昨日3月8日、中国大使館前で抗議行動を正午から約40分行いました。「中国政府は脱北者の北朝鮮強制送還を直ちに停止せよ」「中国政府はテロ国家北朝鮮への支援をやめよ」という横断幕を持って、私(三浦)、関東脱北者協力会の木下氏(脱北者)、救う会代表の西岡氏、家族会事務局長の増元氏、守る会名誉代表の小川氏、他守る会会員の方々がそれぞれのメッセージをいたしました。NGO諸団体の声明文も、また関東脱北者協力会の声明もいずれも中国大使館に投函することができましたので、とりあえず最低限のメッセージは伝えられたかと思います。
特に関東脱北者協力会の木下氏は、最後に「自分も中国で一度考公安に捕らわれたことがあります、あの時送り返されていたらどうなっていたかを思うと、今、中国で捕らわれている脱北者のことで胸が痛みます、中国政府は絶対脱北者を送り返さないよう、脱北者の立場から訴えます」と大使館に向かって訴えました。
何人かの方に質問を受けたのでここで紹介いたしますが、関東脱北者協力会の代表は、以下の連載を統一日報紙で行っている木下公勝さん。一番新しい連載分を下記に引用します。
【連載】脱北帰国者が語る「北の喜怒哀楽」 在日帰国者への差別(1)
北朝鮮社会に適応できなかった帰国者たち
在日帰国者たちは北朝鮮社会になかなか適応することができなかった。私は、それが差別の対象になった一因だと思う。
朝鮮語は下手だったし、服装、髪型、仕草もふくめた言動すべてが朝鮮人らしくないため「日本人の匂いがする」とか「資本主義生活様式がいまだに捨てきれずブルジョア思想を持った怪しい人物に見える」という認識を持たれていた。
このような認識と偏見には、現地の学校教育や社会教育という背景があった。人々はそのようにしか考えられない人間に造り上げられていた。
特に朝鮮を侵略し殖民地化した日本帝国主義の侵略者は朝鮮民族を虐殺・抑圧し、酷使・搾取したと教えられた。日本は永遠に忘れることのできない絶対的な敵国であり、朝鮮戦争を起こしたアメリカ帝国主義と韓国傀儡軍にも、いつか百倍の復讐をする覚悟を持つべしと教育していた。
昔から現在まで、学校であれ勤労現場であれ、国家エリートであれ最低ランクの幹部であれ、週1回は単位別に勉強会が義務化されている。勉強会は「思想教養学習」、「階級教養学習」などと呼ばれている。
職場では仕事や食事を後回しにしてでも、勉強会に参加することになっていた。それでも遅刻してしまった場合、ノートにその日の学習内容を全部書き写し、完全に暗記するまで家に帰ることが許されなかった。(中略)
なぜ仕事をそっちのけにしてまでも、思想教育の学習網体系が徹底されていたのだろうか。それは、資本主義社会の発展像に対して人民や軍が少しでも思想的に動揺すれば、思想教育の刃が鈍くなるためだ。言い換えれば資本主義社会に対し羨ましさや憧れを抱いたりすると、金日成の教示や金正日の指示が嘘だと気づいてしまうからである。
国家の独裁体制の確立に重大な難問が起きるのを事前に防ぐため、資本主義国家に対してのネガティブキャンペーンを優先視することが、北朝鮮では鉄則になっていたといっていい。
事実とはまったく正反対のこと教え、全体ではないが大部分の人々が洗脳されていたところに、私たち日本からの在日帰国同胞がやってきたのだ。そして私たちと実際に付き合うようになった現地の人たちは、自分たちが聞いていた話が全然違うことに気づいた。
帰国して1年がすぎ、現地の人々とだんだん親しくなった頃だった。ある友人がこう言った。
「君たちが来る前まで学校で先生が『これから何日か後に日本から在日同胞がこの炭鉱町に配置されてくる。日本では食べ物もろくに食べられず痩せ飢えている人たちがくる。日本で差別と軽視そして虐待と飢餓で苦労していた人たちだ。もし服装が少々見苦しくても絶対に笑ったり指をさしたり不快な印象を与えず、温かく抱擁し歓迎してあげて下さい』と言われた。学校や人民班では募金運動をして、店で男女大小別に服を買って準備し、駅から街頭にいたるまで町全体が並んで歓迎の準備をした。実際汽車から帰国者たちが次々と降りるのを見てビックリした」
私はその帰国者家族を見てどう思ったのかと聞いてみた。
「準備して持っていった服をさっさと隠して学校や軍と『帰国同胞迎接委員会』に運んでいった。君たちを見た途端、みんながピカピカしていた。紳士淑女たちばかりで子供たちも立派な服を着ていてとても幸福そうに見えた。かえって我々の方が恥ずかしいくらいだった。先生の話とはまったくの正反対だった。裕福な人たちを見たのは生まれて初めてだった」
私たち帰国者の多くは裕福な暮らしをしていたのではなく、日本では最下層の生活をしていた家族だったのに現地の人々には裕福で大金持ちに見えていたのだ。
http://news.onekoreanews.net/detail.php?number=68171&thread=01r04
そのうち脱北者協力会のホームページなど開くお手伝いをしたいと思いますので、直接の連絡がスムーズにできるようになるかと思います(三浦)
それと、同日のICNKの要請についての記事が産経新聞に出ています。
北朝鮮「人道に対する罪」調査委設置を要望 特定失踪者問題調査会など
2012.3.8 18:01
特定失踪者問題調査会などが参加する「北朝鮮における『人道に対する罪』を止める国際NGO連合(ICNK)」は8日、山口壮外務副大臣に対し、国連総会決議に拉致問題などを調査する調査委員会設置を盛り込むよう関係各国への働きかけを求めた。ICNKメンバーによると、山口氏は「具体的にはまだ言えないが、自分は行動の男なので行動します」と応じたという。
北朝鮮に対する国連決議は7年連続で採択されており、拷問や政治犯の拘束などの人権侵害をやめ、拉致被害者の即時帰国を求めている。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120308/plc12030818030017-n1.htm
これはお世辞ではなく、産経には守る会結成当時からお世話になってきました。少なくとも北朝鮮の問題について、他のどの新聞よりも早くから書いてくれていたので、それはもう感謝してます。しかし、こういう記事を読むと、他の新聞よりいち早く描いてくれたことには深く感謝しますが、要請行動は拉致を含む北著す円全体の人権問題を国連に訴えることであり、拉致は独裁政権の人権抑圧が結果として引き起こしたものなのだから、要請行動と外務副大臣が答えた意義をもう少し正確に書いてくれるともっとありがたい。
中国大使館前での抗議と関東脱北者協力会の紹介 : 北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会
http://hrnk.trycomp.net/news.php?eid=00779