も汚職にかかわっており、警察車両のナンバープレートがお金で買えるため、マフィアがそのプレートを買って警察者として移動するなどの事態が起きていると、コン チ氏は様々な映像を出して説明しました。
これまでFBIがカンボジアを訪れても、カンボジア政府はジェンシーの存在を認めず情報も与えなかったが、この前、ベネズエラのマドゥロ大統領が、アメリカ軍にとって拘束されてニューヨークに運ばれて3日後、カンボジア当局は、1月6日、ジェンシーを逮捕した。これからの事態を見なければわからないが、何よりも、現在のカンボジアの問題は、正当な民主主義体制が確立できず、国際的に孤立しているところにあると、コン チ氏は講演を結びました。(文責 三浦)