2月15日、東京文京区会議室にて、チベット人活動家で現在オーストラリア在住のテンパ・タルギャルTenpa Dhagyal氏の講演会が開催されました。参加者は約30名。通訳はアジア自由民主連帯協議会理事のチュイデンブン氏が務めました。
まずタルギャル氏は、チベットは中国の侵略を受ける前は独立国であったことを、いくつもの証拠から説明しました。国家として必要な、政府、国民、そして領土をすべてチベットは有しており、チベットは独自の軍隊、貨幣を持ち、他国との間には外交関係も構築していたことをいくつもの歴史的資料を挙げて説明し、特に、1947年のインドで開催されたアジア会議には、チベットも国家として参加、パスポートも独自に発行していたと述べました。そして、現在中国が行っているのは明らかに不当な独立国の占領であり、チベットを支配する権利も資格もなく、国際法上許されない侵略行為が続いているのだと批判しました。
その上で、自己紹介として、自分は青海省に生まれ、2000年にインドに行き、ダライラマ法王に初めて謁見したことから話を始めました。この時期はインターネットもなく、チベット人が外部社会のことを知ろうと思えば、インドに行くことが一番確実でした。そして、自分は海外のチベット亡命政府と、国内のチベット人の連絡役の仕事を果たそうと決意し、ダライラマ法王の著作や資料、法話を録音したCD、またチベット国旗などを、ほかのチベット人と協力して、チベットに運び込もうとしました。
しかし、その過程で、2001年に中国側につかまってしまい、資料はすべて没収され、牢屋に入れられ、約1年判決も出ないまま過ぎ、その後4年6か月の刑を宣告されて4年6か月の刑を宣告されて、ラサの政治犯刑務所に入れられて3年間を過ごし、2005年4月には別の刑務所に移され、2006年3月に釈放されるまでを刑務所で過ごしたとタルギャル氏は語りました。
その後2008年、北京オリンピック開催に抗議する運動がチベットで起きたとき、自分もラサでこれに参加し、再び逮捕されてしまい、今度は四川省の刑務所に入れられたこと、刑務所に向かう移動のさなかは、足も手も錠をかけられ、外を見てはいけない状態で連れていかれたとタルギャル氏は述べました。そして釈放後、かつてインドに行った経験のあるチベット人はすべて厳しく取り締まられるようになり、もはやチベットにはいられないと、ハルピンなどにも隠れ住み、2009年3月、ラサからインドに向けて、貨物トラックの荷物の下に隠れて国境まで向かい、そこでネパール人の支援者の助けを借りて亡命したとタルギャル氏は語りました。
そして、政治犯刑務所の中で囚人たちはどんな目にあっていたかをタルギャル氏は以下のように説明しました。
まず、牢獄に入れられていた先輩のチベット人政治犯は、自分が入れられたとき、あなたは勇気のある人だ、よくやったとむしろほめてくれた。そして、6~7人の政治犯の中には、中国人の犯罪者(殺人や盗みなど政治とは関係ない囚人)が入れられていて、自分たちチベット人政治犯を常に監視していたとタルギャル氏は述べました。
また、政治犯が牢獄の外に出て日光を浴びられるのは一日のうちほんの10分ほどにすぎず、寒い牢獄で鉄の冷たい椅子しか与えられず、これも政治犯の健康を損なっていること、1日に2,3回厳しい尋問を受け、ダライラマ法王は間違っている、チベットの繁栄は中国のおかげだ、などという中国共産党側の意見を聞かされ、それに従うよう強要される。しかし、政治犯たちのほとんどはそんな言説を受け入れることはせず、5月1日のメーデーの際には、政治犯たちに、共産主義をたたえ祝うことを強制されたけれどそれを断固囚人たちは拒否し、それによってもっと囚人への弾圧は厳しくなったとタルギャル氏は述べました。
ある刑務所では、実際に殺されてしまった囚人もおり、拷問はほぼ全員が加えられている、特に多く使われるのは電気ショックを加える「電気棒」による拷問で、囚人を地面に伏せさせ、手と足を伸ばした状態で電気ショックを与える、これは心臓にひどい負荷がかかり、囚人の多くは心臓病になる。自分も受けた拷問で、今も右の耳が聞こえないとタルギャル氏は述べました。
そして、自分はまだ4年と短いほうだったけれど、15年、20年と刑務所に入れられたままの人がいる。現在わかっている範囲でも5000人が政治犯刑務所に入れられている、そしてほとんどの囚人が拷問で体を壊しているとタルギャル氏は強調しました。
2008年のチベットの抗議行動で多くのチベット人が政治犯となったが、中国政府は、彼らは商店などを襲撃して略奪を行ったとしか報道せず、政府の関係役所に抗議したことは触れない、しかしこの時期、チベット全土に抵抗運動が広がったことを、チベット人は歴史的体験として決して忘れることはないとタルギャル氏は述べて講演を結びました。
質疑応答の際、タルギャル氏は、自分はチベット独立の意識を一度たりとも失ったことはない、それを失うということは、自分自身を失うことだ、と語ったのが印象的でした。(文責 三浦)