【コラム】脱北者の送還、中国だけの過ちなのか(姜哲煥) &守る会関西の中国大使館抗議行動のお知らせ : 北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会

【コラム】脱北者の送還、中国だけの過ちなのか

姜哲煥(カン・チョルファン)北朝鮮戦略センター代表(客員記者)

 金日成(キム・イルソン)主席の死後、北朝鮮からの人民の脱出が本格化してから15年が過ぎた。人身売買される脱北女性たちを救出し、北朝鮮脱出の現場を命懸けで取材した記者はもとより、多くの人権運動家たちが、脱北者の強制送還の深刻さを伝えるようになってからも10年の歳月が流れた。最近、韓国政府や国民、世界の多くの人々が、脱北者の強制送還に対し抗議の声を上げる様子を見ていると、涙が出るほど感激を覚える一方、あまりにも遅かったと思えてならない。今、脱北者の強制送還の当事者である中国政府が非難の集中砲火を浴びているが、果たしてわれわれに中国を非難する資格はあるのだろうか。

 1990年代後半、北朝鮮で大量の餓死者が出たとき、数十万人の住民たちが中国の延辺朝鮮族自治州に逃れた。当時、延吉空港や市場には物乞いをする脱北者たちがあふれた。当惑した中国政府は、金大中(キム・デジュン)政権下の韓国に対し、脱北者の受け入れを打診したが、これといった反応がなかったため、脱北者たちを全員北朝鮮に送り返した。北朝鮮政府が韓国の支援を受け、崩壊した体制を立て直す中で、真っ先に取り組んだのは、中国に逃れた脱北者たちを全員連れ戻すことだった。

 1997年、故ファン・ジャンヨプ元朝鮮労働党書記が韓国に亡命したとき、中国政府は北朝鮮の脅しに屈せず、丁寧な要請も受け入れず、ファン元書記を韓国に送った。北朝鮮による拉致被害者や元韓国軍捕虜など、韓国政府と対立する重要な問題をめぐっても、中国はこれらの人たちをできるだけ北朝鮮に送還しようとしなかった。このような中国の態度は、韓国政府と国民が脱北者一人一人に対し、元韓国軍捕虜や拉致被害者と同じくらい関心を示していれば、脱北者をいつでも韓国に送っていたことを示す証拠といえる。

 在中韓国大使館や領事館は、脱北者を保護するため、中心的な役割を担う必要がある。ところが、左派政権下では、韓国大使館への進入を試み、門前で拘束された脱北者たちが中国の公安(警察)に連行されても、大使館は何ら措置を講じないほど無気力だった。今、脱北者の強制送還と同じぐらい深刻な問題は、脱北女性の人身売買だ。豆満江や鴨緑江を渡って中国に逃れる脱北女性たちは、ブローカーの世話にならなければ生きていけない状況となっている。国境でブローカーの手にかかった脱北者たちを、一次費用(約1000-2000人民元=約1万3000-2万6000円)で救出できれば、人身売買を防ぎ、女性たちを安全に韓国に送ることができる。北朝鮮関連の人権団体や、脱北者を支援する人たちは、このような事実を韓国に伝えているが、韓国の女性団体は、脱北女性たちの人身売買を防ぐための基金を作るといった支援を行ったことがない。また、韓国の統一部(省に相当)も、金正日(キム・ジョンイル)、正恩(ジョンウン)政権に対する支援金を大量に蓄えているが、これを脱北者の救出のために使うのは不可能だと考えている。

 中国政府が拘束した脱北者たちを強制送還すると主張しても、韓国政府や国民が少しでも関心を示し、人権団体を支援していれば、これほど多くの脱北者が強制送還されるという事態は防げたはずだ。韓国は今、中国政府を非難しているが、脱北者の救出に関心を示さず、問題を放置した責任を忘れてはならない。韓国側があらん限りの努力をし、中国に要求してこそ、中国もこの問題に対する韓国の真剣さを認めてくれることだろう。

姜哲煥(カン・チョルファン)北朝鮮戦略センター代表(客員記者)
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/03/11/2012031100158.html


 これは完全に正論。あえて言えば、金大中、盧武鉉時代に北朝鮮の独裁政権に支援したお金の半分でも脱北者救援に使っていれば、どれだけの人々を助けられたか計り知れないものがあります。

 現在2万人を超える脱北者が韓国に受け入れられている、というと数自体は大きく聞こえるかもしれませんが、では、90年代の飢餓が始まってから、のべどれだけの脱北者が中国に逃れていったか、その後彼らの運命はどうなったかを考えてみるとき、おそらく数十万の脱北者のうち、韓国にたどり着いた人はほんのわずかです。彼らは法的には韓国国民であり、韓国政府の保護を受ける権利のある人たちなのに。

 これと同じことは実は日本政府にも言えます。少なくとも拉致被害者と日本人妻は日本国民です。日本政府は日本人拉致を当時から一定程度知っていたことは確実で、どんなに言い訳をしようとも、有本恵子さんの拉致に関してはご両親が手紙を持って訴えた時点で知らなかったとは言えません。日本人妻が、約束したはずの3年後の里帰りも実現せず、地上の楽園どころか苦しい生活を強いられていること、中には収容所に入れられたことを日本政府は確実に知っていたはずです。

 脱北者の救援は単なる人道的な問題だけではありません。北朝鮮国内の情勢を知るためにも、また、北朝鮮国内に外部の情報を伝えるためにも、脱北者を救うことは独裁政権との戦いの最前線です。脱北者は、中国にいる間は警察に見つからぬよう必死だったが、モンゴルに出た場合は、あとは警察を見つけて保護を求めることに必死になる、という話を聞いたことがあります、他の第3国でも同じでしょう。この脱北者たちは、どこにも行き場のない難民ではありません。韓国という受け入れ先が確実に存在する人たちです(帰国者、日本人妻の場合は日本が)。中国が彼らを希望する国に移送することさえ認めれば、この問題は明日にでも解決できるのです。

 日本の国会議員の方々で、今のところ誰一人この問題に触れていないように見えるのはまことに残念です。日本は国際社会における名誉ある地位を占めるためにも、脱北者の北朝鮮強制送還に対し強く抗議してください。(三浦)

守る会は関西においても、中国大使館への抗議行動を行います。
3月14日 午前11時半から1時間、午後12時半まで。
抗議行動の場所は、地下鉄線千日前線阿波座駅9番出口地上にて行う予定です。
連絡先 山田 電話 090-2287-8610まで


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